第115話 生き抜いていく俺達
気付くと日が落ち暗くなっていた。
血の臭いが辺りを立ち込めている。
アルマが側にいて俺をずっと見つめていた。
俺は意識せずに口から言葉が出てきた。
「……帰るか」
「どこへ帰られるんですか?」
「俺の家だよ。4年とちょっと過ごした俺の家に。……アルマも来ないか?」
俺はアルマの顔を見ながら手を差し出す。
「……教皇様はどうなされます?」
「そうだな。このままじゃ可哀想だよな」
ルクサーナの亡骸を担ぎ大きな木のもとに運び、剣とで墓穴を掘る。
時間が掛かるが気にせずに掘る。
月明かりが墓穴に当りスポットライトの様に浮き上がって見えた。
無言でルクサーナを埋めると家に向かって歩き始めた。
後ろからアルマが付いてきた。
「あれ? 付いてくるのか?」
「はい」
「てっきり振られたんだと思ったんだが……」
「……さすがに不謹慎かなと。だけど貴方に一緒に付いていきたいです」
アルマは微笑んで俺に寄り添ってきた。
「なんだか懐かしいな。何日も離れてないのに」
家に辿り着いたが家は崩れ落ち、畑は荒らされていてすぐに生活が出来るような環境では無かったが、不思議とやる気が満ちてきた。
――振り出しに戻るか。
いや、前よりも状況は酷いが、知識はここに来た当時よりずっとあるし、何よりもぼっちじゃない。
「アルマ。キミも一緒にここでの暮らしを作っていってくれるか?」
「はい!」
アルマは元気に返事をしてくれた。
道中に色々な話をして、より気持ちが縮まり様々な表情を見せてくれるようになった。
「……そう言えばアルマ。キミの祝福の話を聞いてなかったな。教えてくれる?」
「はい。私の祝福は【
「呼寄せ? ……それはどんな効果があるのかな?」
「ふふ。私も教皇様とお会いするまではどんな作用をするのか分かりませんでした」
教皇に教えられた所によると、「ある対象」を呼び寄せることができるらしい。ただ、すぐに効果が出るわけではなく長い期間祈念しながら「ある対象」に呼びかけ続けるとそれが叶うらしい。
「シンゴ様をこの世界に呼び寄せたのは私の祝福の結果です」
「……なんだって?」
「私の祝福を利用して教皇様が貴方を、昔の恋人を呼寄せたいと仰ってました。それが教皇様の僅かな希望だと」
「……」
「でも、私が呼寄せた人は教皇様の恋人だけではありません。私と一緒に幸せを築いてくれる人を呼寄せようと必死で祈念しました」
アルマは顔を伏せながらチラチラと俺の反応を気にしている。
――複雑だな。元の世界に未練は無いが、でも俺の人生に干渉するのは……
俺が無表情なことに気付いてアルマは泣きそうな顔をしている。
――人生に干渉しあうのは当然か。それが人同士の触れ合いなんだからな。
「アルマ」
「……」
「呼寄せたからには責任を取ってもらおうか。これから俺の側でこき使ってやるからな」
俺はアルマに笑いかけると、アルマが抱きついてきた。
また、この世界で生存競争をしなければならない。
俺の祝福は使えない祝福では無いが、使ってはいけない祝福なのかもしれない。
でも、俺はもうぼっちではない。
これからは
使えない祝福とぼっちな俺<改訂版> @WOKI
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。使えない祝福とぼっちな俺<改訂版>の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます