緑(リウ)の一族

作者 山野ねこ

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★★★ Excellent!!!

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 ファンタジー小説はなぜ存在するのか。例えば『ガリバー旅行記』のように社会と歴史の風刺であったり、数多あるライトノベルのように現実ではかなわぬ欲求をファンタジーの世界で消化するという役目もある。そしてこの作品のように、作者の世界への祈りや願いを込められるのも一つのあり方だろう。フーケーの『水妖記』や日本の雪女伝承などに見られるように、無垢な異形の女と人間が恋におち、そして人間の男が禁を破り悲恋に終わるという物語は世界中に存在する。優れた筆力から描き出される美しい異形の少女と彼女が生きる桃源郷、可憐な少女が美しき思い出の地で男を想い待ち続ける様は、やがて迎えるだろうお約束の結末に読者は胸をざわつかせるかもしれない。だが本作は過去の典型の悲劇では終わらない。最後に作者が託した人間への希望があるからだ。“人間をもう一度信じてみよう”という本作のキャッチコピー(変わってる……。)、それを彼らと同じく信じることができるのか、そこはあくまで読者次第。ファンタジーは所詮ファンタジーと突き放すのか、それとも現実以上の真実があると読むのか。

★★★ Excellent!!!

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「緑(リウ)の一族」と呼ばれる、人に似ているけれども、人ではない者たちがいます。彼女たちは緑を操ることができ、それは強欲な人間にとっては、非常に魅力的な「金づる」に映ってしまいます。
 第一部で語られる、商人アスランと緑の一族の少女ラーレの物語は、悲しみに満ちています。彼らの運命について、ここで触れてしまうわけにはいかないのですが、どんなに読み進めるのが辛くなっても、是非、第二部の最後までお読みください。人の醜さよりも、人を信じたくなる気持ち。希望にあふれた思いが胸に沸き上がってきます。

さんがに★で称えました

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

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『緑の一族』。人に近い姿を持ちながらも、人とは違う成り立ちを持つ一族。

彼女たちとの出会いによって、物語は幕を上げる。
罠にはめられ森に置き去りにされた商人アスランと『緑の一族』の少女。二人が出会い、絆を深めたことで引き起こされた悲劇は、第1部で破滅の結末を描き出していく。

二人の出会いは、ただの悲劇で終わったのだろうか?
その問いは第1部から第2部へと移り変わり、時を変えて答えを導いていく。

第2部は、ある意味それと対になった再生の物語と言えるだろう。
幼い王子アスランが、かつて『緑の一族』であった大樹と言葉を交わし、王というもののあり方に疑問を持つ。

王とは何か、何のために自分は存在しているのか。その答えを見出した時、少年は王として立つ。そして燃え上がる大樹……しかしそれは終焉ではない。一つの終わりを迎え、大樹もまた新たな道を歩みだす。

『神様はいなかった』——再び目覚めた彼女は語った。
神様がいないのなら、自らの道は己で決めよう。名もなき彼女が出した答えもまた、一つの再生の証であったのだろうか。

この物語に、最近の流行りのファンタジーの要素はない。
だがそれでもしっかりと形作られた世界観と登場人物に、心を寄せずにはいられない。

なぜ命は生きるのだろう? その答えをしっかりと噛み締めながら、この物語の最後のページを閉じたいと思う。

さんがに★で称えました

★★★ Excellent!!!

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幼い頃、夢中になって読んだ幻想文学の世界を思い起こさせてくれるような、素敵な物語に出会えました。

文章はあくまでも柔らかく、親しみやすい優しい雰囲気を持っています。図書館の児童文学推薦図書にして頂きたいくらい。作者さまの紹介文にある通り、流行りの異世界転生の要素を全く持たない、こう言った純粋なファンタジーは埋没してしまう傾向にありますが、もっと高く評価されて良い作品です。



純粋な存在である人外の少女と、人間らしさを感じさせる青年との清らかな純愛が、人間の愚かさと欲望に巻き込まれ……と、読み進めるうちに悲しくて辛くなってしまう場面もあります。でも、最後は納得のできる終わり方で、じんわりと心を解きほぐされました。こういう柔らかな温もりに包まれたようなエンディング、良いですね。

作品の構成も素晴らしいです。

第1部と第2部で、絶望的な状況に置かれた、時代は違えど同じ名前を持つ二人の人間。一人は絶望の中で自分の信念を失い、大切なものさえ忘却の彼方に置き忘れ、もう一人は絶望の中で迷いながらも希望を失わず、未来を信じて傍らに寄り添うものと共に歩いて行く。

心の弱さが試された時、人はどうすべきなのかを考えさせてくれる……そんな奥深さを感じさせてくれる物語でもあります。ぜひご一読を。