【第41話:冒険者たち】
いくらか話して落ち着いたオレ達は、少し遠くで勝利に沸いている冒険者たちのもとに向かう事にした。
冒険者の所に近づいて行くと徐々にざわめきが起こり、たどり着いた頃にはちょっとした歓声が沸きあがった。
何事かと思って驚いていると、あの冒険者のリーダー格の男が近づいてきて、
「おぉ!お前たちが街を救った英雄パーティーか!」
と大声で話しかけてきた。
すると、それを皮切りに次々と声を掛けられる。
「よく闇の眷属の企てに気付いてくれたな!マジでありがとな!」
「おぉ!さっきのお前たちがやったのか!凄いな!」
「その従魔恐ろしいな……。でも、ありがとうよ」
「見た目そこらのガキなのに信じられん強さだな。しかし、よくやってくれたよ!」
「そっちの赤髪の子紹介してくれー!」
などなど、驚きと共に概ね感謝をされるのだった。
(よし!最後の奴はしっかり特定しておいた!)
そうこうしているともう一度リーダー格の男が出てきて自己紹介がされる。
「ようやく落ち着いてきたな。オレはテリトンの街を拠点にしているゴールドランク冒険者でジーニスという。よろしくな!」
そう言って右手を差し出してくる。
(この人がガイルさんが言ってた今街にいる唯一のゴールドランク冒険者か)
と思い出しながらオレも握手に応え、
「オレはユウトと言います。一応冒険者でアイアンです」
と、挨拶を返す。
「はぁ!?アイアンランク~!?おいおいおい。あれでアイアンとかブロンズってありえねーだろ」
と、突っ込まれる。
「そう言われても冒険者になったの自体がつい先日なので…」
もう自分が普通のスペックじゃないのはよくわかったので、この反応は仕方ないと思うが、嘘は言ってないのでどうしようもなかった。
「な…どうやらその顔は本当みたいだな…。って事は冒険者やる前から強かった口か」
たまにそういう奴はいるが…と、ようやく納得してくれたのだった。
一通り挨拶と自己紹介を終えると、とりあえずギルドへの報告をしたいから街に戻ったら一緒にギルドにくるように頼まれる。
「わかりました。オレもそのつもりだったので大丈夫です」
と承諾の返事をする。
オレも最初から冒険者ギルドには行くつもりだったので、冒険者たちと一緒に騒ぎながら街道を行くのだった。
~
冒険者はほとんど徒歩だったので、オレ達もペースを合わせて歩く事になる。
途中色々な人に話しかけられるが、元々人を覚えるのがあまり得意でないオレは、その半分も人の顔と名前を覚えきれなかった。
パズに興味を持った冒険者もたくさんいたのだが、三白眼でふてぶてしく歩くその姿に冒険者たちは本気でビビっていたようだった。
(筋肉の塊のような
と、その光景に何とも言えない気持ちになるのだった。
ちなみにこの時聞いた話によると、この討伐自体は有志で行われたものらしい。
闇の眷属は人類共通の敵という認識のようで、冒険者なら戦って当たり前といった感じだった。
その自分の命を顧みず、街を守るために戦って当然といった姿はとても尊いものに見えた。
オレの中では小説などのイメージが強くて『冒険者=荒くれ者』となっていたのだが、みんな意外とちゃんとしていて好感が持てる人たちばかりだった。
そしてその姿を見ていると、自分が使徒だという意味やこれからどうするべきなのかを考えさせられるのだった。
その後4時間ほどかけて街が見える所まで戻ってくると、既に日が暮れかかっていた。
ただ、綺麗な夕日はとても幻想的で、オレ達にお疲れさまと労ってくれているようだった。
~
街に入ると事態を知った人たちが歓迎の出迎えをしてくれた。
街の人々の感謝の声が少し照れくさかったが、守れたんだと実感させてくれる。
そしてジーニスが、
「それじゃぁお前らはセグイットの酒場か、どっかデカい酒場押さえといてくれや」
と言って他の冒険者とわかれる。
どうもこの後打ち上げのような流れらしい。
と、他人事のように思っていると、
「お前ら主役なんだから、ちゃんと来いよ!」
など声を掛けられたので、オレ達も参加しないといけなさそうだった。
そこから少し歩いて冒険者ギルドに到着すると、日は沈みきってすっかり暗くなっていたのだった。
~
冒険者ギルドに入ると職員がいるカウンターの前までやってくる。
「マスターはいるか!ゴブリンの討伐は成功したと伝えて呼んできてくれ!」
とジーニスが職員に伝えると、職員も安堵の表情を浮かべて急いでギルドマスターを呼びに行くのだった。
ちなみにリリルには街に向かう途中で粗方の経緯を聞いておいたので、オズバンさんを安心させてあげてと先に宿に向かわせており、今この場にはいなかった。
しばらくカウンターの前で待っていると、ギルドマスターではなく職員だけが戻ってくる。
そして、
「すみません。落ち着いて話せる場所で報告を聞きたいという事なので、3Fの部屋に行ってもらえませんか?」
と伝えてきた。
それを聞いたジーニスは
「わかった。それじゃぁササッと報告済ませてうめーもん食いに行こうぜ!」
と、楽し気に話しかけてくるのだった。
~
3Fまであがったオレ達は一番奥の部屋の前で立ち止まる。
そして案内をしてくれた職員がノックをすると、
「入っていいわよ」
と、女の人の声で返事が返ってくるのだった。
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