35神猫 ミーちゃん、お仕事姿に風格が出てくる!?
疲れた体がリフレッシュされたって感じだね。本音を言えば帰って寝たいけど……。
ミーちゃんも艶々になって、番台のおばさんにモフられまくっていた。
「この子、本当に人懐っこくておとなしい子だねぇ。うちの周りの野良猫とは大違いだよ。触ろうとすれば威嚇してきて、ご飯もらう時だけ猫撫で声を出すんだからねぇ」
「ハハハ……ミーちゃんは飼い猫ですから、人と接する事が好きなんです」
それをお仕事にもしてるからね。
「み~」
ハンターギルドに戻り、ミーちゃんはお仕事着に着替えてお姉さん達の元に向かう姿に、なんか風格が出てきてないかい? モデルさんみたいだよ。
ミーちゃんに負けていられない、俺も頑張りますか。
「ネロ君は、少しの間この街に居るんだよね?」
「はい、十八日後にクアルトに戻る予定になってます」
「ふむ。なら十分だな」
「何が十分なんですか?」
「いや~、この頃早く帰れてるだろ。その分家族サービスができてね。妻から今度は男の子が欲しいわ、なんて言われちゃってさ~。頑張ちゃってみようかな~なんてね」
「……さあ、仕事に戻りますよ」
「やだな~ネロ君はつれないな~。ネロ君にはちょっと大人のお話だったかな?」
「大人の話って子供じゃないんですから……十八過ぎてますし」
「「「……」」」
周りのお姉さん達とヘンリーさん達買い取りの職員さんの時が止まっている……。何故じゃぁー! こうなったら黙々と仕事してやるんだからなぁー!
今日も今日とて忙しいハンターギルドでした。
翌朝はスミレの所に行ってミネラルウォーターと猫缶を与えてから、約束していたゼルガドさんの所に行く。
「おう、待ってたぜ。準備はできてる。裏に行くぞ」
工房の裏の庭に、それはセットされていた。
レンガが積まれた前に大きな板が何枚も重ねられ、その前五メルの所に置いてある台に短い筒と長い筒が固定されている。
「筒が破裂する恐れがあるからな、手で持たなくても良いように固定しておいた」
短い筒にホローポイント弾、長い筒にライフル弾がセットされているそうだ。
ミーちゃんを安全な場所にキャリーバッグに入れて置いておく。顔出しちゃ駄目だよ。
「み~」
それでは、実験開始です。
ゼルガドさんが木製の盾を渡してきた。上のあたりに穴が空いている。覗き窓だね。盾を構えて短い筒に意識を集中する。イメージは弾の後ろに二つの圧縮した空気の塊を作り後ろの圧縮した空気を一気に膨張させる。
プシュー、スポンッ! ガガッ!
なんだろうか、このサイダーの瓶の蓋を開けた感じの音は? 威力もただ打ち出すよりは威力があるけど、思っていた程ではない。
長い筒もやってみたけど同じ結果だ。長い方が狙った場所近くに飛んでるくらいかな違いは。
「これで問題点が見えたな」
ゼルガドさんは納得してるようだ。説明してもらう。
どうしても筒と弾の間に隙間ができて、せっかくの押し出す力がそこから抜けている。
それと同時に弾を込める為、中折れ式にしてるのでその隙間からも空気が抜けている。シリンダー式にすると尚抜けると思われる。
更に、筒を下に向けると弾が落ちて行く。薬莢が無いので引っかかる所が無いから当然だね。最後に弾が空気の抵抗を受けて真っ直ぐに飛ばない。特に短い筒の方だ。
上記の内、幾つかは解決策がある。できるできないは別としてだけど。
その一つが、バザーで買っておいた蝋だ。これを小さい容器に溶かして入れ、弾の後ろの部分に付着させる。
「成程な。それで隙間を埋め、更に下に向けても落ちないようにする訳だな。考えたな」
もう一度やってみる。体積が増えた分、弾を込めるのは多少無理矢理に押し込む事になる、周りは蝋なのでたいした力は要らないけどね。
今度は短い筒にライフル弾、長い方にホローポイント弾を入れてみた。
結果は段違いに良くなった。良くなったけど、壊れた…。短い筒の方がね。中折れ式の部分の金具が壊れてバラバラ事件です。お嬢様。
検証結果。もっと頑丈にする。ホローポイント弾は空気の抵抗を受けやすいが破壊力はある。ライフル弾は空気の抵抗を受け難くく貫通力がある。部品のつなぎ目をどうにかして空気の漏れをなくす。と言った所かな。
一番の問題点は命中精度が低いと言う事。弾が空気の抵抗を受け安定した弾道が保てない事にあると推測される。解決策は銃身の内側にライフリングを刻む事、弾の形状を変える事しか思いつかない。
地球の現代の戦車の多くはライフリングを刻んでいない、滑腔砲が主流だと本で見た。それは弾の形状が違うからだ、戦車の弾はダーツのような細い形状に砲径に合わせた付属の型枠が付いていて、打ち出された後その型枠が外れるようになっている。そんな機能付けれる訳がないよ。
となると、弾自体に回転を与えて真っ直ぐ飛ばす方法。そう、残された道はライフリングしかない。ゼルガドさんに絵を描いて説明する。
「ふむ。弾に回転を与えて直進力が増すって事か? 誰が考えたんだこんな事?」
さあ、そこまでは存じあげません。
「できなくはないな。それ用のドリルを作れば良いだけだ。で、どのくらい刻めば良いんだ?」
「確か八条ぐらいで三十センで一回転だった記憶があるんですが……」
「うむ。まあ、やってみるか。三日後にまた来い。それまでにまた試作品を作っておく。それからおそらくな、制作費用に足が出るぞ」
やっぱりそうなりますよねぇ。お手柔らかにお願いします。
ミーちゃん、必要経費です。よろしくお願いしますね
「み~」
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