第89話 解体する俺

 家に戻ってくると仮死状態になっている猪を捌くことにした。


 トンカツ食いてぇ。トンカツ。猪だけど。

 猪肉は鍋にすることが多いような気がするがどうだろう。

 獣肉臭いから味噌鍋にするのか? 硬いから煮こむのか?

 獣を解体するのは上手くなったが猪は食べたことが無いので良くわからない。


 まずは後ろ足を木にロープで吊るし、心臓を一突き。

 腹の中心部の一番薄い場所を縦に裂く。首の周りに切り込みを入れて頸動脈を切り血を出す。肋骨を左右に押し開き、なるべく血で汚染しないように各部位を丁寧に取り除く。


 内蔵に手を入れると温かい。いや、熱いと言うべきか。今まで生物として生きていた事を実感する。


 内蔵を取り除き、川の水でザバザバっと洗う。

 取り除いたものは胆嚢、心臓、肝臓を除き捨ててしまう。他の部位も食べられるが処理が面倒くさい。

 そして、皮下脂肪にナイフを差入れ皮を剥いでいく。皮を引っ張りながらナイフを皮に押し当て、皮下脂肪を出来るだけ肉に残しながら剥いでいく。

 肉は適当な大きさに切り取り川で洗い、吊るして干しておく。表面が乾いたら布で覆って徹底的に血を抜く。心臓も同様だ。

 胆嚢はカピカピになるまで干しておく。

 

 ここまでで3時間。人形にも手伝わせているが、細かい作業は出来ないので俺がやるしかないので時間がかかる。


 今日のディナーは肝臓だ。肝臓も血を取り除かないと獣臭いがすぐに腐ってしまうので早めに食べてしまう。

 ちなみに生食はやめたほうが良いだろう。そもそも肝臓は免疫機能の一つで血液に病原体があった場合にはそれ摂取してしまうことになる。つまり肝炎になったりする。

 俺の祝福で菌や寄生虫を殺してしまえばいいのかもしれないが、気持ちが悪いので焼いて食うことにしている。


 さてとあの肉はいつ食うことにするか。熟成で3日はおいておきたいが、腐敗との勝負になる。川の中に漬けておくと熟成が味がぼやけてしまう。悩ましい問題だ。


 しかし、今日も大変だった。


 猪の群れには喧嘩を売るべきではないな。エバ達が全滅してしまったので、護衛する人形を明日からまた作らなくてはならない。

 猪のトンカツを食べる楽しみを夢見て今日は早めに寝るか。


 家の中に戻ろうとすると、偵察任務をしている人形が伝言を持ってきた。


(街道沿いの広場に軍隊が陣を構築。数2000人)

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