2神猫 ミーちゃん、異世界にお出掛けする。

 ふと目が覚めると、どこかの路地裏の家の陰だった。


 てっきり、何処かの草原のど真ん中で目覚めると思っていた。本当に良い神様だったな。感謝してもしきれないね。



「み~」



 ん? どこからか、神様のペットの子猫のミーちゃんの鳴き声が聞こえたような……空耳かな? って、思っていたら、肩から下げていたバックがモゾモゾしている。あらやだ、怖い。



「み~み~」



 どうやらバックの中から鳴き声がするようだ。開けてみるか。



「み~!」



 はい。ミーちゃんですね。なんでここに居るのかな? また、勝手に出てきちゃったの? ちゃんと帰れる?



「みぃ……」



 いや、怒ってる訳じゃないよ。悲しそうな顔を向けてくるので、抱きあげてなでなでしてあげた。



「み~」



 ミーちゃんは嬉しそうに頭をスリスリさせてくる。可愛いなぁ、そう言えばくしゃみが出ないな。神様、猫アレルギーも直してくれたらしいな。取り敢えず、どこか座れる場所に行って考えよう。


 裏路地から出て表通りに出ると、この街が結構大きな街だという事がわかる。そんな表通りをミーちゃんを抱っこして適当に歩いていると公園を見つけた。公園にはいくつもベンチがあるけど、どれも座られていて座る場所がない。仕方ないので花壇の脇の石に座る事にした。


 ミーちゃんを抱っこしたまま、バックの中からハウツーブックを出して読み始める。


 まずこの国はルミエール王国と言うらしく、この世界では比較的大きな国で他国との争い事も少ない国らしい。戦争するよりも、モンスターを退治する方が優先される世界のようだ。


 今いる街はクアルトと言う商業都市。この国の西側にある比較的大きな街と書いてある。読み進めて行くと、一般常識的な事などが書いてありその中に貨幣価値について書かれている。


 単位はレト、貨幣価値は一レト一円くらいだそうです。


 金貨 100000レト

 大銀貨 10000レト

 小銀貨 1000レト

 大銅貨 100レト

 小銅貨 10レト


 となっていて、金貨の上にも貨幣があるようだけど当分関係ないね。


 他にもこまごまと生活様式や身分制度など役に立つ事が書いてある。後でじっくりと読もう。そしてペラペラと最後のページを開くと、急いで書いたような文章が添えられていた。


 なになに、ミーちゃんが俺を気に入って勝手について行ってしまった。行った事に問題はないけど当分帰りたくても帰れないらしい。俺をこの世界に送り込んだ事により当分この世界に繋がる道を作れ無いそうです。なので、ミーちゃんの面倒を見てほしいと書いてある。


 そうか、帰れなくなちゃったのか。俺はこの世界で天涯孤独の身、でもミーちゃんが一緒なら寂しくないね。



「よろしくね。ミーちゃん」


「み~!」



 ミーちゃんが顔をペロペロしてくる。くすぐったいです。ミーちゃんとのスキンシップは名残惜しいけど、取り敢えず今日の宿でも探しますか。流石に野宿は現代人の俺には厳しいと思う。なんとかお金を稼いで毎日宿には泊まれるようにならないとね。


 そんな事を考えながら通りを歩いていると、『憩いの宿木亭』と言う看板が目に止まる。中に入り女将さんらしき人に声を掛けてみた。



「すみません。今日ここに泊まれますか?」


「もちろんだよ。何泊だい」


「一泊お幾らですか?」


「素泊まりは三千レト、朝晩二食付きで四千レトだよ」



 素泊まり三千円、食事は一食五百円ってところか、まだこの世界の標準物価はわからないけど妥当な金額だと思う。神様がお金を持たせてくれると言っていたので、バッグの中を探してみると皮でできた財布があった。結構入ってるね。でも、お金を稼ぐ手段のない今無駄遣いはできない。



「連泊するので、まけてくれませんか?」


「しっかりした子だね。そうだね、五連泊してくれたら朝食付けてあげるよ」


「二食付きにした場合はどうです?」


「朝食代の四百レトをまけてあげる。どうだい?」



 一泊三千六百レトか。言ってみるもんだね。



「それでお願いします。それから、この子も一緒なんですけど良いですか?」


「み~」


「あら、別嬪さんだね。構わないけど、おしっこはやたらめったらされると困るよ。兄さんが掃除だからね」


「善処します……」



 前金でお金を払い、鍵を貰った。



「二階の二番の部屋だよ。それから、共同浴場は五つの鐘がなってからだから気を付けなよ」



 一般の家には風呂は無いようだが、比較的大きな街には共同浴場があるらしい。元日本人だから風呂があるのは嬉しいね。


 部屋に入ると狭いが綺麗な部屋だ。ベットにテーブルに椅子、小さいけどタンスもある。ベットに座り、ミーちゃんをベッドに降ろすと丸くなってスピスピ寝てしまった。


 そう言えば、部屋に鏡が無いな。自分はどんな顔をしているんだろう。街中を歩いて見たところ、色々な人種がいる事は確認できた。ちょっと見だが、二足歩行のトカゲさんまで居た。


 人の顔立ちは西洋風も居れば、東洋風の人も居た。統一感はなかったので、どんな顔立ちでも問題はないと思う。


 神様から貰ったバックの中身を確認する為、全部出してみる。ハウツーブック、替えの洋服に下着が四セット、タオル二枚にバスタオル、石鹸に歯ブラシセット、ブラシが二本、小さい鏡、財布だ。


 ブラシの一本はミーちゃん用と鑑定できた。あの神様ミーちゃんにはとても甘い方のようだね。後でミーちゃんをブラッシングしてあげよう。喜んでくれるかな?


 小さい鏡で自分の顔を見てみると、元の自分をハーフにした顔立ちだった。髪の色は濃いグレーで目の色はブルーだ。可もなく不可もなくと言った感じ、この辺はサービスしてくれなかったようだ。残念。


 財布の中身は宿代を払ったので金貨五枚、大銀貨八枚、小銀貨二枚だ。六十万レトも持たしてくれた。感謝。無駄遣いはできないね。


 ベットに横になって、ハウツーブックを読む。どうやらこの世界にはモンスターのボス的存在がいるらしい。人族はそのボスを倒す事により人が住める場所を増やしているけど、逆にモンスターのボス(面倒なので魔王と呼ぶ事にする)に攻撃され奪われる事もあるらしい。怖いです。


 そんな事に巻き込まれたくはないけど、強くなるんに越した事は無いから頑張ろう。


 可愛い寝顔のミーちゃんを見てたら、なんか眠くなってきた……。



「すぴぴー」



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