第90話 偵察する俺
俺ひとりに2000人て。気合いを入れてきましたな。
ただ、この人数差をひっくり返すのはちょっと無理。逃げるしかない。
でも、ただ逃げるだけってのも癪に障る。夜陰に乗じてちょっとイタズラしてみるか。
街道までは歩き慣れたので最小限の光で歩ける。
昔の忍者が持っていたような懐中電灯の先祖のようなもの、所謂、|強盗提灯【がんどうちょうちん】で照らしながら道を進む。これだと光が拡散しないので気付かれにくい。
侵入者の陣で焚いているであろう火の光が見えてきたので、こちらは火を覆い光を漏れないようにする。
慎重に近づいてみる。だが、見張りが厳重で隙がない。馬防柵のようなもので囲われているので陣の中に潜り込むことが困難だ。短期間でこれだけ陣地を構築する技量ってなかなかなもんだよね。
前回は柵も無かったし、見張りもいなかったが、今回は付け入るところが無い。
どうするか。悩ましい。このまますごすごと引き返すのも口惜しい。
――う〜む。俺の思考が物騒になってきたな。
相手が戦いを求めて来てることが確定しているわけではない。
ただ、相手が戦いも覚悟をしているのは間違いない。
思い悩んでいると斜め後ろからガサガサカチャカチャと音が近づいてくる。
音の方向を見ると松明の火が木々の隙間からチラチラと見えすぐ側まで迫っている。逃げるだけの時間がないので茂みに紛れて姿を隠す。
隠れてすぐにガサガサと茂みを鉈で切り拓きながら5名の小隊が目の前を通り過ぎて行く。
――装備が今迄みたなかで一番整ってるし、規律がしっかりしてる様子だな。陣地の周りもしっかり巡回してるし、余計な事せずに帰ったほうがいいな。
人間の目は動くものに注意を向けてしまう習性を持っているので動かずにじっとしやり過ごす。人の顔も白い部分が多いので気付かれやすいので面を伏せて気配を窺う。
先頭を行く人間が立ち止まる。周囲を確認している様子だ。何か動く気配があり全員の足先がこちらを向く。
――気付かれた?
中腰になりながらゆっくり近づいてくる。松明の火が掲げられ俺の潜む茂みに忍び寄ってくる。
――まずい!
俺は手を上げて振り下ろす。
たちまち兵士に見つかり声を上げられる。
「ここに誰かい……」
声を途切れるて前のめりに倒れてきた。それを見た他の者達も声を上げようとしたが小隊の全ての者が倒れた。背中を見ると矢が突き刺さっている。連れてきた人形達に狙撃されている。
吹き矢では倒すのに時間がかかるので弓矢を持たせた部隊も引き連れてきたので助かった。
しかし、無音で倒したとはいえない。途中で叫んでいた人間もいたので異変を察した見張りや兵士達が声が飛び交い、激しい足音が聞こえてきた。
――これ以上は無理だな。逃げるか。
祝福を使い、倒した小隊をゾンビ化し陣地に向かって走らせる。
その隙に俺は勝手知った道を走り抜け家に舞い戻った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます