【第94話:再会】
オレ達は守りの家の前までやってくると、門が締め切られているのに気づく。
「あれ?何で誰も門の所にいないっちかね?」
グレスも何か雰囲気がおかしい事に気付き、思わず呟く。
(あぁ。ミスったなぁ。そりゃこうなるよな……)
オレは内心自分のミスに舌打ちすると、
≪我は『
≪
と、聖なる力を行使して光の障壁を作り出す。
「え?どうしたんですか?」
リリルもオレがいきなり聖なる力を行使するので身構え聞いてくる。
これに対してオレは、
「いやぁ。ごめん。オレの判断ミスだ。アレアレ」
と言ってキントキを指さすのだった。
キントキが自分が指をさされたのに気づいて首をかしげ、
「がぅぅ?」
どうしたの?と言ってきたその時だった。
ドゴゴゴン!!
と、大きな爆発音が聞こえてくる。
するとその音にびっくりしたリリルとメイが、
「「きゃっ!」」
と、思わず短い叫び声をあげる。
メイが少し寝ぼけながら
「ユウトさん!?どうしたの?何かあったの?」
と聞いてくる。
(何かメイが寝起きで素に戻ってるな……)
とりあえずキャラを崩す突っ込みはやめておいてあげて、
「ごめんごめん。障壁張ってるから大丈夫だよ」
だからちょっと待ってて、と言って顔の広そうなグレスを連れて、魔法の雨を降らしてくる街道守備隊の元に向かうのだった。
~
オレはいまだしつこく撃ち込んでくる魔法をかいくぐって、声の聞こえそうな位置まで近づくと、
「すみませ~ん!オレ達は皇都からきた冒険者です!スターベアはうちの従魔ですから安全ですよ!」
そして、敵じゃありませんよ! と叫んで話しかけるのだが全然話を聞いてくれない。
そこでオレは、オレの後ろに隠れているグレスを
「グレス!今こそ出番だ!有名人パワーよろしく!」
と言って前に突き出す。
「うお!?あぶねぇっち!?オレは後衛なんだよ!当たったら死ぬっち!」
と叫んでまたオレの後ろに隠れようとする。
「そんな事言わずにプラチナパワーで説得してくれ~」
と、オレとグレスが魔法の雨を結構余裕でサクサク避けながら小競り合いを続けていると、年配の人の声が聞こえてくる。
「おぉぉ!!グレス様!!」
結果的に作戦は成功し、魔法の雨はやんだのだった。
~
魔法の雨がやむと守りの家の門が開き、一人の白髪の男性がフラフラしながらも走って駆け寄ってくる。
そしてグレスの前までやって来ると、
「グレス様!よくぞご無事で!」
と言ってグレスの手を取ると号泣しだす。
オレはどういう知り合い?と、グレスに聞いてみると、
「あぁ~!紹介するっち。俺っちの実家の執事長『パージオ』だっち」
とその爺さんを紹介してくれるのだった。
(おぉ。グレスって実は良いとこの子だったのかぁ~)
~
グレスはパージオさんの横まで移動すると、オレ達の方を向きなおって改めてパージオさんの紹介をはじめる。
「パージオは俺っちが子供の頃の魔法の師匠で、もと皇国の宮廷魔術師だっちよ」
「先ほどは早とちり致しまして本当に申し訳ございません。。宮廷魔術師はもう大昔の事でお恥ずかしい限りですが、グレス様のご実家で執事長を務めさせて頂いております、パージオと申します」
(あぁ。どうりで中々の魔法の雨だったわけだ)
オレは元宮廷魔術師という話を聞いて、さっきの魔法を思い出して納得すると、
「はじめまして。先日からグレスとパーティーを組んでいるユウトと言います」
と言って軽く自己紹介を交えつつ挨拶をする。
そしてリリル、メイ、そして従魔達という順で紹介を済ませると、パージオが突然
「くぉぉぉ!グレス様にとうとうパーティー仲間が出来たのですね!」
と感極まって泣き出すのだった。
オレ達3人からの『ボッチだったの?』という視線を感じて居心地が悪くなったグレスは、あわてて話題を変える。
「と、ところでよく無事だったっちな!いくつかの街が闇の軍勢に攻め滅ぼされたと聞いてたから無事な姿を見れて本当に嬉しいっち……」
そう言ってパージオさんの手をもう一度がっつり握り締めたグレスは、目に光るものを貯めながらも落ちないように器用に上を向いて誤魔化すのだった。
~
こうしてオレ達は守りの家の中に通されるのだが、そこには避難してきた多くの人たちが疲れ切った表情で座り込んでいた。
オレはその光景を見て掛ける言葉を見失ってしまうが、
「みんな!いくつかの地方都市を滅ぼし、皇都に攻め込んでいた魔物の主力軍は討ち滅ぼした!まだ残党の討伐はこれからだがきっと皇都の騎士団と兵士たちが何とかしてくれる!もうしばらくの我慢をしいる事になるが希望を捨てずに頑張ってくれ!」
とグレスが皆を鼓舞する。
すると、どよめきと共に喜びの歓声があがり、さっきまでの表情が嘘のように光を取り戻すのだった。
(凄いな。オレにはできないや。それにやっぱグレスは良い奴だ。サルジ皇子もちゃんと救出しないとな……)
などと考えていると、メイが
「……グレス殿は『っち』を付けないでも良いでござるか……僕も真面目な話をする時は……」
などとブツブツ呟いているのが聞こえたが、とりあえず聞こえなかった事にするのだった。
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