第50話 患者もいろいろ-むくんだ頭 今度は治せた
妙なタイトルですが、ここでいう頭とは、首の上にあるオツムのことではなく、前話 むくんだ頭 で書いた、男性のシンボルたるペニスの亀頭部のことです。つまり、頭のむくみとは嵌頓包茎のことをいうんです。
嵌頓した包茎は、整復するのはなかなか難しいものです。長いこと医者やってても、悪戦苦闘むなしく、うまくいかなかったことがたびたびあるのです。
ところがですねえ、えっへん。この度、長い医者人生の中で初めて嵌頓包茎を整復できたので、嬉しさのあまりここに報告する次第でございます。(←(^ω^)大袈裟だね)
話は外れますが、ペニスの先端を亀頭部(きとうぶ、英: Glans penis)と呼びます。まさに、亀の頭のような格好ですよね。先人はよくもまあそう命名したものです(←(^ω^)座布団2枚!)
嵌頓包茎は見たことありますかね。医療者でなければ、そうそうは、ないでしょうね。
前話で書いた精神科病棟嵌頓包茎事件以来、トラウマとなっていたためか、これにお目にかかった時は、私はのっけから戦意喪失していて、治せるものも治せませんでした。
包茎専門医の異名をとる私は、数々の包茎手術こそこなしてきましたが、嵌頓包茎を用手的つまりこの両手で整復できたことは、一度もありませんでした。何百例の包茎手術をした包茎専門医も、これではかたなしです。
夕方、遅番をやっていると病棟から呼ばれました。
「先生、患者さんのペニスが腫れています」
全身にむくみがくると、いっしょに陰嚢やペニスもむくむことがあります。
「どうせそんなもんだろう」
たかをくくって病棟へ行くと、
忘れもしないあの嵌頓包茎です。男性患者でした。 (←(^ω^)当たり前)
「ひゃあ~、自信ない~」
のっけから弱気です。
両手に手袋をはめて、キシロカインゼリーというぬるぬるしたゼリーを亀頭部に塗ります。まんべんなく塗り終えたら、浮き輪のようにむくんだ包皮を越えるように、指で先端部分を押し入れるのです。
簡単そうに見えて、これがなかなか難しいのです。
滑りやすくした分だけ、亀の頭も指先から逃げ回ります。
やっと入ったように見えても、またにょきっと頭を出します。(←(^ω^)本当に亀みたいだよ)
実はむくんだ包皮部分は、ペニス本体に食い込んでいて、亀頭部は首吊り状態になっているのです。なので入ったように見えても、狭搾部分を越えてはいないのです。
ナース2人が両脇から患者を抑えます。敏感な部分なので、いじると痛いので暴れまわります。
3人がかりの大奮闘……。
20分ほど挑みましたが、やはり整復できませんでした。
悔し紛れに、
「まあ、自然に引いていくでしょう。 ガーゼで覆っておいてください」
何とも後味悪く、すごすごと医局に戻りました。
「悔しいなあ……」
亀の頭がちらついて、仕事が手につきません。
すると医局に外科の本が置いてありました(←(^ω^)これ、自分の本だけどね)。図説 外来の外科 医学書院刊。
さっそく調べてみると、図解入りで、ちゃんと書いてあったのです。
「なになに、ペニス本体をしっかり握りしめて、だって……」
なるほど、これがうまくいかなかった原因なのです。
亀頭部を越えさせようと、私は、やみくもに腫れた包皮を手前に引っ張っていました。
ところが本には、ペニス本体をしっかり握って、亀頭部を押し込むと書いてあります。「押してダメなら引いてみな」ってところです。
「もう一度やってみよう」
「ダ-!」(←(^ω^)アントニオ猪木さんの叫び)
一念発起して病棟に上がりました。
「本に書いたったから、もう一度やってみるよ」
2人のナースがまた協力してくれました。
亀頭部にゼリーを塗布して、ペニスの本体を左手でしっかりと把持すると、右の指で亀頭部先端を押し入れました。
すると少し抵抗はあったものの、いとも簡単にスルッと滑るように越えて行ったのです。
この感触は、というと、ラムネって炭酸飲料水がありますね。飲む時、ガラス玉を下に押し込みますが、ストンとガラス玉が落ち込む時のあの感触ですかね。(←(^ω^) もっと分かりやすいの、ないかね)
「おお、整復できたぞ~」
「わー、すごい」
拍手喝采でした。
なんせ長い医者人生で、初の成功例なんで喜びもひとしおです。
「おじいちゃん、ここ、あまりいじらないでね」
そういい残して、今度は意気揚々と病棟を後にしたのでした。
この程度のことでもうまくいくと、気持ちの良いものです。エベレストに登頂したみたいです。(←(^ω^)登山なんかしたことないくせして、よくいうよ)
万が一、何かのひょうしに(?)こうなってしまった場合、軽いのは放っておけば自然に腫れは消退します。包茎自体も直ってしまうでしょう。
腫れや痛みがひどい場合は病院に電話を入れて、「嵌頓包茎を直せますか」と聞いてから、受診した方が無難でしょう。(←(^ω^)ちょっと恥ずかしいけどね)
こんな不格好なもの見せてから、
「うちじゃ治せん」
といわれるのも嫌だもんね。
受診する科は泌尿器科がいいでしょう。(←(^ω^)包茎専門医がいるなら外科でもいいかな)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。