動く道

「今度は道に乗るぞ」

おじさんが言った。

「道に乗る?」

「少し先の通路が交差しているあそこが見えるか」

 おじさんが指差す先では確かに通路が交差している。驚いたことに、道は確かに動いていた。それもかなりの速さで。

「途中で乗り換えるからな。遅れるな」

 おじさんは動く道に沿ってしばらく歩くと、ひょいと飛び乗った。

 おじさんに手招きされた少年は慌てておじさんの真似をして道に乗る。

 思った以上の早さだった。よろけて倒れそうになったのは最初だけだ。すぐに慣れた。前を行くおじさんに追いつこうと、動く道の上を歩いてみた。普通に歩いているつもりなのに全力で走っている時よりも遥かに早い。

「少し早くなるぞ」

 グンと早くなった。止まっていても走るのより早い。今まで味わったことのない爽快な感じだった。

 時折ゆるやかなカーブを描きながら道は動き続けていく。

 気がつくと別の動く道が斜めに近づいてきていた。並んで動き続けるその道におじさんが乗り換える。少年も続いた。

 壁と天井は明るさを増していた。いつの間にか天井と壁の境い目がなくなっている。丸い筒のような明るい通路の中で、道の動く速度がさらに増した。

 少しずつ上に向かっているようだった。

「もうすぐ終わる。その先は警備がいるからな。気をつけろ」

「警備?」

「機械だ。機械が通路を巡回して、宮殿に侵入する者を見つけ出す」

「宮殿に?」

「そうだ」

 動く道の速度が急激に落ちていく。やがて歩くほどの速度になり、それから間もなく完全に止まった。

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