第108話 癖(くせ) その2 溺れる者はワラをもつかむ
ある時、本屋で立ち読みしていました。その中にあった、「自律訓練法」の解説書が目にとまったのです。
その本には、プロのスポーツ選手が、自律訓練法によってスランプを脱したという触れ込みで、その経緯が書いてありました。
私はダメもとでその本を購入し、読んでみたのです。25年間努力してもダメなものが治せるわけがないと、半信半疑どころか全く信じてはいませんでした。
しかし「溺れる者はワラをもつかむ」の心境で、毎晩、眠る前にそれを試みたのです。(←(^ω^)人前で話すことの多い人には、顔の癖って死活問題ですよね)
1日目には、変化のきざしは全くありません。やっぱりダメかな……と思いながら続けていると、不思議なことに、1週間ぐらいして何か効き目が出てきたような気がしました。何となく癖の執着心(癖に気を取られること)がうすらいだような感じがしたのです。
それでもまだ半信半疑です。
それから1カ月ほどたちました。すると、これをしないとどうにもならないという、癖特有の執着心は、はっきりと減ってきているのです。癖が癖でなくなっていることが分かるようになったのです。
こうなると、身を入れてやる、やるから良くなるといった好循環が起きて、全治するのにそれほどかかりませんでした。2カ月もすると、癖なしで平気でいられるようになったのです。
いったん癖がおさまってしまうと、これまた不思議なもので、それ以後は忘れたようにぴたりと出なくなりました。
うそのようです。奇跡のようです。25年間悩みぬいたその癖から、私はついに解放されたのです。(←(^ω^)おおげさだけど、この気持ち、癖に悩んだ人しか分かりませんよ)
今思うと、癖は一種の依存症でしょう。それなくして生きられないですからね。とすれば、癖もやはり立派な病気といっていいでしょう。(←(^ω^)そうだそうだ)
この体験があってから、私は「自律訓練法」を見直しました。これは決してまがいものではなく、きちんと実行すれば、心理的な病気には大きな効果があるものと確信したのです。
以後、心身症的な患者さんに出会うと、自律訓練法を勧めています。
癖以外にも効果があることは、間違いないでしょう。しかし、その効果を判定するとなると、簡単にはいきません。
私の癖のようなものなら外形に表れるので、一目見れば、ああ治ったと分かります。顔の真中に鼻はありますから(←(^ω^)当たり前)、誰が見ても一目瞭然で判定できるのです。
「自律訓練法」の効果を知ってから、欲張って、私も色々なことに利用してみたのです。行動力アップとか、活力アップとかにこれを試してみました。
しかし、飽き性の私は、ちょっとやってはやめてしまっていたので、ここに書けるほどの効果は分かりませんでした。
そりゃそうです。行動力や元気などは、ちょっとやったぐらいでは、ビフォアアフターの差は分かりませんよね。こういうたぐいで、見た目に分かるほどになるには、よほど続けないとダメなんでしょう。
精神面ですごく悩んでいる人は、半年から1年かけるつもりで、じっくり「自律訓練法」をやってみてはどうでしょう。飽き性の私はダメでしたがね。(←(^ω^)トホホ)
次話には、わたし流の「自律訓練法」のやり方を書いてみます。参考にしてくださいね。
〈つづく〉
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