第65話 変な知識と四角い魔道具とてけてんの謎

空を飛ぶ魔道具が爆発して、服に火の付いた人が飛び出してます。それをリーナのとよく似た武器で、しゅぱっと切って裸にして――


「てけてん。またつまらぬものを切ってしまった、なのです」


かっこいーのです。すごいのです。

こんなのが一杯あるのでしょうか。さすが、リーナ達のおうち、です。


ご主人様に、リーナの場所を作っていただいてから、しょっちゅうこのお家おうちに来ていますが、まだまだ知らない場所があるようなのです。

新しい場所を見つけて、ご主人様を驚かそうと、ご主人様達が寝ちゃった後にお部屋を探検しているのです。


ここを見つけたのは、2回目の探検のときでした。


リーナの場所のある部屋の壁にあった開かないドアが、なんだか開きそうな雰囲気だったので、こっそり開けてみたのです。

そうしたら中には見たこともない、大きな四角い魔道具が置いてある部屋だったのです――


  ◇ ---------------- ◇


なんでしょう?これは。


部屋にはいると、その四角い魔道具には、メニュー?とかジャンル?とかタイトル?とか、書いてあるボタンが浮かんだのです。


不思議な魔道具をぺたぺた触って調べていたら、突然四角い魔道具の中に、口の中に口がある魔物が現れたのです! リーナ達のお家なのに!

もちろんリーナは襲われる前に素早く斬りつけましたよ? そしたら、ドンって爆発して、バチバチバチって火花が! 慌てて部屋から飛び出して、落ち着いてから、そっとドアを少しだけ開けて覗くと、なんにもなかったみたいに部屋が元に戻っていました。ほっ。


あれはいったい、なんだったのでしょう?


いろいろぺたぺたしてみた結果、どうやら、このタイトルとかいうところをペタっとすると、何かが始まるみたいなのです。


今度のやつは、絵が凄く動いています。なんだかとても楽しそうです。

そうして、リーナは、「またつまらぬものを切ってしまった」に出会ってしまったの、です。


どうやら、この魔道具は、選んだお話を表示する魔道具のようなのです。すごいのです。面白いのです。もっと他にないかなー?


ずらーっと並ぶメニューを適当に送りながら、これまた適当に、ペタっとボタンを押した場所には「フル○タル・ジャケット」と書かれていた。


  ◇ ---------------- ◇


あの時にみた、このお話はとてもためになりました。


ザンジバラードのみんなも泣いて喜んでいたと思うのです。なんだかお役に立てて嬉しいです。

またお願いされたら、今度も、てってーてきにしごいてあげちゃうのです。それがみんなのためなの、です!


でも、リーナ、殺されちゃうのはいやなので、虐めるのはなしにしておきましょう。そうしましょう。


うーんと、今日はどれにしようかなー。


  ◇ ---------------- ◇


ドアの隙間からこっそり覗いてみれば、そこではリーナがいろんな映画を選んでいた。


って、リーナのやつ、こんなところで、地球の映画なんて見てたのか。それであの謎知識が。ふー、よかった記憶まで共有されてるんじゃなくって。

ていうか、何この部屋。もし、俺がこっちの世界になじめなかったときのための、引きこもりよう保険? まったくシールス様ときたら。


なんとなく分かったことは、このハイムは、元の世界の俺の部屋にあったものや、俺の記憶から構成されているみたいだってことだ。

だから俺が使っていた製品や、俺が大事にとって置いたとっておきや、俺が欲しいと思っていたものまで、そういうもので溢れている。

また、そのうち別の部屋が拡張されるんだろうか。


ま、そういう探検は、このままリーナに任せておけばいいか。楽しそうだし。

ここはそっとして……ああん?


お、おいまて、リーナ、その辺は大人の見るものだから! 選ぶんじゃない!!


リーナが、てーっとスクロールさせている画面に、あからさまに教育上よろしくないタイトルが並び始める。


いかん、このままあれが選ばれてしまったら、なんというか、大惨事だ!


「まてまてまて、リーナ!」


俺は焦ってその部屋に飛び込んだ。


「わわわっ、ご主人様!」


リーナは耳をぴーんと立てて驚いていたが、その後すぐに、耳がぺしょんとなって、フルフルしながら、


「ついに見つかってしまったの、です。お仕置き? お仕置きなの、です?」


なんて言っている。


「いや、映画を見るのは別にいいよ」


といいながら、さりげなくペアレンタルロックをかけておいた。

ふー、これでひと安心。てか、10歳に転生させといて、AVをリストに載せないで欲しいよ。ふんとに。


「映画? です?」

「そう。現実じゃない、作り物のお話を楽しむためのものだよ」


うんうんやっぱりね、という感じでうなずいているリーナ。


「なにか面白いのがあったか?」

「はい、なのです。てけてん、なのです!」


リーナが居合いのポーズをとる。

ああ、てけてんは効果音だったのか。今度はみんなで一緒に見ような。

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