第59話 道路整備員な俺
道の整備に忙しい。
一つ目は橋までの道。
これは測量結果があるのでそれほど大変ではない。道を作るポイントを樵人形に指示をして、障害になる木や藪を切り拓いていけば良い。
橋の材料が見つかるまでは当分あの仮橋のままとする。
あれより先については測量人形を先行させ状況を把握してから動くつもりだ。ただ、村を見つけたら直ぐに引き返してくるようには命令してある。
二つ目は鉄鉱石の採取場所。
山盛りの一杯の鉄鉱石から取れる鉄は僅かだ。精錬方法が悪いのだろうが取れないものは取れない。つまり鉄鉱石が大量に必要となる。
鉱物が露出している場所は地上4mのところにある。露天掘りとはいえ足場を組まなければならない。竹を切り出し、櫓を組む。竹だけだと滑るので足場には木板を貼る。
そして採取しているところから家までの足場も悪い。山道などないのでよじ登っていたが、人形達に重量物を持って行き来をさせることが出来ない。
道を作るために山肌を削ったり、櫓を組んでスロープを作ったりと重労働も甚だしい。
三つ目は石灰石の採取場所。
鉄鉱石から鉄を精錬している時に気付いた。
石灰石で作った高炉で精錬しているが、炉にこびりついた残滓を見ると、石灰石に付着している面の鉄の純度が高そうなのだ。発見した次の精錬の作業の時、鉄鉱石と木炭に石灰石を混ぜてみた。そうしたところ、ボソボソだった鉄がしっかり締まった鉄が採取出来たのだ。
また、鉄を精錬するための高炉は石灰石を積み上げて作っているため大きなサイズの石灰石が必要となる。
ただ、採取場所までは岩場を越えていかなければ行けない。岩場といっても2mサイズの岩がゴロゴロしていて俺も歩くのが困難な場所だ。ドナドナタイプのような牛型、トラック型は諦め、蜘蛛の様に長い、6本足の人形で運搬することにした。
製鉄の材料の採取も整い始め、精錬を繰り返し、鉄のインゴットがある程度溜まり始めると、鉄器の製作に取り掛かった。
まずはツルハシ。
石器では上手く採取できないので、優先していきたい。
よくTVで見ていたようなトンテンカンテン叩きだすのは難しい。金床があるが俺には出来なかった。あんなものは職人が一生かけて完成させていくような技だ。俺のようなにわかに出来るはずがない。
俺は別の方法で作っていくつもりだ。
それは鋳鉄。鋳型を作ってそれに溶けた鉄を注ぎ込んで作る簡単仕様だ。
鋳型は、まず基本となる木を削りだし元となる木型を作る。それを砂に埋めて形をとる。砂だけだと直ぐに崩れるのでこの時に石灰石を焼いて砕いたものを混ぜる。その石灰石は高炉に使った石灰石を再利用している。その高温に熱された石灰石を砕いて水でこねるといい硬さの粘り気が出てくる。これに砂に混ぜて鋳型を作る。
注ぎ口から溶けた鉄を注ぎ込んで、ゆっくりと冷ませて取り出すと出来上がり。
ただし鋳鉄は脆い。衝撃にあまり耐性がない。硬くするために焼きを入れると割れてきてしまう。
色々な問題はあるが壊れたらまた作ればいいと割り切ろう。
鋳鉄でツルハシ、ノミ、ハンマー、農作業具などを作り、俺の生活がぐんと豊かになってきた。
そんなこんなで前回村に訪れた日から半年が一気に過ぎ、4年目の春の季節がやってきた。
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