【第48話:チワワとは…その3】
オレ達が守りの家を出発して3時間。
本来なら馬で6時間ほどかかるはずの距離なのだが、パズのおかげでコルムスの街の目前まで迫っていた。
~
「ばぅうぅぅ~ん!」
パズが凄いスピードで走りながら気持ちよさそうに吠えている。
そのスピードは以前リリルが騙されて襲われたときに助けに向かったスピードに匹敵していた。
たれ耳をひらひらと風に
「こ、これは凄いでござる!もう街が遠くに見えてきたでござる!」
「がうがぅ!」
馬車の荷台の上でメイとキントキが興奮して話していた。
二人はもうパズに常識を当てはめるのはしない事にしたようだ。
リリルはまだ小さな見た目のイメージが抜けないのか少し唖然としており、
「パズくん…凄いですよね…。あんな小さな体なのにどれだけの力を秘めてるんですか…」
と、オレに聞いてくる。
オレも何て答えたらよいのかわからず、
「いやぁ…。何せパズだからねぇ…」
と、よくわからない答えを返すのだった。
しかし、一番驚いていたのはパズの常識の通じなさを知らないメアリで、
「なに!?あの子はいったい何なの!?」
と、また何度目かの声をあげる。
「魔法を使いこなす魔物ってだけでも凄いのに、この身体能力と次々と溢れ出す魔力の量は何!?古の民の伝承に出てくる伝説級の魔物といい勝負じゃない!?本当にあの子は何者なの!?」
オレも何と答えようかと迷っていると、
「パズ殿はずばりチワワでござる!!」
と、嬉しそうに答えるのだった…。
何かデジャヴを感じるが、今度はメアリが
「チワワって何よ!?」
と叫ぶのだった。
ちなみに、馬で5時間かかる所をいくらパズが馬車を牽いてもこんなにスピードは出せないだろう。
どうやったかと言うと、からくりはこうだった。
まず、パズが 僕がみんなを馬車に乗せて牽いていく というので、オレが守りの家で余っていた荷馬車を頼んで譲ってもらった。
そしてそこにキントキも含めてみんなで乗り込んだのを確認すると、パズが氷魔法を使って馬車の車輪の所に大きな氷の板を出現させたのだ。
もうわかったかもしれないが、馬車の底に大きな氷をつけてソリにして滑らして走っているのだ。
パズが小さな体に尋常じゃない魔力を纏って牽いて走っているのだが、更に道の
ただ…、オレはさっきから嫌な予感がしてならなかった。
(今街が見えてきて気付いたけど…、これどうやって止まるんだ?)
~
オレが嫌な汗をかきながら焦っていると、街の手前にわらわらといる魔物が見えてきた。
すぐに【権能:見極める者】を起動すると、コボルトの変異種を中心にした約500程の魔物が街の外壁に群がっているのが確認できた。
中には霧の魔物のアーマードベアなども多数含んでいるようだった。
しかし、オレはそれどころではない。
「パズー。パズくーん。パズーー!!ソリは急には止まれないんだぞー!?」
とパズに叫んで知らせるのだった。
するとパズは、走りながら一瞬こっちを見たかと思うと明後日の方向に視線を逸らす。
「…ばう?」
ほんと?
「あかーーん!これあかんやつやん!」
とエセ関西弁で叫ぶオレ。
そしてオレの叫びを聞いた他のメンバーも
「なんですとー!?パズ殿止まるでござる!」
「えー!ちょっとパズちゃん!このままだと魔物の群れに突っ込んじゃうわよ!」
と驚き慌てだす。
パズはとりあえず止まれと言われたので止まるのだが、パズが止まったからといって馬車が止まるわけもなく、オレたちの乗った馬車は止まったパズを追い抜いていく…。
スゥゥーーーーー……
よく滑る
「がぅぅ!?」
さすがのスターベアも怖いらしい。
しかし、ここで女神が現れた。
いや、女神と言ってもセリミナ様ではなくリリル様である。
≪わが身は力。その
『
と束縛の詠唱魔法で暴走特急と化した馬車を絡みとる。
こうして女神リリルの機転によって誰も怪我することなく馬車は停止したのだった。
ただし…。
魔物の大集団の目の前でだが…。
「パズー!後でお仕置きだからなぁ!」
と叫びながらオレ達はそのまま戦闘に突入するのだった。
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