24神猫 ミーちゃん、猫用品大活躍します。
目の前にチラチラと透明な板が目障りだ。頼むから後で見るから消えて欲しいって思ったら消えたね……。
周りを見る。まだ自分の近くにはゴブリンは居ない。手にあるのは小剣のみ。使っていた槍は折れて使い物にならない。どうしようか……腰に手をあてて気付く。投げたはずの短剣が鞘に収まっている。あれ? とんでもない方向に飛んで行ったはずだよね?
試しにファーレンさんに襲いかかろうとしているゴブリンに短剣を投げる。今回は余裕を持って投げたおかげで、ゴブリンに突き刺さりゴブリンの動きが鈍った。
ファーレンさんはそのゴブリンに止めを刺す。
「助かった! 感謝する!」
腰に手をやると短剣がある。こ、こいつは凄い! おそらくだけど一定時間経つと鞘に戻ってくるんだろう。
そうとわかれば、外したとしても気にする必要はない訳なので、目の前のゴブリンに力一杯投げつける。短剣はゴブリンを掠って飛んで行ってしまったが、ゴブリンの動きが格段に悪くなっている。
この調子で味方に当てないよう気を付けながら投げ続ける。だんだんとコツが掴めてきたようで、狙った所に飛んで行くようになった。
そのせいもあってかファーレンさん達、前で戦ってる人達の戦況が持ち直してきた。これなら勝てると思った矢先に、遠くから大きな咆哮が聞こえた。
「不味いぞ! ボスが来るぞ!」
ボスって……もうお腹一杯なんですけど。
ゴブリン達が引いて行く。引いて行く先に二メル以上ある影がある。ハンターさん達と警備団の人達が集まって来る。
「ちっ、ここでボスの登場かよ!」
「最初から狙っていたんだろうな」
「全員行けるか?」
みんなが話をしてる間に、荷馬車に掛けていたバッグの中から大きな水筒とミネラルウォーターを出して水筒にミネラルウォーターを混ぜ、それをファーレンさんに渡す。
「あぁ、ネロ君。済まない」
ファーレンさんが少し飲んで、ほかの人に回す。順々に回して戻ってきた時には空だった。これで少しは回復してくれれば良いけどね。俺は直接ミネラルウォーターを飲んだよ。
「水が旨いな」
「それが生きてるって証拠だ」
「疲れが少しとれたわ」
「さぁって、もう一丁やりますか!」
こちらの準備が整うのを待っていたかのように、巨大な影が動き出した。
かがり火と月明かりに浮き上がったのは、巨大なゴブリン……。
鑑定するとゴブリンリーダー、ゴブリン五十匹分の強さと出ている。少し鑑定の熟練度が上がったのかな? だとしても、わかり難いですよ、鑑定さん。
ちなみにファーレンさんは、ゴブリン三十匹分の強さと出た。あのゴブリンリーダー凄く強いのかも……。
ゴブリンリーダーは大きな片手剣と盾、鎧まで装備している。あれって誰が作ったんだろうね? ゴブリン社会にも職人さんているのだろうか? もし居るのなら、それなりの文化があるって事になる。話し合いとかできないのかなぁ……。
ハンターさん達が先制攻撃を仕掛けた。矢と火の玉がゴブリンリーダーを襲うけど、盾を振るって簡単にはじいている。俺も短剣を投げるけど簡単に盾で防がれる。あの巨体でなんて身のこなし、侮れん。
警備団の人達が槍で攻撃するけど、剣の一振りで数人が吹き飛ばされ怪我をおいバリケード内に運ばれて来る。
「ポーションはどうした!」
「おかしい。血が止まらない!」
「これは……毒でも塗ってあったのか?」
「気を付けろ! あの剣に毒が塗ってあるぞ!」
「ポーションがもう無いだと……」
どうやら、不味い状況のようだ、在庫のポーションを使い果たしたようだ。うむー、どうしようか……って考える必要ないよね。助けないと!
俺ごときではゴブリンリーダーの相手にはならない、ならできる事をしよう。バッグからペットボトルを出して怪我をしてる人のもとに向かい、傷口にミネラルウォーターをを掛ける。傷口からブクブク泡が出て傷が塞がっていく。ちょっと気持ち悪いね。
「それはポーションか?」
「初級ポーションです」
「そうか助かる」
怪我した人達に少しずつ掛けていく。万能薬でもあるから毒も一緒に消えてるはず。
「クッ、こいつ強いぞ!」
「隙がねぇ!」
「すまん! 矢が尽きた!」
向こうも不味い状態のようだね。何か俺にできる事はないかな? 短剣を投げて気を引くか? 気を引く……? そうか、その手があるか。一か八かだな、最悪俺が標的にされる恐れがあるがやってみる価値はありそうだ……。
ミネラルウォーターを呷りバッグからある物を取り出し、誰も居ない場所に走る。短剣をゴブリンリーダーに投げて気を引き、用意した物をゴブリンリーダーに向けてヒラヒラ振る。そう、それはミーちゃんのおもちゃの猫じゃらし!
ゴブリンリーダーが動きを止めて猫じゃらしを凝視する。何が起きたかわからず、ファーレンさん達の動きが止まっている。
「今です!」
「お、おぉー」
俺の声でファーレンさん達の攻撃が決まり、ゴブリンリーダーが咆哮を上げた。ここでチャンスを逃す訳にはいかない、猫じゃらしを見せつけるようにヒラヒラさせる。ゴブリンリーダーは攻撃を受けているにも関わらず、猫じゃらしが気になって気になって仕方ないようだ。
流石、神様仕様のおもちゃだ。半端ないね。
しかし、ゴブリンリーダーと言う事あって、必死に誘惑に抵抗してるのが見て取れる。が、とうとうゴブリンリーダーは誘惑に打ち勝てず、標的を俺に変えたようだ。ひょぇー、最悪パターンになってしまったよ……。
なので、猫じゃらしをひっくり返してレーザーポインターをゴブリンリーダーの顔に向ける。今までが嘘のように嫌がり始めて、盾で顔を覆い隠してしまう。
「何が起きてるか、わからんがチャンスだ! 畳み掛けろ!」
「「「おぉー!」」」
ゴブリンリーダーは顔を覆い隠したまま剣を振るっているけど、そんな体勢ではまともに動く事もできずゴブリンリーダーの苦痛の咆哮が響き続ける。
「ここだ!」
ファーレンさんの渾身の突きが決まり、ゴブリンリーダーに止めが刺された。凶悪な巨体がゆっくりと倒れていく。
ゴブリン達がギーギー喚きながら、逃げ出し始めた。
どうやら、終わったようだよ……。
ミーちゃん、疲れたよー。
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