43神猫 ミーちゃん、ネロにプレゼントをする。

 ドワーフのおっちゃんが倒されたアヴェラントリザードの口元に倒れている。


 死して尚、手から武器を離さないのは戦士の鏡だね。って、おっちゃん死んでないよね?


 普人族のお姉さんが回復スキルで足を治療している所を見ると死んでないようだ。どうしよう手伝うか? でも男にチュー……口移しする気はないので、ドワーフのおっちゃんの顔にミネラルウォーターを掛けてやった。ドバドバっと。



「ゴホッ、ゴホッ、ブハッー! な、なんじゃー」



 どうやら意識を取り戻したようです。一応、ミュラーさんと猫獣人のお兄さんにもミネラルウォーターを渡して飲ませる。



「こ、これは……」


「オイオイ、まさかだよな……」


「初級万能薬兼初級ポーションです」


「「「……」」」



 ここに居る全員が固まった。ついでにドワーフのおっちゃんの足にも、余ったミネラルウォーターを掛けてやる。ドバドバっと。



「どのくらい使った?」



 俺が飲んだ以外だと全部で三本かな。スミレは一日に五本以上飲んでるけどね。



「これで三本分ですかね」


「オイオイ……」


「今日の稼ぎがパーかも……」


「やっちゃった……」


「みなさん! 何を言ってるのですか! ネロ君が居なかったら全滅していた可能性もあるのですよ! まずは、ネロ君に感謝すべきではないのですか!」



 ミーちゃんを抱っこして隠し部屋に来た、エルフのお姉さんがみんなを叱りつける。彼らも自前でポーションなどは用意しているけど、流石に初級とは言え万能薬は数回分しか用意していないらしい。今回の場合、毒消しポーションで済むみたいだけど、俺はミーちゃんのミネラルウォーターがあるから必要ないので持ってない。大は小を兼ねると言いますし……。



「そ、そうだな……悪かった。ネロ君、仲間を助けてくれた事感謝する」


「そうじゃな。全ては、命あっての物種。小僧、感謝する」


「わりぃ……助かった」


「あ、ありがとう」


「助かりました」


「別にお金を取る気はないので、安心してください」



 まあ、実際お金はかかってない。体がだるくなるけど……。



「それは駄目です! それを認めれば、我々のハンターとしてのプライドと我々の命の価値が下がる事を意味します。ハンターの暗黙の了解に、命の借りは命で返すと言う程、ハンターは己の命に誇りを持っているのです」


「それなら、その命の借りは命で返すで良いんじゃないですか?」


「え!? そんな急にそんな事言われても……まだ、会って間もないし……」


「ネロ君、大胆!」


「見掛けによらず。オオカミなのかも……」


「うぉほんっ! ネロ君、そう言う事はだな……別の場所でだなぁ……なあ?」


「若いのう」


「良いんじゃね?」



 はぁ? なんの話をしてるんでしょうか? この時、自分が言った事の意味を知るのはずっと先の事……。



「みぃ……」



 ミーちゃん。なんで、その残念な子を見る目をしてるの?



「と、取り敢えず、この部屋の探索済ませませんか?」



 みんなも納得して周りから落ちてる物を回収し始める。



「しかし、こいつは異常に強かったなぁ」


「そうじゃのう。確かに強敵である事に変わりはないが、ここまで追い詰められるとはのう」



 どこかで、同じような事を聞いた覚えが……?



「収納するぞ」


「ちょっと待ってください!」


「どうした。ネロ君?」


「少し調べさせてください」



 俺は、アヴェラントリザードの体をチェックしていく。全体を隈無く探すと、ありましたよ。尾の先に付いてる刺の一つに、指輪が嵌っている。外して鑑定してみると、出ましたAFです。身体強化の指輪、装備者の身体能力を微UPと出ている。



「AFです」


「「「……」」」


「来たぁー!」


「凄い! AFなんて初めてだよ!」


「夢のマイホームが……」


「み~」



 どうしたの? ミーちゃんが何か咥えて持って来た。また、お気に入り見つけちゃった? ミーちゃんが咥えて持って来た指輪を鑑定してみる。耐性の指輪、稀に異常状態を防ぐ。



「あー。もう一個、AF見つけちゃいました。ミーちゃんが……」


「「「……」」」


「よっしゃー!」


「夢じゃないよね? 夢なら覚めないで~」


「夢のマイホームが更に近付いたわ……」



 エルフのお姉さんに渡して再度鑑定してもらう。身体強化の指輪は二割増しの強化。耐性の指輪は同じ鑑定結果でした。



「聞いて欲しい。どちらかをネロ君に渡そうと思う」


「そうじゃのう。それだけの働きはしたじゃろう」


「私も賛成です」


「「「……」」」



 マジっすか? 男前過ぎるやろー!



「ネロ君、好きな方を選んでくれ」


「本当に良いんですか?」


「我々の命の代償と思えば、まだ足りんよ。ハッハッハッ!」



 それじゃ~あぁ、耐性の指輪かな、ミーちゃんのお気に入りみたいだしね。



「耐性の指輪でお願いします」


「了解だ」



 ほら、ミーちゃん貰ったよ~。何故かミーちゃんは受け取らず、俺の手をテシテシ叩いてる。も、もしかして!



「俺にくれるの?」


「み~」



 まさかのミーちゃんからのプレゼント! ミーちゃん、ありがとう! 感謝の気持ちを込めて、チュッチュッしましょう! じゃあさっそく、装備するね。



「羨ましいですぅ……」



 ん? なんか聞こえた?



「ふうー。終わったか?」


「結構、あったのう」


「大漁だぜ」


「大漁♪ 大漁♪」


「大漁♪ 大漁♪」


「これは期待できますね。確認はしてませんが、ディメールの白金貨が数枚あった気がします」


「「「マジ!」」」



 ディメールの白金貨、金貨の更に上の価値の貨幣で実際には流通はしていない。大昔に栄えていたディメール帝国と言う国で使われていた貨幣で、貴重な金属を使用していた為国が滅んだ後に多くが溶かされてしまった貨幣らしいです。それでも、多くの貨幣が残っていているので、金貨の上の価値として使われている。更にこの上にもいくつかの貨幣があるそうだ。見る機会は無いと思うけどね。そんな貨幣は通常、国や商業ギルドなどで大口の取引に使われるので個人で持っていても使い道がないらしいね。


 ちなみに、ディメールの白金貨は商業ギルドで管理していて貨幣価値が変動するそうです。今だと、二百万レト位で取引されるらしいね。


 もう、みんなお腹いっぱいなので、さっさと帰りのルートを探しましょう。正直、くたくたですよ。


 それから迷宮の外に出れたのは、三の鐘と半位の時刻だった。下に降りる道は見つからなっかったので未探索の中央部分にあると思う。次回はそこの探索になる。



「明日は休みにしようと思う。今日はいろいろあったからな」



 確かに、ドワーフのおっちゃんも怪我したから、一日位様子を見た方が良いかも。



「儂か? 酒で消毒すれば、なんの事はないじゃろう」


「だとしてもだ。今日の収穫の整理をしないと、もう入らん」


「「「おぉー」」」



 ですよねー。あれだけロックリザードを狩れば当たり前、アヴェラントリザードもある。


 俺としては、ゼルガドさんとの約束があるから助かるな。どうするか迷ってた所だったから、ついでにスミレとの散歩もできる。



「み~」




【補足】

『命の借りは命で返す』

言葉は多少変わるけどにゃ、ハンターさん達の間でのプロポーズの言葉にゃのにゃ。ネロがその事を知るのはまだまだ先の話にゃ。乙女のミーちゃんは薄々感じてたみたいだけどにゃ。



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