第89話 俺達の戦いはこれからだ!

子供であるゴンザレス太郎に全てを委ねるのはどうかと言う意見もあるが他に案があるわけでもない。

もしもの時のためのギルドを経由して魔海の向こうからの鬼の大進行があるかもしれないと前回結成前に解散となった『勇者の集い』を再結成しそこに生き残った魔物達も参戦すると言う形で決着がついた。


「それでは馬車はこちらで用意させてもらう、頼んだぞゴンザレス太郎」

「はいっ!」


ギルドの方から馬車を用意して貰い翌日の早朝に出発することが決まった。

もしかしたら戻れないかもしれない、その為各々家族に伝えて挨拶をするようにとのギルドマスターからの心遣いでもあった。

魔海まで馬車で3日掛かる、サラは最初文句を言っていたが「馬車の道中で3日間ゴンザレス太郎と一緒に居られますぞ」っと影の中からニセバスチャンが語りかけて顔を真っ赤にして頷いた。

ただ問題は魔海を渡る方法が無いと言う事であったがそれについてもゴンザレス太郎に考えがあるとの事だったので了承された。

全く7歳の子供の言うことを真に受けすぎだとニセバスチャンは最初考えたが過去の実績からそれを信じて認めている一同の態度に黙った。

魔王から聞いてはいたが本当に目の前の少年がサラを魔物の町まで飛ばし幹部の魔物を一人で半数まで皆殺しにしたとは信じられなかったから仕方あるまい。


その日の夕方、ゴンザレス太郎とフーカはサラに誘われてシェルターまで来ていた。

人語を話す魔物に驚きつつも話してみたら何も人間と変わらず家族が居て日々を精一杯生きているのを理解したゴンザレス太郎は少しでも助けになるならと皆の目の前でスキルを発動させる。


「スキル『プロアクションマジリプレイ』発動!」


そして、神力を消費しないように手打ちでコードを入力し初めて自分からフーカに頼む。 


「フーカ、膝枕お願いしていい?」

「えっ?…う、うん」


魔物達が見守る中、突然桃色空間を出現させるゴンザレス太郎とフーカ。

サラは膝枕と言うものを知らなかったので何をしているのか良くわかってなかったが自身が嫉妬しているのだけは理解していた。

だがゴンザレス太郎が自分達魔物の為に何かをしようとしていてこれが必要な事なのだと考え我慢した。 





「タツヤ、起きて…」


10分くらい寝たゴンザレス太郎をフーカは体を揺すって起こし起きたゴンザレス太郎に全員が注目する中…


「さぁ、皆でパーティーしましょう!」


突然のゴンザレス太郎の発言に混乱する魔物達であった。





「ど…どうなってるんだこりゃ?!」


魔物達は基本的に人間とは食べるものが違う、その為魔物達はシェルターの食料庫にあるとっておきの食材をゴンザレス太郎に言われてサラの了解と指示を得て調理しているのだが…


「お、俺頭がおかしくなったのかな?ここの肉を切って今炒めている筈なのに肉が残ってるし炒めてる方にも肉がある…」


ワニのような顔の魔物が調理をしながら混乱しつつ次々と料理を完成させていく。

影から出たニセバスチャンがそれを次々と皆の元へ運び少ない筈の貴重食材をふんだんに使った豪勢な料理が次々と完成して並んでいく。

子供の魔物はこんなご馳走を見たこともないのですごく喜んではしゃいでいるし大人の魔物も感謝の言葉をゴンザレス太郎に述べている。


「さて、どういう事なのか説明してもらえるんでしょうね?」


サラが最後の料理が完成する前にゴンザレス太郎に目の前で起こってる不思議な現象の説明を求めてきている。


「これが俺のユニークスキル『プロアクションマジリプレイ』の効果さ」

「…はぁ?!」


久し振りに常識はずれな現象をスキルの効果と説明して、意味が分からないと反応されたのに少し嬉しくなりつつゴンザレス太郎は続ける。

特に最近では何をやっても『あぁゴンザレス太郎じゃ仕方ないか』の一言で済まされてたので新鮮なのだ。


「今回使ったのは『料理で食材減らない』って効果でね、そのまま出すだけの食材は無くなっただろ?」


言われてサラが見渡せば確かに飲み物やそのまま使用する食材は無くなっており調理を必要とする食材だけ残っていた。


「あんたが無茶苦茶だと理解していたつもりだったけど私もまだまだ甘かったみたいね」


そう言ってご馳走を食べている子供の魔物に視線を向けて…


「でも、ありがとね」

「お礼を言うなら全部終わってからっな?」

「う…うん…」


そう言ってゴンザレス太郎は子供の魔物に料理を切り分けているフーカの元へ行く。

こうしてゴンザレス太郎とフーカのお陰で人間と魔物の関係がかなり解れ翌日から恐る恐るだが交流が始まる…


その日の夜、フーカと別れたゴンザレス太郎は自宅に帰り両親の前で頭を下げていた。

既にギルドマスターが直々に話には来ていたらしく、世界の命運を賭けた戦いにゴンザレス太郎を巻き込んでしまい申し訳ないと頭を下げていたらしく話は直ぐに通じた。


「お父さん、お母さん、もしかしたら帰ってこれないかもしれません。でも、世界を守るためにも僕は…」


そこでお母さんがそっと抱き締めてきた。

そして、父の口から今までゴンザレス太郎が行った実績を何かある度にマコトが話してくれていたことを知った。

その日の夜、ゴンザレス太郎は数年ぶりに両親に挟まれて川の字になって寝た。

両親は寝ずにゴンザレス太郎の寝顔をずっと見つめていたのを知らず翌朝ゴンザレス太郎は笑顔で両親に挨拶をして家を出る。


その目に迷いは無かった。

町の入り口の魔物襲撃の時に立ってた門番に「行ってこい英雄」っと言われ「行ってきます」と言い残しゴンザレス太郎はギルドの用意した馬車に向かって駆けていく。


「俺達の戦いはこれからだ!」







御愛読ありがとうございました。

また次回作に御期待下さい。











「何一人でブツブツ言ってるの?」

「いやぁ~こういう場面ってこういうの想像するよね?」

「寝坊した言い訳は以上で良いのね?」


目の前のサラが拳を握り締めて振りかぶり…

拳はゴンザレス太郎の顔面の横を通り抜け。


「便りにしてるんだからしっかりしてよね」


そう言い残し馬車に乗り込む。

それに続きゴンザレス太郎も乗り込むのであった。

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