77神猫 ミーちゃん、猫じゃらしに興味なし。

 紹介された宿に行くと、俺の顎が外れそうになった。宿と言うより立派な洋館風のホテル。


 紹介してもらった手前、一度受付で話を聞いてみる事にした。受付に居た方に執事さんから預かった紹介状を見せると、奥に走っていき支配人さんらしき人を連れてきた。


 支配人さんらしき人はもの凄くへりくだった態度で接してきて、何も言ってないのに俺達を部屋に案内する。


 最上階全てを使ったロイヤルスイートルームと言ったところでしょうか? ここで何をしろと?


 お金払えませんよと言ったら、王宮で出してくれるそうで一番良い部屋を用意するように書いてあったそうです。だとしても、この部屋は大き過ぎるよ。頼むからもっと狭い部屋をお願いしたら、下の階の先程の部屋の半分くらいの部屋に案内された……。


 まだ大きいと言うと、支配人は何とかこの部屋に泊まって下さいと泣きついてくる。これ以上ランクを下げると王宮からお叱りを受けるのだと言う。面倒くさいけど仕方ないので了承した。



「み~」


「広いにゃ!」


「にゃ」


「がう」



 ベッドルームは二部屋、キングサイズのベッドがある部屋と、ダブルサイズのベッドが二つある部屋。


 当然、みんなはキングサイズのベッドに飛び乗ったね。



「み~」


「ふかふかにゃ~」


「にゃ」


「がう」



 流石に、いつも寝ているベッドや布団とは違う。全てが最高級品ですね。


 部屋の扉がノックされたので、どうぞと言うとメイドさん二人が入ってきた。話を聞くとこの部屋専属のメイドさんだそうです。でも、しいてする事もないので結構ですと言ったら、悲しそうな顔でそれではお給金がもらえませんと言ってきた。うーん、人の仕事を奪うのは良くないよね。


 と言う訳で、俺の代わりにみんなと遊んでもらう事にする。タッタター! 久しぶりの登場、猫じゃらし。メイドさんに渡して使い方を説明する。ミーちゃんはげんなり顔、セラとルーくんは興味津々、ペロもしっぽを振って猫じゃらしを凝視している。ついでに、ペロも猫化しなさいその大きさで飛び回られるのは迷惑だからね。


 猫化するとメイドさん二人は驚いていたけど、すぐ抱きついていた。ペロはトラ猫、セラは黒猫、ルーくんは白狼なんだけど、コロコロしていて愛嬌のあるシベリアンハスキーのお子ちゃまに似ている。みんな可愛い。ミーちゃんは別格だけどね。



「み~」



 部屋から庭の芝生の上でメイドさんがみんなと遊んでくれてるいのが見える。俺は庭の見える陽の当たるベランダに椅子を持って行き読書。マフィアのアジトで手に入れた本を読む。ミーちゃんは安楽椅子に座った俺の膝の上で丸くなっている。全く猫じゃらしに興味は無いようだ。相当、村のお子ちゃまとの事がトラウマになったようだね。


 偶に庭を見ると向こうは大変な事になっている。メイドさんが代わりばんこに猫じゃらしを振っているけど三匹相手はきついようだ。途中から、別の手の空いたメイドさんを呼び一匹を捕まえてモフる作戦にでたようです。


 陽が暮れる頃には、メイドさん含めみんな地面にへばりついていたね。ミーちゃん、スミレの様子を見に行こうか?



「み~」



 宿も立派なら馬舎も立派でした。専属の厩務員もいるらしく、スミレの世話は全て厩務員さんがしてくれたようでスミレは満足顔。


 厩務員さんに新しい馬具が欲しいのだけど良いお店を知りませんかと尋ねたら、厩務員さんの実家のお店を紹介され、後で紹介状を書いてくれるそうです。この馬具クイントのハンターギルドの備品だから返さないといけない。


 夕食は部屋での食事になるらしく、目の前に沢山の料理が並んでいます。宮廷料理長が言っていた通り公都はお魚料理が名物らしく、美味しそうなお魚料理が多くて目移りしてしまいますね。


 テーブルの下にシートを敷いて、メイドさんが取り分けた料理をみんなの皿に載せてあげると、セラもルーくんも美味しそうに食べてる。ペロの前には魚の素揚げした物に野菜のあんかけのかかった物がまるまる一匹置かれていて、メイドさんに手伝ってもらって骨を取って食べてる。どうやら一人で全て食べる気でいるらしい。


 ミーちゃんにお魚食べる? って聞いたけど、首を振られた。猫缶が好きなんだね。



「み~」



 しかし、どれだけ食べたんだろうか? 何度も給仕の方が部屋を出たり入ったりしていた記憶がある。今はデザートを食べているけど、それすらおかわりをしている始末。ミーちゃんはアズキアイスに夢中ですけどね。


 やっと、食事と言う名の戦争が一段落着いたので少しゆっくりする。セラとルーくんはメイドさんにモフられ中。ペロは妊婦さんのようなお腹をさすりながらベッドで休んでいる。俺はミーちゃんを抱っこしながら部屋の中で読書の続きです。


 読んでるのはルミエール王国の地理に関する本。街の名前や名産品などが書いてあるけど、地図は大雑把にしか書かれていない。無いよりましって程度。


 さて、お風呂に入りますか。そう、風呂があるんです。結構大きな浴槽に常時お湯が張ってあります。先ずはミーちゃんからかなと思ったら、セラとルーくんも一緒にやって来た。メイドさんと手分けして洗ってあげ、洗い終わると桶の中でまったりしている。


 次は妊婦さ……ペロだね。無理くりベッドから引っ張て来て、メイドさんに洗ってもらう。



「にゅははは……くすぐったいにゃ~」



 結構喜んでるようだ……。その間にミーちゃんとセラとルーくんを乾かして、ベッドに連れて行く。セラがミーちゃんとルーくんの毛づくろいをしてくれてます。さてと、やっと俺の番、ペロは湯船でまったり。メイドさんが何故かまだ居る。もう、良いですよ、ご苦労様でしたって言ったら、ニコッと笑って俺を椅子に無理矢理座らせて洗い始めた。いやぁー、助けてー。


 何とか、俺の大事な所は死守した。メイドさんから、チッって聞こえたような気がするのは、気のせいだよね……。



「女は獣にゃ」





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