78神猫 ミーちゃん、海を見る。

 翌朝、ペロはこんなに広いベッドなのに居なかった……。


 みんなで探すと、ベッドの下で猫姿で丸まって寝ているペロを見つけた。ルーくんに蹴られてやっと目が覚めたようだ。



「な、何故にゃ……」



 俺が聞きたいです。


 部屋で朝食を取ってる時にメイドさんにお魚を売ってる場所を聞いたので、行ってみよう。


 朝の涼しい海風が吹く道を、俺が手綱をを取って海に向かって歩く。スミレの上には俺以外が乗っている。そんなスミレが街中を歩けば異様に目立ちみんなさんに注目される。それでも気にせず教えてもらった港の方に向かった。気にしちゃ駄目。



 海だ~。



「み~」



 心地よい潮風。遠くに見える水平線。沖には大きな島が見える。あそこにこの地を支配していた魔王を倒す時に、手を貸してくれた竜が住んでいるそうです。この国の騎竜隊の飛龍はその竜との盟約で力を貸してるそうだ。



「大きにゃ湖だにゃ~」


「にゃ」


「がう」



 ペロ達は海を知らないようだね。海の水を舐めるとしょっぱいよと言うと信じてくれなかった。この世界の海ってしょっぱくないのかな? 後で舐めてみよう。


 港近くに行くと、大きな帆船から小さな船まで沢山係留されている。大きな船があると言う事は他の港とも行き来があるんだろう。行ってみたいなよその国ってね。



「み~」



 ミーちゃんは船に興味があるのか、食い入るように船を見ている。好きなのかな?



「み~!」



 港周りを歩いていると、見つけました。お魚の市場のようです。今も船から水揚げされてる最中。市場に居たおっちゃんに買えるか聞くと、ここでは商業ギルドに入ってないと買えないと言われた。うーん、残念。せっかくだから新鮮なお魚が欲しいよね。



「なら、俺が代わりに買ってやろうか?」


「良いんですか?」


「手数料はもらうぜ。どのくらい欲しいんだ?」


「一杯」



 と言う事で、このおっちゃんと市場の中を見て歩く。めぼしい物をどんどん買っていき、ミーちゃんバッグに収納してもらう。



「おいおい、どんだけ買うつもりだ……」


「一杯」



 次は、干物類や珍味系を買い漁る。イカのような干物に貝柱の干物。夢のような場所でした。おっちゃんにお礼を言って今度はバザーを目指す。港があるから珍しい物も売ってる事を期待。


 王妃様にお土産はサンゴや真珠のアクセサリーって、言われたから探さないとね。見て回ると真珠を扱っているお店で、黒真珠が捨て値で売られていた。何故なのかお店の人に話を聞くと、数も取れないし黒っぽいと言う事で売れないそうです。所変われば品変わるかぁ、綺麗なんだけどね。試しに、同じ大きさ、同じような色の黒真珠を集めて買っておいた。白真珠は高くて手が出ませんでした。


 サンゴのアクセサリーは鑑定のおかげで良い物を安く買えた。他にもいろいろな宝石のアクセサリーを手に入れる事ができた。港街だけあっていろいろな場所から人が集まるので、隠れたお値打ち品が多い。問題はどこで売るかだ。ミーちゃんバッグに結構な量が入っているはず、確認してないからどのくらいあるは不明。


 バザーでは布製品も一杯買った。コボルト族のパトさんが人族の布製品は需要が高いって言ってた。他にも役立ちそうな物も買っておく。帰りに寄って置いてこようと思ってる。パトさんは、なんか他人とは思えないんだよね。何かしてあげたくなるんだよ。


 最後に武器防具漁りもしたら、とうとう残金が百万レトを切ってしまった。これは不味い。これからスミレの新しい鞍を買いに行くのに、足りるのでしょうか?


 宿の厩務員さんに教えられたご実家の馬具店にやって来て紹介状を見せ、スミレを見てもらう。



「うーん、この子は病気かなんかしたみたいだね」


「はい。最近やっと完治したところです」


「それなら、もう少し待った方が良いね。この子はもう少し大きくなりそうだ。それから、新調する事をお勧めするね」



 成程、確かにスミレは病気が完治したけど、まだ痩せ気味だからね。最近は良く食べるようになったから、本来の身体になるのももう少しだろう。


 なので、鞍は買わずに鞍の後ろに着ける荷物置きを買い、二十万レト支払いました。馬具高けぇー。これでペロが座れるようになり、ルーくんが一緒でも十分なスペースになった。


 バザーの屋台で食べ物を買って海を見ながらみんなでお昼ご飯にする。陽射しは強いけど、海風が気持ち良い。少しだけ昼寝してから王宮に向かおうか。


 王宮に着くと今日はすんなり通され、昨日と同じ執務室に連れて来られた。セラもルーくんもペロも侍女さん達に即刻捕まりました。話が終わるまでモフられていてね、よろぴくね~。



「手紙をしたためた。アンネリーゼに渡して欲しい」



 大公様から手紙と王妃様から預かった短剣を受け取る。



「そこでじゃ。ネロ君に頼みがある」


「なんでしょう」


「竜騎隊を動かすにしても、ここから王都ベルーナまでは二日掛かる。そこでブロッケン山に臨時の中継地を作りたい。その仲立ちをしてもらいたい」



 ここから王都ベルーナまで二日で着くって、飛龍って早いんだね。ブロッケン山は中間地点だから何かあればすぐ向えるって事か、牙王さんに言えば場所くらいなら貸してくれるとは思う。



「わかりました」


「こちらから二人の竜騎士を付ける。一人はブロッケン山まで、一人は王都ベルーナまで同行させよう」


 一人はブロッケン山で話がまとまれば公都ヴィルヘルムに戻って中継地の準備にあたり、もう一人は俺の護衛と称して王都ベルーナに入り何か起きればブロッケン山に飛ぶ事になるのだろう。



「出発は明日で良いかな?、ブロッケン山までどのくらいかかろうか?」



「各街などで泊まれば四日、野営なら三日くらいでしょうか?」


「速いな。ネロ君の乗っておるのはバトルホースと聞いたんじゃが?」


「私は軽いですし、他のみんもこんなものです。スミレにしてみれば乗って無いのと同じじゃないでしょうか?」



 騎士様は重い鎧を着こんでるし、俺よりがたいが良いからね。それに、荷物は全てミーちゃんバッグだし。


「ふむ。ならば早いにこした事はない。それで頼む」


「王都に行く前に寄りたい所があるのですが構いませんか?」


「ブロッケン山の片が付けば余裕ができよう。他に何かないかな?」



 いろいろあり過ぎて困るけど、当面の心配事はお金かな。調子に乗って使い過ぎちゃったからね。



「みぃ……」







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