107神猫 ミーちゃん、ネロのポジティブさに呆れる。

 だから、こっちに逃げて来るなって!



「チッ、やるしかねぇな」


「今宵の虎徹は血に飢えてるにゃ」


「にゃ」


「ネロ君を守るの忘れないでよ!」


「わかってる」


「言っときますけど、戦う以上一匹も逃がしちゃ駄目ですからね!」



 距離がまだあるので、シリンダー交換してライフルで倒していく。弾を撃ち尽くしたので、ライフルを背負いリボルバーのレーザーポインターのスイッチを入れた。


 ゴブリンも挟まれた事に気付き、逃げる事を止めて戦う事を決意したようだ。武器を構え数の少ないこちらに向かって来る。もう~向こうを攻めろよ!


 ペロとセラ、ルーさん、ティムさん、アニヤさんがほぼ一列で迎え撃ち、その少し後ろに俺が居る。前列から抜けて来たゴブリンに銃とAFの短剣で攻撃していく。


 ルーさんもティムさんもアニヤさんも強いのだけど、セラとペロは圧巻の一言。セラの攻撃はゴブリン如きでは一撃必殺になってるし、ペロの攻撃も愛刀虎徹のおかげもあり一撃でゴブリンが沈んでいく。


 おかげで、俺は焦らず攻撃できる。今のところ撃ち漏らしは無い。ここで一匹でも、ゴブリンに逃げられると俺達が居る事がバレる恐れがある。バレて下手に警戒されるのは避けたい。



「にゃんこ! 強いじゃないか!」


「ペロにゃ! ネロ以外、みんにゃにゃんこにゃにゃいか!」


「ははははっ! そりゃあそうだ!」


「冗談言ってないで、ちゃんと戦いなさいよ!」


「それだけ、余裕があるってことだろう!」


「にゃ」



 みなさん余裕ですね……。


 どうやら、虫系モンスター達もゴブリンを完全に包囲したようで、完全な殲滅戦になった。これで一安心……って、なる訳ないでしょう!


 俺達も遠巻きに包囲されてるんですけど。俺達、協力したよね……。


 立ってるゴブリンが居なくなると、大きな蜘蛛がお供を連れて近寄って来た。キラースパイダークイーンと鑑定できた。それ以外は何も見えない。


 俺達の数メル手前で止まる。



「これ以上は近寄れにゃいみたいにゃ」


「なんか言ってる?」


「言ってると言うか、感じるにゃ。感謝してるにゃけど、歓迎はしてないにゃ」


「人族もゴブリンと戦ってます。共闘できませんか?」


「拒否にゃ」


「なら、ゴブリンと戦っている間だけでも、人を襲わないでもらえませんか?」


「そちらが攻撃しにゃいにゃら、にゃんとか? するにゃ的?」


「それで構いません。ゴブリン達を野放しにはできません!」


「頑張ってくれ? 自分達は庭を守る事しかできにゃい? みたいにゃ?」


「わかりました。みなさんが後ろを守ってくれるだけでも安心できます」



 虫系モンスターが離れて行く。



「助かったのかな?」


「心臓に悪いわね」


「ハァ……帰って寝ようぜぇ~」


「にゃ」


「おにゃか空いたにゃ~」



 共闘できれば良かったけど、虫系モンスターと話ができたのは最高の収穫だよ。ペロには後で美味しい物をご馳走してあげよう。


 戦闘はまだ、続いているようだけど、もう戻ろう。陽動作戦が失敗した時点でゴブリンの負けは見えた。状況は明日確認すれば良いでしょう。


 野営場所に着くと、みんな起きていたけど明日説明すると言って休む事にした。ミーちゃんも起きていてくれたようだけど、ユーリさんに抱かれてコックリコックリしている。ルーくんもありがとね。



「がう」



 ユーリさんにお礼を言って、ミーちゃんを引き取りルーくんと一緒にセラの横に寝かせてあげる。セラはしっかりと二人に寄り添って眠りにつく。


 俺も寝よう。



 翌朝、朝食をとってから昨夜の戦場後をみんなで見に行った。


 ミーちゃんとルーくんはまだ、眠そうだったのでちょっと狭いけどキャリーバッグでお休み中。昨夜のゴブリンと戦った場所に着くと結構な数のゴブリンが居た事がわかった。


 寝ていたところ悪いけど、ミーちゃんに起きてもらってゴブリンを回収してもらう。ごめんねぇ、後でゆっくり寝てて良いからね。



「み~」



 気にしないで~ミーちゃんも頑張るよ~って笑顔を見せてくれた。うぉー、健気なミーちゃんにチュッチュッしちゃいましたよ!


 ミュラーさんが珍しい虫系モンスターの死骸を回収しようとしたので、虫系モンスターは回収しないようにお願いした。


 道義上、回収する訳にはいかない。こんな事でキラースパイダークイーンを怒らせたくないからね。


 歩きながら、みんなに昨夜の出来事を語って聞かせる。



「成程、了解した。敵に回らないと言うだけでも大きな違いだからな」


「でも、もったいねぇなぁ~」


「ルーは不謹慎です。精霊達は多くの命が失われた事に悲しんでいます」


「精霊にとっては、人とモンスターも違いはないのかもしれないわね……」


「同じ命じゃと言う事であろう」



 先を見に行っていた蒼竜の咆哮の犬獣人のシャイナさんと暗闇の牙の犬獣人のラルスさんが戻って来た。



「凄い事になってるわよ」


「激戦だったようだ。とんでもない数の死骸があった」



 正直、その場所に近づくにつれ異臭がしてくる。ミーちゃんもキャリーバッグに隠れてしまった。


 戦場と言う光景をまざまざと見せつけられる。この目の前の全てが動くものがない死と言う言葉で覆われている。


 ゴブリンが大敗したのはわかるけど、虫系モンスターも少なからず犠牲を出したようだ。この地を守るとは言え酷いものだね。


 な~んて感傷に浸ってる暇はない。ゴブリンの死骸の回収だ。ミーちゃんやるぞ~!


 ミーちゃんがキャリーバッグから、えっ!? って、顔してから嫌そうな目で見つめてきている。



「みぃ……」





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