カティの見た景色

 こいつ――!


 カティはひらひらと逃げ回る敵機、預言者フォアサイトの機動に苛立ちを覚えていた。機体搭載コンピュータによる予測が全て裏切られ、ロックオンどころか正面に捉えることすらままならない。隙だらけに見えるのに、付け入る余地がない。


『メラルティン、そいつは特殊だ。セオリー通りじゃどうにもならない』


 二番機についてくれたベテランが教えてくれる。


『そいつは直感で動く。だからお前も直感で対抗しろ』

「直感……!?」


 なんだそれ。どういうことだ!?


 冷や汗か、脂汗か。


 出会ったことのないタイプの敵。そして、明らかに強い。二手も三手も先を読まれている。預言者フォアサイトの名は伊達ではない、ということか。


 その時、シベリウスが機体を捨てた。システムを破壊されての止むを得ない選択。だが、それはカティにとっては衝撃だった。圧倒的で絶対的な庇護者が、突然いなくなってしまったのだから。


 どうすればいい!? どうすれば……!


『メラルティン、他の事を考えるな! 目の前のそいつに集中しろ! 集中が切れたら殺されるぞ!』

「うわぁっ!?」


 その忠告の矢先、預言者フォアサイトの機体からミサイルが後ろ向きに飛んできた。一体どういう教育を受けてきたのかと問い詰めたくなるような一撃である。しかもその誘導は、恐らく手動だ。動きがいやらしいことこの上ない。


 カティはそれでも冷静にミサイルの機動を読み切り、機関砲で叩き落とした。爆散の破片は機体の前面のショックアブソーバを展開してやり過ごす。機体に傷はついただろうが、このくらいは大目に見てもらおう。


「どこだ……!?」


 爆発に突っ込んだ際に、預言者フォアサイトの機体を一瞬見失った。


『メラルティン、上!』

「!?」


 背面飛行のまま突っ込んでくる預言者フォアサイトFA221カルデア。ダダダダダ……という轟音と共に、連続的な烈震が機体を襲う。


 ダメージは……軽微! まだまだいける。


 カティはそのまま機体を上昇させ、預言者フォアサイト機とすれ違う。互いのキャノピーが触れ合いそうなほど近くで、二機はすれ違った。発生した衝撃波が、互いの機体のバランスを激しく打ち崩す。


「くっ……そっ!」


 カティは機体制動モジュールを書き換えて、バランスの再調整を瞬時に完了させる。そこに対空ミサイルアラートが鳴り響く。コックピット内がけたたましい音に支配される。


『メラルティン、敵の新型二機が合流した。逃げろ!』

『ここは俺たちが時間を稼ぐ。距離を取れ!』


 二番機と三番機を務めてくれていたローズマリー隊の隊員たちが、口々にそう言った。だがその直後、三番機が爆発四散した。


「くっ!」


 カティは後ろを振り返り、そして絶望する。預言者フォアサイトの機体を先頭に、その両サイドに白い新型機がついていた。そして、その瞬間に、二番機も撃墜される。


 一対三! よりによって……こんな……!


 カティは弱気になる心を叱咤する。


「アタシはこんなところでは死なない。死ねない」


 祈るように呟いたカティは高度を上げ、雲の中に突っ込んだ。


 その時、見た。


 雲を貫いた時。晴れ渡る空の彼方に。


 巨大な航空機――ISMTの姿を。


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