第100話 チートですがなにか?

絶望、それは望みが絶たれると書く。

ジルとメールは穴から這い出てくる鬼神の姿に言葉も出なかった。

動かないと既にまともに戦えるのは自分達しかいない、だがどうやって?

魔王すらも軽くあしらわれた鬼神の威圧に身動きが取れない。




懇願、それは真心を込めて願うこと。

フーカは徐々に冷たくなっていくサラを抱き締めながら祈りを捧げる。

もう自分の両腕も火傷が酷く結界が後何枚張れるか分からない、だがその目には諦めの色はまるでなかった。

最後のその瞬間まで恐れない!

フーカは両手の痛みも無視して鬼神を睨む!




決意、それは決める意思。

マコトとニセバスチャンはボロボロの体で鬼神に己の武器を向ける!

折れない心は魔物襲撃の時にゴンザレス太郎から教わったマコト。

守るための力は壊す力よりも強い、それを理解したニセバスチャン。

二人は死を覚悟して吠える!

言葉になら無い魂の叫びは鬼神に届き視線を向けさせる。

そして、無慈悲に叩き込まれる拳によって二人は傷の一つも付けられなかった絶望に包まれながらその命を散らす。




奇跡など起きない。

そう、奇跡など信用しては駄目だ。

あるのは必然、願うのではなく実行すること。

全てはゴンザレス太郎の計算通りであった!


「皆、待たせたなぁ!」


フーカ達とマコトの居た場所の丁度中間にゴンザレス太郎は居た。

そして、その手に在ったのは蓋の開いた瓶!

それは町を出る前にゴンザレス太郎がサリアと共に河川敷で新しく産み出したラストエリクサーであった。

ゴンザレス太郎の『埋めたアイテムランダム変化』とサリアの『セーブラック』を使用して穴を掘ってゴミを埋めて掘り起こし違うものが出たら直ぐに埋め直すを繰り返しやっと出た1本だけのその効果はご存知『効果範囲内の全ての者の全回復&死者すらも死んでから10分以内なら生き返る』である!


その効果により吹き飛ばされたマコトとニセバスチャン、そしてサラが生き返る!

ゴンザレス太郎は待っていたのだ。

光の柱に焼かれて死んだ鬼達が死んでから10分以上が経過するのを!

フーカも怪我が全快し目を開けたサラに泣きながら抱き付く!


だが、ラストエリクサーの効果は鬼神にも影響しメテオアイスインパクトのダメージを回復させる。

しかもラストエリクサーの効果で身体能力が一定時間数倍になるというおまけ付きでだ。

魔王すらも歯が立たなかった鬼神が全回復しパワーアップした。

壊滅的状況は回避できたが危機的状況になにも変化は無かった。

しかし、それを上から見ていたジルとメールは次の瞬間一体何が起こったのか理解できなかった。

何故ならばメテオアイスインパクトのダメージが抜けて回復した鬼神が動き出そうとした次の瞬間鬼神の頭部はそこに無かったからだ。


ゆっくりと後ろに倒れる鬼神を唖然と見つめる一同。

その頭部の無い倒れた鬼神の胸の上に「いやぁ~いい仕事したなぁ~」って感じのゴンザレス太郎が立っていたのだった。


「はっははっはははははどうなってんだー!!!!???!」


全く理解の及ばないニセバスチャンは狂ったように叫び声を挙げる!

しかし、残りの一同は…


(やっぱりゴンザレス太郎だな)


っと変に納得する。

何が起こったのかは簡単だ。

ゴンザレス太郎がジャンプして鬼神の頭部をぶん殴ったら頭部は原型を止めず粉砕し鬼神の命を奪ったのだ。



実はゴンザレス太郎『経験値255倍』を発動しており合図の花火を上げ空から天の裁きが降ってきて鬼達を全滅させたあの時、目まぐるしく上がるレベルをリアルタイムにステータスに振りまくっていたのだ。

この世界のレベルは上限999だがレベルの上昇は一気に上がった場合瞬間的にそのレベルに成るのではなくリアルタイムにメーターが増えるように上がり続ける。

その為ゴンザレス太郎はあのままの姿勢でずっとレベルをステータスに振り続けていたのである。

天の裁きの破壊力と鬼神の登場で誰一人自分のレベルを確認していなかったが全員999で止まっている。

それはもし気付いても気にしないであろう。

鬼を一匹倒すだけでも数レベル、鬼神や龍鬼、ましてや鬼龍ドラゴンなんか倒せば一匹で100近くレベルが上昇するのだ。

そしてその敵約200万匹を一瞬で倒して入る経験値は更にその255倍。

単純に考えて100億以上のレベルが最低でも上昇する計算となりそれを全てステータスに振ったゴンザレス太郎は次元がどうのこうのというレベルを遥かに超えた強さを手に入れ事実上の断トツの史上最強の座に辿り付いたのである。


後は時間を計算し鬼達が死んでから10分以上が経過した段階で、最初配置に着いた場所に置いておいたラストエリクサーを持ってフーカ達に届く場所で蓋を開ける。

自分の身体能力は更に数倍になり鬼神との差は更に開く。

10の2倍と20の2倍の差は同じではないと言うことである。


呆れつつゴンザレス太郎の元に近寄ったマコトとニセバスチャンにゴンザレス太郎は突然困った顔をして言う。


「しまったー!!!!鬼神の素材の角…粉々になっちゃった…」


遠くの空をゆっくりと飛んでくる魔王の姿を眺めながらニセバスチャンは本当に言ったことを実現したゴンザレス太郎に膝を着いて頭を下げ感謝の言葉を送るのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る