ライトノベル編
西尾維新 『クビシメロマンチスト』
どれくらいの人が僕の作品を読んでくださったのか…最先端テクノロジーの筆頭兼権であるスカイネットを思わせるGoogleAnalyticsを使っても良く分からないけど――もし仮にそんな慈悲深き御仁がいるなら誰もが思ったはずだ…、
「コイツ、西尾維新か或いは入間人間のフォロワーだな」と。
でも、もし。
そう思っていないならば僕の筆が余程巧妙に真実を羅列の中に隠したか、若しくは紡ぎ出された文章が拙文過ぎて伝わらなかっただけだ。
僕としては前者であればマジで望ましい。でも後者であれば恥ずかしくて死にたくなる。
まあ僕故人の羞恥的なアレコレは脇において、今回議題に上げた彼の描く作品の特徴と言えば大きく二つあると思う。
まずは奇抜で奇妙で突飛でありながらも、どうにも人間臭くて魅力的なキャラクター。
開口一番『奇抜で奇妙』と形容をしたものの、それらの人物達は別に会話も出来ない偏差値ゼロのモンスターでは無いし、その多くは理性の壊れてしまった気狂いでも無い。ただ、良識的で常識的な理性があるとも言わないけどね…。
それはそれとして、彼の生み出すキャラクターは大抵独自の正義を持って、個人の持つ可変的で絶対的な理屈で生きている。
尤も、それを遵守し過ぎた結果として話は通じないことも多いが、自身だけの道を歩く姿は常識や倫理はどうあれ素敵で心惹かれるものである。
なんともなく次に挙げたい魅力は韻を踏んだ独特の表現。
圧倒的な語彙から紡ぎ出される軽快な文章、リフレインを感じさせる言い回しは僕を初めてとして数多くの高校生の黒歴史作りに寄与したことだろうと思う。
作文とか小論文とか書くときは西尾風の文章を模倣した痛い男の子は僕だけでは無いはずだ。
そんな彼との出会いは高三の時だったと思う。大学受験を終えて、残り少ない高校生活をモンスターハンターP2Gで消費してた頃だ。
今は懐かしいPSPは兎も角、すっかり読書が生活の一部として定着していた僕は近所の本屋を彷徨っていた。何か面白そうなの無いかなと物色していたんだ。
すると十冊くらいの――恐らくはシリーズものと推測される文庫本が平積みてプッシュされていた。銀色を基調とした装丁に描かれた凄まじいセンスのイラストが目を引いた。
それが「クビシメロマンチスト」。
後に知った事実によると戯言シリーズの二作目だ。
何故続きものの二作目を手に取ったのかと言えば完全に偶然であるし、僕がショートカットの女性が好みであることとは一切関係無い。
表面的な理由はどうであれ、何だか妙に気を惹かれたのでそのままレジに持って行った。モンハンに飽きた時にでも読んでやろうと思ったからだ。
そこから暫くは本棚に積んでいたと思う。その時分の僕はガノトトスやリオレウスを追いかけるのに忙しかったのだ。
しかし、独りで延々と素材を集めるのに飽きた時――紅玉とかを集めるのに辟易した頃、何となく僕はその本を手に取りページを捲った。語りからどうやら『いーちゃん』とかいう捻くれた青年が主人公らしい…。
この先はもう例の如くで今更言葉を尽くす必要は無い。
前例の『さくらももこ』や『伊坂幸太郎』の時と一緒だ。一気に読んで、残りを買いに行く日々の始まりだ。
シリーズものということと、本シリーズがミステリーの体裁をとっているので直接的なストーリーには触れづらい。描写する上で、或いは描写する腕でネタバレを避けるのが大変難しい。
なので本当に軽く、ふわふわとした導入の様なあらすじを少し。
先に触れた主人公が本作の語り部たる男子大学生である『ぼく』。
他にも『いーちゃん』とか『いっくん』とか呼ばれるから多分、名字か名前の何処かに『い』が入るとされる剣呑な大学生。ちなみに個人的に僕は『いーちゃん』と読んでいるし、呼んでいる。
そして彼は何か海外の凄い英才教育機関の出身の超絶エリートではあるが、滞在中のとある事件を切っ掛けに逃亡するように帰国。
そして幼馴染である青い髪を持つ少女『玖渚』と共に絶海の孤島に旅立った…これがシリーズ全体を通しての導入。
そして『いーちゃん』は色々な所に出掛けて、色々な事件に巻き込まれて解決したりしながら果てしない世界の命運と立ち向かうことになる…これが物語全体に共通し踏襲するストーリーライン。
マジで大雑把な説明で未見の方には意味不明だと思う。
けれど、既読の方にはまあまあ伝わると思うので、少しでも気になったら読んでみて欲しい。そうしたら僕のクソみたいなあらすじも理解して貰えると思うから。
兎にも角にも、形式的なあらすじは自分勝手に語ったので次はキャラについて述べたいと思う。
とても自分本位の解釈で語るので、既読の方で何かご意見があればコメントください。恥ずかしさを携えて読み直して来ます!
さて、僕的にこの作品には好きなキャラクターは大勢いる。
闇口崩子ちゃんはマジで可愛いし、兎吊木垓輔は中二全開でマジで憧れた。
しかし、僕が愛してやまないキャラランキング第一位は主人公たる『いーちゃん』である。もう本当最高だよ彼。右も左も分からなくなる。
そんな僕の偏った寵愛を一身に受ける『ぼく』こと『いーちゃん』のパーソナリティが溜まらなく魅力的なんだよね。基本的に根暗なんだけどおしゃべりな彼は相当面倒臭い。
頭が良く運動能力もそれなりに高い上に女装が抜群に似合う小柄な彼はマジで難儀な人間性をしている。優等な能力を余裕で覆い隠して余りある程に醜い劣等や照らし難い絶望が一挙手一投足どころか会話や言動の節々に現れている。
そして、そんな彼が作中で評されていたのは『人嫌いなのに人の中にいたい』らしい。言葉尻だけを捉えるなら、なんとまあ矛盾に満ちていて甘えんなカスと言った感想すら持つと思うこと請け合いである。
少し話は逸れるけど、基本的に小説の媒体に限らずあらゆるフィクショナルな人物というのは大体属性を決められていてそれにそってロールしていく傾向にあると思う。それは程度の差はあれ、大体そうだと思う。
ツンデレの幼馴染がアラアラと大人びた表情で苦笑いはしないし、昼行灯な爺は間違いなく歴戦の猛者だ。
しかし、『いーちゃん』は違う。
主人公なのに平気で発言を違えるし、真実を隠して普通に嘘をつく。先の表現に表されるように矛盾に満ちた行動を取って、挙句うじうじうだうだしながらイカれた判断をする。
それが僕にはまるで本当に実在する人間の様に思えたし、自分と重なる奴の様に錯覚した。
そんな自分を重ねた主人公が年下に惚れられたりしながら奇天烈な人物と関わる物語はこれから大学生となる僕にとって未知なる期待を体現したものの様に思えたし、何よりも彼の行末が気になって仕方がなかった。
後に『化物語』や『刀物語』も読んだけれど、それらも本当に良作であると思うけれど――『戯言』を読んだ時程の衝撃は受けなかった。
それは僕にとって『西尾維新』との初邂逅がそれであったからかも知れないし、或いは西尾維新にとっての『はじめて』が戯言であった故かも知れない。
けれど、きっとその理由なんてものは僕にとって些細なことだ。
僕が出会った物語の結末にとってみれば余りにも些事である。
なんてそれっぽいことを述べた辺りで今回は筆を置こうと思う。
次回のテーマは色々考えたけど、少し趣向を変えて『音楽編』と行こうと思う。
中学二年生は大体音楽的趣味に変更が生じる時期で、例に漏れずに僕もそうだ。
次回『BUMP OF CHICKEN』!
またお会いしましょう!
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