第126話 恋愛感情

 医者という稼業は、いろんな患者さんやその家族に出会います。たくさんの人たちに出会えば当然、時には恋愛感情まがいの感情が生まれてきます。


 元来私はそういうことにうとい人間で、病院仲間では、「あの人ホモじゃないの」と、まことしやかにささやかれたほどの人間なのです。


 ホモではありません。心身ともにれっきとした男児でして、今は子供も2人います。 (←(^ω^)産んだのは女房ですが←当たり前)


 えせクリスチャンなのに、キリスト教の教義にはやたらと忠誠心が強く、男女関係にはめっぽう規律正しくあったのでございます。決してホモゆえではありません。


 長い医者人生で、そういう場面に出くわしたことは悔しいけどほとんどないのです。が、わずかばかりの思い出を、書いてみたいと思います。


その1-往診


 私の駆け出しの頃、病院の外来に電話がかかってきました。


「先生、往診してください……」


 私の外来の患者からでした。三十代後半の女性だったと記憶しています。


「どうしたのですか?」


「……」


 どうもはっきりしません。


「具合が悪いなら病院に来てくださいよ」


 しばらく間を置いて、


「いいじゃないの、ちょっとうちに来てくださいよ~。ここで話すわ~」


 妙に甘い声で誘うのです。


 ウブな私などは鳥肌が立ちました。


(確かあの患者は厚化粧の人だったなあ)


 そう思いながら、


「ダ、ダメです。行けません。具合が悪いなら病院に来てください」


 少々うわずった口調でそう言って、断りました。


 その後外来に来たかどうかは覚えていませんから、おそらくそのまま立ち消えになったかと思います。


 展開が面白くなくてすいません。(←(^ω^)ほんと。 もっといかなくちゃあ、この手の話はつまんないねえ)


その2-もうたまらない


 この女性も30代後半かと思います。(←(^ω^)君は30代にモテるね)


 慢性B型肝炎の治療のために入院していました。


 その当時はまだ今のように、B型肝炎ウイルスに効く抗ウイルス剤はありませんでした。


 ステロイドリバウンド療法と称して、ステロイド剤を使ってB型肝炎ウイルス抗体を作る治療を行っていました。


 治療は順調に進んでいましたが、なにせ慢性肝炎の治療は時間がかかります。


 だいぶ経った頃に、私が大部屋の病室に入ると、周りの女性患者たちが何か変わった雰囲気を醸し出すのです。ヒソヒソと話したり、ウフフと笑ったりしているのです。


 鈍感な私でも気付きました。


 当の本人は、何か艶(なまめ)かしい目つきで私を見つめるのです。


 それを感じながらも、素知らぬ顔をして診察をしていました。おそらく、大部屋の女性たちはその手の話をしていたのでしょう。


 それからしばらくして、幸運にも治療が奏功しました。セロコンバージョンを起こして肝炎ウィルスの抗体ができ、晴れて退院となったのです。


 退院の時に手紙をくれました。礼状だろうと思って読みましたら、なんと「恋文」だったのです。


「いつも回診のたびに、胸がときめいておりました。もうたまらないので、いつか食事をいっしょにしてくださいませんか」


 そんな内容でした。


 退院後、私の外来に来ました。


 そばにはナースが付いていますから、内容は分からないように、


「そういうことはしませんので、ごめんなさいね」


 断りました。(←(^ω^)冷たいぞお~)


 彼女はその後も、私の外来に通ってくれました。


その3-同僚ナース


 いっしょに働いていたナースに声をかけられたこともあります。


 この業界では医者がナースに手を出すことはよくあることで、それは第19話 裸を見る に書きました。(←(^ω^)興味のある方は、そちらを読んでね)


 それとは反対のことなのです。


 これがまたすごく妙なことですが、病棟の看護師長さんが応援しているのです。


「誰を?」


「そのナースさんAをです」


 もともとこのナースとは気があって、仲は良かったのです。(←(^ω^)両人とも既婚者だよ)


 ある時、師長さんが真剣な眼差しで、


「先生、話があります」


 ナースがたくさんいるステイションで、師長さんが緊張気味な面持ちで言いました。


「はい何でしょう?」


「Aさんと食事をいっしょにしてあげてください。お願いします」


 深々と頭を下げるのです。その後ろには、Aさんがいっしょにこちらを見ているのです。


 どう私が答えるか、興味津々、ナースみんながこちらを見ています。←(^ω^)このシチュエーション、想像つく!?)


(ワァ!師長はこんなところで何を言うんだよ!)


 度肝を抜かれました。


「そういうことはしない主義なので、お断りします。ごめんなさい」


 これまたみんなの前で断りました。(←(^ω^)Aさんがかわいそうだよねえ)


 その後もAさんとは、何もなかったように、仲良く仕事をしたのです。



 以上、これくらいかな。まだあるけど、書けるほどの内容はないですね。(←(^ω^)モテない医者だこと)


 私に声をかけてくれた皆々様、この場を借りて、男として感謝申し上げます。皆無では、ちと寂しいかぎりですもんね。


 また冷淡だと思われたのなら、お許しくださいませ。ぐっと、我慢していた私めの心境をお察しくださいませませ。


〈つづく〉


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