第七十一話 鬼は鳴く
「う、来るなああああ!!」
城の一階。
手下は剣を振って陰陽師、泰昌が近寄るのを防ごうとする。
「ほいっ」
しかし泰昌は
「んー、魔法や札を使うまでも無いねぇ、弱いねぇ」
泰昌が薄ら笑いをしながら煽るような言葉を発した直後、彼の後ろから人影が現れた。
「!」
死んだと思っていた手下が力を振り絞って剣を振り上げている。
口から血を垂らしながらも、泰昌の脳天を斬ろうとする。
「おお......」
と、どうなるかと思いきや、手下の胸、腕、首に空中から出現した剣が貫く。
「あぐ......」
倒れた手下の後ろには、髪を短くサイドアップしたアイラがいた。
「慢心してるんじゃねえ。死ぬぞ」
彼女の三白眼が泰昌を睨む。
「おお、怖い怖い」
「助けてもらった奴の態度じゃないな」
「余計な世話だったね。あんなのは僕でも仕留められるさ」
「......!」
泰昌は挑発するような、アイラはイラついた表情をだし、彼らから少々険悪なムードが漂い始めると、いつの間にか複数人の手下たちに囲まれてしまった。
しかもそこには、二体ほど、ギリシャ神話に出てくるオルトロスのような、頭が二つあるエネミーがいる。
「ほらほら、こんなことしてたら囲まれちゃったじゃないか」
「誰のせいだと思っている」
「まあまあ、ここは二手に分かれて戦うといこうじゃん」
「......ったく」
と、アイラと泰昌は二手に分かれて処理することになった。
アイラが手下達に近づくと、突然、手下の一人が大声を上げてアイラに向かって剣を持って走り出す。
「お――」
剣はアイラの頭部に入刀し、そのまま後頭部へと貫いた。
「......」
アイラは動く様子がない。
「......や、やった!!」
手下はぬか喜びをする。
しかしその直後、彼の頭部に拳銃が突き付けられる。
「え......」
それはアイラが出現させた銃であった。
彼女はその銃を持って彼に突きつけていた。
確かに、剣は彼女の額を刺している。
普通なら即死だが......。
「私に剣や銃は効かない」
と言うと、彼女は銃の引き金を引いた。
手下の頭は一瞬でザクロとなる。
「ひ......!」
手下やエネミーは怯んで、立ち尽くしている。
アイラは額に刺さっている剣をゆっくりと抜く。
剣に血は付いていない。
剣を抜き終えると、額に本来空いているはずの穴はない。
「......じゃあ」
アイラは両手から鉄の塊をだした。
そしてそれは、形状を変え、やがてサブマシンガンとなった。
「ムカついてるから一気に殺す!」
彼女は憂さ晴らしにそのマシンガンを一斉に発射させる。
マシンガンの音と共に手下達の血肉は大量に飛び散り、エネミーも一緒に葬られた。
「おお、派手な殺し方だねぇ」
泰昌はアイラの戦闘風景を眺めた後、ヘアゴムで止めた後ろ髪を揺らしながら彼が担当するべき敵に目を向ける。
エネミーは唾を垂らしながら喉を鳴らし、手下は覚悟を決めたような顔をしながら彼に剣や銃を向ける。
「ほお、君たちは命を捨てる覚悟があるんだね?」
彼はそういうと、手下の横に位置している左右の壁から、魔法陣を出現させた。
「!?」
手下たちはどよめいている中、泰昌は魔法を唱える。
「『魔術・
刹那、真空波を可視化させたような光が魔方陣の間を高速で出入りし始めた。
ある一つの光が手下の首に触れると、首をすり抜けるように通りすぎていった。
その光はもう2、3人の首にも通りすぎていくが、斬れたような音はしない。
そしてその後、手下達の首は滑り落ちていった。
その光は大量に現れ、全ての手下達の体中をで斬っていく。
「ガウッ!?」
魔法陣が消滅したころには、魔法陣の中にいなかったエネミー以外の手下は全滅していた。
エネミーは怯えているのか、歯をむき出しにして、喉を大きく鳴らしている。
「ウガアアアアア!!」
怯えのあまりか、エネミーは泰昌に飛び掛かってくる。
「戯けた犬だ!」
彼はそういうと、エネミーの噛みつきをかわしながら札を取り出し、エネミーの頭の一つに投げつけた。
「狂犬には狂犬らしい死を! 『呪術・
と、泰昌が唱えると、エネミーに貼ってある札の文字が光出した。
するとそのエネミーの腹部は急激に膨らみ始めた。
「グ......!?」
エネミーは口を開けながらもがき苦しむ一方で、その腹は膨らみ続ける。
泰昌はそれを躊躇いもなく見ている。
そしてとうとう、エネミーの腹は破裂した。
「......ふぅ」
彼は声を出しながら息を吐く。
「泰昌、終わったか」
アイラが火を点けていない煙草をくわえている。
そしてオイルラーターを取り出す。
「ああ、終わった」
「あれでよくも盾ついたものだ」
と、オイルラーターを点火させようとするが、やはり中々点かない。
「......そのオンボロライター、交換したらどうだ?」
「あぁ? まだつくんだから勿体無いだろ」
アイラは泰昌の意見を否定したところで、ようやく火がついた。
彼女はすかさず煙草に火を当てる。
「なんだそりゃ......」
泰昌はやれやれと言った感じで溜息をつく。
「......まあいいや、あの八瀬という幹部を再び探しに行くか」
と、泰昌が武臣の捜索を続けようとした時、彼のすぐ隣にある壁からひびが入る。
「!」
そしてその壁が壊され、そこから伸びてきた手は、天獣手であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます