第82話 自衛する俺
追手から逃げ切りなんとか塀の中に滑り込んだ。
恐ろしかった。ペース配分も何もなく、ただただ家に全力で走るだけで他は何も考えられない。
追手は手痛い反撃を思い出したのか家や畑の外側に巡らしている柵の内側までは近づいては来なかった。
ただ、俺の家の周辺をウロウロするのはやめて欲しい。ゲリラ人形の毒矢も無くなった様子で攻撃をしていない。弓人形の射程からも外れている。
弓人形への矢の供給はスムーズにいくが毒矢の供給は考えてなかった。使いきりタイプの人形になってしまう。兵站用の人形を作らないといかんな。
長期戦になると俺一人きりなので不利になる。眠れる時に寝ておかないと体力が持たないので見張りはエバに任せて眠るとしよう。
夜が明けて目が覚める。
いつの間にか兵士達はいなくなっていた。
粉塵爆発をした後がどうなったのか気になったので懲りずに忍び寄ることにした。前回と違うのは死体さんとご一緒することにした。その死体さんの死因としては1体は撲殺。もう1体は神経毒が効きすぎたか外傷はないので見た目は悪くない。味方と誤認してくれるかもしれない。
歩いて行くように指示をするがイマイチ動きがぎこちない気がする。生前の動きはトレースされないのか?
死体に先行させ、俺は藪に紛れながらついていく。陣があった近くまで来たが人の気配はしない。思い切って視認できるところまで距離を詰めると拍子抜けした。
粉塵爆発して地面が黒く煤けてるところを中心に木と草が刈られた広場があるだけだ。
……彼奴等どこにいった? 逃げ帰ったのか?
状況的に撤退したと考えるのが適当だろう。昨夜盗聴した限りだと援軍どうのこうの言っていたので、戦力増強してやってくるかもしれない。
どうするか。
家の在処を知られているので何処かに移住をするか。折角畑やら何やらを拡げてきたのに。また一からやり直しか。
反撃するか。人形はあれど所詮は多勢に無勢。数で攻められたらあっという間にやられるだろうな。
どちらにせよ少し時間稼ぎをしたい。
俺はジロリと動く死体に目をやる。
こいつらを働かせるか。
しかし、適当なものが思いつかない。
適当なものって何かって?
そりゃ俺の持っている祝福|微生物学者【マイクロバイオロジスト】を最大限有効活用するためにだな細菌戦を仕掛けようかなと。
ちょっと鬼畜かな。
それほど大事になりそうもない病原菌とか。でも足止めになりそうで流行性の高いもの。後腐れなくものがいいと思うが……
ダメだ。
思いつかない。インフルエンザぐらいしか。
スペイン風邪とかはインフルエンザじゃなかったかな。……でも日本でも死んだ奴を周りで聞いたこと無いから普通? のインフルエンザぐらいだったらイケんじゃね?
ま! いっか!
俺にちょっかいを出すのが悪い。……民間人にも多少被害がでるのは目を瞑ろう。
水筒の水にインフルエンザ菌を充填させる。インフルエンザ菌だけだと感染しないと困るのでもう一つの水筒にはO157菌も仕込んでおく。それを死体に飲ませて街に辿り着いたところで吐き出すように命令する。
でも死体がウロウロしてたら俺が原因だってバレないか?
それは不味いな。死体を処分しないと。
俺が悪者だとの風評被害を被る恐れがあるので、病原菌を吐き出したら井戸に飛び込むようにして証拠を隠滅する。
俺ってば完璧。
自衛のためだからしようがないよね。
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