83神猫 ミーちゃん、王都に戻る。

 宿に戻って夕食にするけど、何人分頼めば良いんだろうと最近悩む。六人分かな?



「ちょ、ちょっとそんなに食べないでしょう!」


「いえ、食べます。確実に食べるよね? ミーちゃん」


「み~」



 この中で唯一少食なのは、ルーくんだけどミーちゃんの猫缶食べてるから問題ないでしょう。そのうち大きくなったら、腹ペコ魔人が三人になるだろうしね。今のうちだけだよ、きっと。牙王さんの子だし……。


 もちろん夕食は完食。ルーくんはセラから少しおすそ分けを頂いて、残りは猫缶三分の一を食べた。



「本当に食べたわね……」


「デザートは別腹にゃ」


「み~」


「まだ、食べるのね……」



 部屋に戻ってみんなのお風呂、わしゃわしゃとエレナさんが洗ってる。ペロが猫化したら抱きついて、洗わせて~って言ってきたのだ。



「仕方ないにゃ。特別にゃよ」



 その言葉、何度か聞いてる記憶があるんですけど……気のせい?


 他の子はミーちゃんの桶でまったり中。ちょっと小さい、もう少し大きい桶買わないと駄目だね。その桶借り物だからクイントの女将さんに返さないと。


 みんな洗い終わったので、恒例のデザートタイム。王都も、もうすぐなので葛餅を出してあげた。



「おぉー、くにゅくにゅにゃ!」



 くにゅくにゅじゃなくて葛餅ね。ペロとエレナさんに出してあげる。


 セラとルーくんには、バナナを潰してから蜂蜜を少し加えて凍らせたバナナアイス。


 みんな美味しそうに食べてる。


 そんな中、ミーちゃんが悲しそうな顔で見つめてくる。首をコテンと傾げて、駄目なの~って顔で見てくる。抱きしめたくなる程の憂い顔。


 駄目なんじゃないよ。ちょっと実験してみよう。


 ミーちゃんから餡子を出してもらって、一つはいつものように凍らせる。もう一つは食堂で分けてもらった牛乳で割ってから凍らせる。


 両方をミーちゃんの前に置いてみる。



「み~?」



 食べて良いの~って満面の笑みで聞いてくる。どうぞ、お食べくださいお嬢様。


 やはり最初に食べ始めたのはいつもの濃厚アズキアイス。でも途中で牛乳で割ったアズキアイスを食べ始めた。おぉ、これはいけるんじゃないって思ったけど、結局、アズキアイスを食べ終わった後、濃厚アズキアイスをお皿がピカピカになるまで舐めきった。


 どっちが美味しいって聞くと、当然のように濃厚アズキアイスの皿をテシテシ叩いたよ。残念。上手くいけば餡子の消費量が半分になると思ったのに……。


 ミーちゃんは満足して前足で顔を洗っている。


 そしてここにもう一人、甘味と言う物に目覚めた者が居る。



「なにこれ、美味しい。ルーくん食べてるのも、ちょっと頂戴!」


「がぅ……」



 あぁ、ルーくんのデザートが無くなっちゃったよ。ルーくんが悲しい顔で寄って来てクーン、クーンと鳴く。世の中弱肉強食、大事な物は死守しないと駄目だよ。ペロとセラを見なさい。エレナさんを完全に無視してるじゃないですか。ルーくんはそれを見てガーンっとショックを受けている。


 可哀そうなので、モフモフしてから新しい物を作ってあげました。



「幸せだわ……もっと欲しい」



 チラッ……チラッチラッ。って、なにしてるんですかぁー!



「寝る前にこんなの食べてたら、太りますよ」


「グハッ……」



 エレナさんはベットに倒れ込んだ。寝るなら歯を磨いてから寝ましょうね。ミーちゃんだってたまにだけど磨いてますからね。時間に余裕のある時だけですけど……。セラとルーくんの歯ブラシも買わないとね。ペロは自分で磨いてますよ。


 さあ、寝ましょうね。ミーちゃんおいで~。



「み~」



 セラとルーくんも真ん中のベッドに潜り込む。



「うぅっ……ペロちゃん。一緒に寝ようよ」


「ペロとでも良いにゃ!」


「だって、一人は寂しいよ」


「任せるにゃ。添い寝は得意にゃ!」



 俺は何も聞いていない。聞いてないからね。



「み~」



 寝よう。おやすみなさい……。



 うーん、良く寝た。おはよう~、ミーちゃん。



「み~」



 セラとルーくんも起きてきた。おはよう。



「にゃ」


「がう」



 悲鳴が聞こえないから、ペロはベッドの下かな? みんなで探すと、エレナさんのベッドからペロの悲痛な、か細い声が聞こえてくる。



「だじけてぇにゃ……」



 流石に女性の布団を剥ぐ訳にもいかず、エレナさんに声を掛けて起こす。



「ん? おはよう……」



 そこにあったのは、猫姿のまま羽交い締めにされたペロの姿。ずっとあの状態だったのだろうか? ある意味羨ましい格好です。そんなペロをセラが尻尾で顔をペシリと叩いた。自業自得と言いたいんだろうね。


 誰がこんな結末を予想できたであろうか。いや、できる訳が無い。よね?



「み~」



 ペロよ永遠に……。



「勝手に殺すにゃ~!」



 さあ、朝ご飯食べに行こうか。



「ペロは目玉焼が食べたいにゃ~」


「みぃ……」


「にゃ……」


「がぅ……」




 生まれた時からどんぶりめしってくらいに、食べてます。ペロがね……。ペロはトサカ頭のようです。それが良いところでもあるんですけどね。愛すべき友人である。


 スミレの準備を終えて出発。門を出て街が小さく見える位置まで走り一旦停止。エレナさんが降りて笛を取り出し吹く事しばし、飛龍がやって来た。ミーちゃんバッグから鞍を出して取り付け再度出発。今日は行ける所まで行く、今のスミレなら後二日で王都に着くだろうからね。



 セッティモを越えセストに若干届かない場所で野営し、二日後の夕方に王都に着いた。 


 スミレはどんどん速くなる。ぶるるっと、まだまだよって仕草を見せたよ。



「み~」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る