【第108話:昇格試験 その7】
グレスのツッコミの絶叫が終わり、そこからたっぷり間をおいてようやくワーグナーさんをはじめとしたギルド職員や冒険者たちから歓声が巻き起こる。
「おぉぉぉ!こんな凄い戦いが見れるなんて!!」
「うぉー!すげー!俺、今日手伝いに来てすげーラッキーだ!」
「こんな間近でこんな戦いが見れるなんて職員やってて良かった!」
冒険者や職員の興奮は中々冷めやらずしばらく続いていたが、ワーグナーさんが言葉を発し始めるとその言葉を聞き漏らさまいと徐々に静かになっていく。
「これにて冒険者パーティー『暁の刻』のユウト、リリル、メイ、そして従魔のパズとキントキのランクアップ試験は完了とする!そしてこの国のギルドマスター統括の名のもとに、いずれもその実力はプラチナランク冒険者の域に達している事間違いないと認め、3名と2匹のプラチナランクへのランクアップを宣言する!!」
ワーグナーさんがそう宣言すると、先ほどの歓声を更に上回る歓声が巻き起こり、口々にオレたちへの祝福の言葉が述べられる。
「おめでとう!心から祝福するよ!!」
「俺は沢山のプラチナランクが誕生するこの歴史的瞬間に立ち会えて最高だ!おめでとー!」
「最近の暗い知らせばかりの中で最高に明るい知らせになるよ!ありがとう!」
など、オレ達は結局数分にも及ぶ祝福の声に照れながらも手を振るなどしてこたえる事になるのだった。
そしてようやくその騒ぎが落ち着いてきた時、グレスがそっとオレに手を差し出してくる。
「ユウトっち。まぁ色々突っ込みたい事はあるけど、おめでとうっち。そして……プラチナ冒険者の世界にようこそ!」
「まぁなんだ。オレはまだ冒険者としてはわからない事だらけだから色々教えてくれ」
オレはそう言うとガッチリと握手を交わす。
そこにリリルやパズ達が集めってきて、皆で喜びを噛みしめる。
(まさかプラチナランクにあがれるなんてな……)
そしてグレスが
「しかし、惜しかったっちね。あと3年早ければ歴史上初のプラチナランク冒険者だけで構成されたパーティーの誕生だったのに」
とちょっと残念そうに話す。
リリルはそれを聞いて口元に指先を持ってきて考える仕草を見せると、
「えっと……?帝国の『精霊の涙』でしたっけ?」
とグレスに確認する。
「そうだっち。世界最強……いや、歴史上最強のの冒険者パーティーだっちよ。リーダーのペンタクルスとは依頼で一緒になった事があるっちが、俺っちなんか足元にも及ばない強さだったっちよ」
そうこたえるグレスだったが、あまり良い印象を持っていないようで、
「まぁ帝国にそうそう行く用事などないだろし、俺たちは俺たちだから気にしないで良いっちよ」
と話をそらす。
オレは少し気になりはしたが、せっかくの嬉しい気分を害するのも悪いと思い、
「まぁそうだな。オレたちはオレたちだ。これで色々行動しやすくなるんだろ?ここからは皇子探しに集中して絶対に助けるぞ!」
と言いながらグレスの背中をバシッと叩く。
「なんだ。バレてたっちか」
「まぁオレも目立つのは嫌だと言ってる場合じゃなくなってきてたし、覚悟を決めてランクアップするつもりだったからな。渡りに船だよ」
オレとグレスが苦笑しながら話していると、どういう事か理解できないリリルとメイが
「ん?どういう事でござるか?」
「皇子を探すこととプラチナ冒険者になる事と何か関係があるのですか?私も自分がプラチナランク冒険者になれるなんて思った事もなかったので、よく知らなくて」
そう言ってどういう事かと聞いてくる。
オレはセリミナ様に頂いた
その中でも三つの権利が皇子探しに役に立ちそうだったのだ。
一つ。プラチナランク冒険者の国や町への出入りは、特別な理由がある場合を除き、例えその国の王であろうと禁止する事はできない。
一つ。冒険者ギルドの全ての施設と資料、情報を制限を受けることなく利用する事ができる。
一つ。プラチナランク冒険者は例えギルドマスターからの指名依頼であっても、一切の強要を受けることなく断る事ができる。
などなど、とにかくすべてにおいて制限が取り払われて自由になるのだ。
オレは一通りリリルとメイに説明して、
「だからね。皆でプラチナランクになれればギルドの情報網を使って皇子を探すことができるんだ。そして、どこの国にいようと制限なく入出国できるし、立ち入り禁止エリアでも自由に入れる」
と説明を終えると、二人とも なるほど と納得する。
「まぁ情報だけなら俺っちだけでも調べられるんだけど、規制エリアの捜索するのに俺っちしか入れないとかはさすがに不味いっちからね。またコテンパンに伸されるのは勘弁っち」
そう言って苦笑するグレス。
「もうグレスは一人じゃないんだ。オレ達『暁の刻』は絶対に魔人ゼクスなんかには負けないさ!」
こうしてここに、この世界で二組目となるプラチナランク冒険者パーティーが誕生するのだった。
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