第七十八話 凶龍 その3

 佐助は驚愕した。


 「鱗が......再生してる......!?」


 佐助によってはだけた表面から鱗が浮き出るように次々と再生されていく。


 「一体どうなってるんだ......!」

 

 佐助がマルヴァードの上に乗ったまま動揺していると、マルヴァードの尻尾が佐助の横に飛んできた。


 「!?」


 直後、尻尾は佐助を吹き飛ばし、壁に激突する。

 しかし、壁がへこんだ所には、彼がさっき剥がした鱗だけだった。


 「危ねえ、もう少しで故人に会うことになるところだった......」


 その佐助はその光景をただ見つめるエドナ達の所に移動していた。


 「何あれ......」


 エドナがそう呟いているのは、マルヴァードの容姿についてであった。

 全て生えきった鱗の境目からは赤い光が漏れており、目も真っ赤に染まっている。

 マルヴァードの怒りを可視化したような姿である。


 「あれが凶龍マルヴァードの真の姿か......見ているだけで勝てる気を殺がれるな」


 黒幕さんは冷静にネクタイをしめ直す。


 「みなさん!!」


 彼らの後ろにいるベンガルが呼ぶ。


 「発射の準備が出来ました、下がっててください!!」


 彼がそういうと、エドナ達はベンガルの後ろに下がった。

 砲台には、デジタルな画面で「READY...」と表示されている。


 「では行きます、耳を塞いでいてください!!」


 ベンガルは注意すると、固定砲の発射ボタンを押した。

 画面からその文字が消えると、それと同時に巨大なビームを吐き出した。

 ビームは轟音を出しながら、エドナ達に向かってくるマルヴァードを包み込んだ。


 「グオオオオオオ......」


 凶龍は悲鳴を上げるも、ビームの音によって掻き消されてしまう。

 すると、ビームの勢いがあまりにも強すぎて、コンクリートに次々に亀裂が入り始める。


 「大丈夫なのこれ!?」

 「ちょっと威力が強すぎましたか!」


 とうとう天井も崩れ始める有様である。

 そろそろ自分たちもその崩壊に巻き込まれるんじゃないのかと心配し始めたころ、ようやくビームは収束する。

 

 「お、ビームが打ち終わりましたね」


 ビームの衝撃によってコンクリートはボロボロとなっていた。

 天井はエドナ達のすぐ前まで崩れており、その穴からは月夜の光が差し込んでいる。


 「凶龍は......?」


 エドナは辺りを見渡すが、マルヴァードの姿は見当たらない。


 「恐らく、瓦礫の下に埋もれているのだろう」

 「死んだ?」

 「それは知らないな。生きているかもしれない」


 黒幕さんの予想は当たっていた。

 すこし様子をうかがっていると、瓦礫から音がした。


 「まさか......!」


 瓦礫が暫く蠢いていると、そこから赤い目のマルヴァードが頭を出した。


 「あれで死んでいないのか!?」


 マルヴァードは瓦礫から身体を出していく。

 鱗の境目はいまだに赤く光っている。


 「ああ、これで死なないんなら、僕たちじゃ打つ手はありませんよ......」


 ベンガルが固定砲を元に戻したキューブを抱えながら弱音を吐く。

 しかし、マルヴァードは彼らに対して襲ってくる様子もない。


 「あれ......来ないけど......」


 エドナは天化を解きながらも、首を傾げる。

 その様子からして、もう彼女らとやりあう気はなさそうだ。


 「グウウ......」


 すると、マルヴァードは翼を広げる。

 そして、上の方を向くと、その翼をはためかせて、天井に開いた穴から飛び立っていった。


 「あっ逃げた!」


 エドナは一回解いた天化を再び発動させて、飛んでいく。

 黒幕さんは殺人影を出すと、彼が自らその影の中に入っていった。

 そしてその影は、壁を伝って外に出た。


 「佐助さん!」

 「ああ」


 ベンガルは佐助から許可をもらい、彼の背中に乗る。

 その佐助は、ワイヤーの機会を取り出し、それを穴の外に出す。


 「よし、固定されたか」


 佐助はそれを確認すると、その機械を使ってワイヤーを巻き、二人を釣り上げる。

 全員がその穴に上りきったころ、マルヴァードは空中を飛びながらある方向に向かっていた。


 「あれってペソ城跡じゃない......?」


 エドナが指さした。

 いまいるところからはから結構距離がある。

 

 「何をしにあそこへ......」

 「とりあえず、あそこに行ってみますか」

 「はぁ、また移動かぁ、めんどくさ」


 そして4人は、ペソ城跡へと向かっていった。

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