after第15話 強すぎるゴンザレス太郎

扉が開くとそこに一人の女性が座っていた。

その周りにはニーガタの町に居た住人が真っ白の顔をして寝そべっている。


「ほぅ、あの状況を抜けてここまで辿り着ける者が居るとは思わなかったよ」


その女性は口を開く、まるで口からではなく脳内に直接語り掛けている様に感じたその言葉にゴンザレス太郎は理解した。


「ゴーレムか、しかも遠隔操作とかではなく自分で意思を持って動いているな」

「ご名答、一目見ただけで良く分かったもんだ。」


ゴンザレス太郎はコード『建物素通り』を解除してフーカの『スキミング』を自分に付けてその女性を見ていた。

その為ゴンザレス太郎の目にはその人物が人間ではなくゴーレムであることも、そのステータスも全て見えていた。


「なるほど、呪いか・・・」

「くくく、そうかユニークスキル『スキミング』持ちか貴様」


ゴンザレス太郎は答えない、相手に無駄に情報を与える必要など無いのだ。


「答えぬか、ならばお前たちの体に聞くとしよう。我が眷族達よ立ち上がりヤツを殺せ!」


そいつは片手を上げて指示を出すと周囲で倒れていたニーガタの住人達が立ち上がり一斉にゴンザレス太郎へ向かって襲い掛かってくる!

しかし、ゴンザレス太郎は動かない。


「いい事を教えてやろう、そいつらの攻撃を1撃でも喰らえばたちまち呪いはお前の体を蝕み仲間入りだ」

「そうか、なら問題ないな」

「なに?」


次々と襲い掛かるニーガタの住人達。

しかし、ゴンザレス太郎は何事も無いかのように真っ直ぐそいつの方へ向かって歩く・・・

ニーガタの男性が武器を振り被りゴンザレス太郎目掛けて・・・地面に当たる。

別の女性が飛びつこうと両手を広げて・・・手前に着地する。

呪われて本能で受けた指示の通りに行動するニーガタの住人達であったが武器の攻撃も素手の攻撃もゴンザレス太郎にはかすりすらせず当たらない・・・


「な、なんだこれは?!」


敵もその異様な光景に驚く。

フーカは知っていた。

ゴンザレス太郎が発動している新コード『攻撃当たらない』ともう一つの存在を・・・


「くそっふざけるな!」


近くまで行って気付いたが肌が茶色の人型ゴーレムだったそれはゴンザレス太郎に殴りかかる。

しかし、攻撃はゴンザレス太郎の直ぐ横を何故か通過しその体をゴンザレス太郎は掴む。

そして、そのゴーレムの体の左右で同時に指を鳴らす!


ぱちーん!


ステータスがカウンターストップしているゴンザレス太郎でもそれ自体には何も攻撃力はない。

ただ、音が大きく同時に発生するだけであった。

この音自体に攻撃力は発生しないので攻撃としては認識されなかった。

そのため・・・


「な、なんだこれは・・・か、体が・・・崩れ・・・」


突然ゴーレムの体はボロボロと崩れるように壊れ始め砂に帰っていく・・・

ゴンザレス太郎は完全にゴーレムが消滅するまでそれを『スキミング』でしっかりと確認し再び動き出さないのを確認してフーカ達に親指を立ててサムズアップを行った。

それと同時に呪いを受けてゾンビのように次々と攻撃を仕掛けていたニーガタの住人達は操られていた糸が切れたようにその場に倒れこんだ。


「まぁ、こんなもんか」


ゴンザレス太郎は正直この勝負もつまらない形で終わると予想していてその通りだった事に落胆していた。

彼の中では遥か昔となっている命を賭けたギリギリの戦いの数々はここまで強くなってしまってはもう体験する事は出来ないだろうと考えているのだ。


「やったねタツヤ」

「おう、余裕だったぜ」


フーカが駆け寄り笑顔を見せるゴンザレス太郎はスキルを操作する。

ゴンザレス太郎は発動していたもう一つのコード『音量アップ』を解除するのであった。

茶色のゴーレムを倒した彼の使った技は俗に言われる『超振動』と呼ばれるモノである。

これは二つ以上の全く同一の周波数を持つ音素を同時に聞かせ干渉させあう事で起きる現象で、ありとあらゆる物質を音によって発生した原子レベルの振動で分解する技であった。


「一度試してみたかったけど無事に成功してよかったよ」

「うん、タツヤはやっぱり凄い!」


フーカの喜ぶ顔をもう暫く見ていたい気持ちもあるがゴーレムを倒した事で呪いが解除され、ニーガタの町の住人は次々と意識を取り戻す。

だが呪いにより止まっていた怪我が開き体は無理に動かされていたので全員体の異常に気付きまともに立てる人は誰もいなかった。


「やっぱり使うしかないか」


ゴンザレス太郎はあの少女に似た女性の姿を見てそう呟いた。

その女性アーニャである。両腕の骨が粉々に砕け呪いにより止まっていた痛みにより誰よりも先に覚醒したのだが自身に襲い掛かる激痛に苦しみだしたのだ。

ゴンザレス太郎は懐から瓶を取り出す。

そう、それはいつものラストエリクサーであった。

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