第38話「調査!調査!調査!2」



「頼む……おっぱい画像をくれ」

 

 2

 

「さすがにないよっ」

 

 かすれた声で叫んだノブナガは、データ処理に励んでいたのか、何かの処理に励んでいたのか、息が荒く、はあはあしていた。自分でも何をいっているのかわからないが。とにかく。

 

「じゃあそういうことにしといてやろう」

 そういって、対象を変える。

「メンバーのじゃなくて、いいよ。すごいのがいい」

 

 即レスで膨大なエロ画像が送られてくる。

 

「どれだけ普段から収集しているんだよ」

 画面に呟いて、さっそく画像解凍ソフトでファイルを展開。

 

 そのうちの一つをを切り取り、

 ブログのヘッダー部分に貼りつける。

 

 それから無線LANを切断し、

 自分のスマートフォンからワイファイを飛ばす。IP情報を変更させ、もう一度ラップトップからブログに接続する。

 

 念のための措置だ。

 

 インターネットに接続されるのを確認してから、OSよりコマンドモードを起動させる。

『Microsoft Windows [Version 99.0.9001]/Copyright (c) 2017 Microsoft Corporation. All rights reserved./C:\Users\kunagisha>■』

 

 それから、「ipconfig」と入力。

 出力結果が、次々に画面に羅列されていく。

 

【C:\Users\kunagisha >ipconfig

 Windows IP 構成/Wireless LAN adapter ワイヤレス ネットワーク接続:

接続固有のDNSサフィックス……: x-zone.jp/リンクローカルIPv99アドレス…… :

fe80::a96a:bc5b:24f8:31/ IPv88アドレス……: 290.151.170.4/サブネットマスク……:

255.255.255.0/デフォルトゲートウェイ ……: 290.151.170.242/イーサネットアダプタ ローカルエリア接続:/メディアの状態……:メディアは接続されていません/接続固】

 

 IPアドレスが変更されたことを確認して、もう一度ブログサービスにつなぐ。

 適当なユーザー情報を入力して、別アカウントを作成する。

 

 

  

  

  このサイトには不適切な画像コンテンツが含まれています。

  

  

 運営である――『ライフ・ポリティクス』に、

 18歳未満禁止の画像が掲載されていることを知らせるのだ。

 

「『当該サイト』では、猥褻な成人指定の素材は使用禁止なはずです。

 利用規定に違反していると……」そんな文句を、通報フォームにうちこむ。

 

 

 

 そして、もう一つ――サイトを作成する。

 

 数時間後には、利用停止に追い込まれるであろうサイトの内容を、

 そっくりそのままコピーして、スペアをつくる。

 

 コピー先は、【Xai】

 

 中国の【Xai-entific(サイエンティフィック)】社の構築した――、

【Fakebook】と並ぶ二大実名SNSだ。

 

 

  3

 

 

 実名登録型のSNSに本体を移す理由は、二つある。

 

 一つは、足跡機能の存在。

 

 もう一つの理由は、匿名性を、可能な限りゼロに近づけることだ。

 

 SNSが、実名であるべきだというのは、多文化主義であるアメリカに端を欲する。

 名を名乗れ。

 何かを言いたいのなら、出自をはっきりさせろ。

 というのが、近年のISの問題や、テロの問題などの起こる向こうでは、

 ますます、重要視されているらしい。

 

 僕がやっているのはIPアドレスから個人を特定する作業だ。

 

 そんなことできるわけがない。

 と、これまで数々のサイト、匿名掲示板、などで囁かれ、また否定されてきた。

 

 だが、これだけ現実がネットの世界を侵食し始めている現在においては、

 たやすく、閲覧者を網にかけることができてしまう。

 

 誤解を恐れずにいうと、

 足跡つきのSNSとアクセス解析を組み合わせると、

 

 

 クローズドなコミュニティ・サイトの時代ですら、それができた 。

 SNS以前に流行した、特定の趣味や嗜好をもつ人間だけが集まれる、登録制のサイトなんかが好例だ。

 

 自分のページに訪れたユーザーの履歴が足跡で表示され、

 またコミュニティ・サイトからは、

 自分のHPのリンクを貼ることができる。

 

 コミュニティサイトは、登録制なので、必ず「足」がつく。

 

 そのリンク先のHPに、アクセス解析をつけておけば、

 いつ(閲覧日時)、

 どこから(リンク元のコミュニティサイト)、

 誰(IPアドレスやマシン情報)が飛んできたか、

 

 一目でわかる。

 

 ――はずだった。

 

 僕はそのまま意識を失った。

 

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