48神猫 ミーちゃん、暗い雰囲気を明るくします。

 スミレはギルドの厩務員さんが世話をしてくれるそうなのでお任せします。俺に馬具なんて外せないしね。スミレの頭を撫でてから厩務員さんにお願いした。


 ギルドの中に入ると慌ただしくなっていた。武器防具を装備したハンターさんに、つけ慣れない装備をハンターさんに手伝ってもらい装備しているギルド職員さんもいる。



「ご苦労様でした。ネロ君」


「いや、本当に死ぬとこでしたよ。スミレが居なかったら危なかったです。病み上がりのスミレにだいぶ無理させてしまいました」


「そうですね……スミレにも後で感謝していると言っておきますね」


「そうしてくれると、スミレも喜ぶと思います」


「私達はする事がありませんので休んでいてください。それから申し訳ありませんが、朝の勤務にもついてください。人員が足りませんので」


「わかりました」



 こればかりはしょうがないよね。ギルド員さんも多く出て行ってしまったから。


 馬舎に行くと、厩務員さんがスミレを丁度洗い終わった所だったので、水スキルで水を集め大気スキルで吹き飛ばした。前以上に時間短縮だ。


 桶に水を入れ、飼い葉も用意する。厩務員さんが見てないうちに、水にミネラルウォーターを一本分入れておくのも忘れない。


 スミレを撫でてから、ギルドの酒場に行き少し寝たよ。流石に疲れた……。


 数時間仮眠をとり起きるけど、まだ誰も戻って来てないようだ。目が覚めたので、クアルトでやっていた掲示板の仕事をする。前日の未受理分を書き写し終わった頃、エバさんがやって来た。



「あら? ネロ君はこの仕事もできるの?」


「はい。朝にこの仕事をして、夕方から買い取りカウンターの仕事をしてます」


「まあ、ネロ君は働き者なのね。ちゃんとお給料は貰ってるのかしら?」


「時給千レトに、ミーちゃん手当千レトがつきます。まだもらった事ないですけど……」


「まあ、妥当な額ね。お金は足りてるの?」


「迷宮探索の時の稼ぎが良かったので、今のところ問題ありません。宿代と食事代も今はかかりませんから」


「そう、必要な時はちゃんと言うのよ」


「はい、ありがとうございます」



 エバさんから依頼の書かれた紙をもらい掲示板に書き写す。


 いつの間にか、目を覚ましたミーちゃんがバッグから顔を出して、不思議そうに俺を見ている。ここ、どこ~? って顔をしてるね。



「ここはハンターギルドだよ。夜中に非常事態が起きてね、お手伝いしてる所だよ」


「みぃ……」



 気付かないでごめんねって顔をしてるね。頭を撫でてあげてからお皿にミネラルウォーターを注いであげた。


 依頼は多いけど今日はあまり忙しくないだろう。街に残っているのは街中の仕事をする名ばかりのハンターと、駆け出しのハンターくらいのものだからね。


 時間になり受付が始まっても予想通りに、のんびりしたものだった。依頼を受ける人達がまばらになった頃、やっと第一報が届いたようだ。


 村の方は、まだ戦闘が続いてるそうだ。一旦、村の門の前のゴブリンを退けハンターさん達が村に入ったけど、すぐにまた包囲されたらしい。迷宮の方はゴブリンを撃退したそうだけど、多くの怪我人が出たうえ七人が亡くなったそうでうち五人が作業員さんだそうだ。


 これって連動してるのかな? だとしたら何の為? ふと、思った事がある。流れの迷宮に限らず、迷宮って人族の為だけにあるんだろうか?


 ゴブリンの持ってる武器や防具は本当にゴブリンが作っているのかな? クアルトでゴブリンがAFを持っていた件もある。と考えれば、ゴブリンも迷宮の恩恵を受けてるんじゃないのだろうか? モンスターの生息地に流れの迷宮や固定の迷宮が無いとは言えないと思う。


 村を襲うのが陽動だとしたら、ゴブリンの知能って末恐ろしい事だと思う。まあ、考え過ぎだと思うけどね。今度、この仮説をギルド長にでも聞いてもらおう。



「ネロ君、ご苦労様でした。帰って休んでよくてよ」


「でも、まだみなさん帰って来てないですよね」


「日中は人が居るから大丈夫。迷宮に向かった人達も間もなく帰って来ますし、薬師ギルドで人も手配してるから大丈夫よ。それに夕方からはお願いね」


「わかりました」



 馬舎のスミレに挨拶してから宿に戻り朝食を食べてから寝る。


 ミーちゃんはギルドに残ってお仕事する事になっている。この暗い雰囲気をミーちゃんの愛らしさで何とかしたいと頼まれたのだ。ミーちゃんも了承したので、お昼の猫缶とミネラルウォーター、皿を預けてお願いして来た。


 目覚ましが鳴っている。気付けば夕方、目覚ましかけてて正解。爆睡だったようだ。


 身支度を整えてからハンターギルドに向かう。ギルド裏から入るとミーちゃんが飛びついて来た。



「お仕事ご苦労様。ちゃんとご飯食べた?」


「み~」


「それじゃあ、もう少し頑張ろうか」


「み~」



 迷宮から戻った怪我人は薬師ギルドで看護し、残りは休んでから村の援護に向かったそうだ。寝ていた自分がちょっと恥ずかしい……。


 領主もこの事を重く見たらしく、更に私兵とこの街の衛兵の幾人かを援護の者達に加えたそうだ。あれから情報は入っておらず、どのような状況になっているかわからないとの事。


 買い取りカウンターも閑古鳥が鳴いている。ギルド内もハンターは一人も居ない。駆け出しハンターさん達は明日に控えて帰ってしまった。ミーちゃんの周りだけが姦しい声が響いている。でも、そのお陰でギルド内が気鬱な雰囲気にならずに済んでいる。ミーちゃんが居るだけで明るい雰囲気になるって凄いよね。



「向こうはどうなっているんですかね?」


「ギルド長も向かったから、上手くいくよ」



 ヘンリーさんはギルド長を相当信頼しているようだ。ギルド長をそっと鑑定してみたけど、ゴブリン五匹分の強さと出ていたのを覚えている。



「ギルド長ってそんなに凄いんですか?」


「あの人はこの国の英雄の一人なんだよ」



 ヘンリーさんの話を聞くと何十年か前にあったモンスターの親玉である魔王の軍勢と、この国が戦った大戦当時に活躍した英雄の一人なんだそうだ。ギルド長は土スキル持ちで英雄と呼ばれた人達の中でも五本の指に入る程の活躍を見せ、その功績でギルド幹部になり今の立場までのぼったそうだ。大地の狂乱と言う二つ名持ちでもあるらしいね。


 と言う事は、鑑定で見える強さってスキル抜きの力って事だね。スキルの使い方次第では強くも弱くもなるって事になる。その辺の研究ってしてないのかなぁ。考えようによっては自分の能力をさらけ出す事にもなるから、秘密にしてるのかもしれない。異能と呼ばれる力もあるしね。


 翌朝の仕事もエバさんに頼まれた。エバさんって寝てるんだろか? とんでもなくタフだよね。俺が軟弱なだけなのかな……?


 ミーちゃん共同浴場に寄ってから帰ろうか?



「み~」




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