54神猫 ミーちゃん、女としてのプライドを傷つけられる。

 ミーちゃんが決めた事だから仕方ないけど……ちょっと汚いんだよね。



「しょうがにゃいにゃ。森を五日もさまよったにゃ。そしたら良い匂いがして、それを辿ったらご飯を食べてる姫を見つけたにゃ」



 ん? って事は最初に感じた視線はペロなのか? なんで盗賊が来た事すぐに教えてくれなかったんだ!



「ご飯の事だけ考えてたからにゃ、気付かにゃかったにゃ」


「……」



 にゃにも言えにゃいにゃ……。


 それより、ちょっと服を脱げ! 体を洗え! ミーちゃんの近くにそのばっちい格好で近寄るな!



「水は冷たいにゃ……」



 な、なんて贅沢にゃ……な。仕方ないのでミーちゃんの桶に水を入れ、水スキルでお湯にした。



「おぉー、ネロは異能持ちかにゃ」


「水スキルだよ。掛けるぞ」


「待ったにゃ!」



 ペロはそう言うと、猫になった……猫になったよ。大事だから二回言いました。猫の姿になったペロは桶に自分から入って行ってまったりしてる。



「ふぅー、極楽にゃ~」



 しゃ、喋れるんかい!



「それは異能? それとも獣人って誰でもそんな事できるの?」


「み~?」


「獣人にゃ? 中には居るみたいにゃけど、にゃんで獣人の話がでるにゃ?」


「何がってペロは猫獣人だろう?」


「違うにゃ、ペロは妖精族のケットシーにゃ。エルフ族やドワーフ族と一緒にゃ」


「エルフ族とドワーフ族は人族だよ」


「ん? そうにゃのか? にゃらペロも人族にゃのか?」



 いや、それは違うと思うな。ペロは妖精族だと思うよ、たぶん。



「まあ、どっちでも良いにゃ。ペロはケットシーにゃ」



 軽いね……。嫌いじゃないよ、そう言うの。



「ケットシーは猫の姿になれるにゃ。街に入る時はこの姿にゃ」



 猫化と言うケットシーの固有スキルみたいだ。他にも猫袋って言う固有スキルがある。小さいらしいけど収納スキルの一種らしい。便利だ。


 桶に入ったままだらぁーんとしているので、こっちも急いでいる身なので体を洗ってやった。



「気持ち良いにゃ~。本当にゃら男には触らせにゃいんだからにゃ。特別にゃんだからにゃ!」



 バスタオルでくるみわしゃわしゃ拭いてやる。


 ミーちゃん、狭くなるけどキャリーバッグにペロも入れてくれる?



「み~」



 バッグの脇を開けてペロを突っ込む。



「姫のお部屋に入れて頂けるとは、幸せにゃ~。おぉー、あったかぽかぽかにゃ」



 それじゃあ、行きますか。スミレにまたがると目を覚ました盗賊が声をかけてきた。



「お、おい。俺達をどうするつもりだ!」


「どうもしませんよ」



 さぁ、スミレ行こう。後ろから罵声が聞こえるが無視だ。いちいち気にしていたら身が持たない、こう言う世界なんだと割り切る。我ながら順応性が高い。それとも神様がそう言う心にしたんだろうか?


 だいぶ時間を食ってしまったので、テルツォの街に着いたのは陽が暮れた後だった。


 ハンターギルドに急ぐペロ絶対に喋るんじゃないぞ。



「わかってるにゃ。ネロは心配性だにゃ。ハゲるにゃよ」


「みぃ……」



 ミーちゃん、ご心配ありがとうね。ペロくん誰のせいだと思ってるのかな?


 ギルド内は大賑わいだ。王都が近いと言う事もあるんだろう。王都へはこの街から普通の馬で一日の距離、スミレなら二、三時間で着くんじゃないかな。


 ハンターさんのブーイングを尻目に人混みを突き進む。何とか受付に着き緊急用の手形とギルド職員証明書を受付のお姉さんに見せた。



「!? すぐに担当の者を呼びます!」



 ギルドの奥の部屋に案内される。



「このギルドの統括主任のヴィッシュだ」


「ネロです。こっちはミーちゃんです」


「ペロにゃ」


「……」



 あぁ、やっちまった。だから言ったのに……。



「ハハハ……変わったお供を連れているんだね」


「お供じゃにゃいにゃ! ニャイト兼用心棒にゃ!」


「もしかして、ケットシーかい?」


「そうにゃ」


「これは珍しいね。ケットシーに会ったのはこれで二回目だよ」


「会った事があるにゃか?」


「数年前にね。森で迷ってたのを助けた事がある」



 ケットシーって森で迷うスキルでも持っているのだろうか……。



「そうかにゃ。それは良い事をしたにゃ。ケットシーは義理堅いにゃ。きっと良い恩返しをしたと思うにゃ」


「ハハハ……。そうだね。大変懐かれてね。家の周りの野良猫との間に子供をたくさん作ってくれてね、賑やかにしてくれてから旅立って行ったよ」


「……」


「みぃ……」



 全然、恩返ししてないし逆に迷惑かけてない? 猫との間に子供ができるんだ……。気を付けねば。ミーちゃんに変な事したらペロのあそこ切るからな。



「ひ、姫にそんな事しないにゃ。姫はまだお子ちゃまにゃ……」


「みぃ……」



 ミーちゃんの女としてのプライドが……。


 猫との間にはケットシーは生まれないのかな?



「ケットシーの女性以外ケットシーは産めないにゃ」


「君達は面白いね。それで要件は何なんだい?」



 忘れてました。ヴィッシュさんに手紙を渡す。読み終わったヴィッシュさんが



「うーん。不味い状況のようだね、これは。大事にならないと良いが……。キングの再来は勘弁して欲しいね」



 ゴブリンキングが生まれれば全面戦争になるらしい。この国の周りに居る魔王はまだおとなしい部類らしいけど、新興勢力が生まれると今の均衡した状態のバランスが崩れ、大きな戦いになる。それが何十年か前にあった大戦だ。


 この国の隣国では、迷宮で会ったオークと呼ばれるモンスターのキングが生まれそうとかで、大きな戦いに発展しそうな雲行きらしい。そんな時にこの国にまでゴブリンキングが生まれたら大戦は必至だとヴィッシュさんは言っている。



 大変な世界に来ちゃったね、ミーちゃん。



「みぃ……」




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