スチール・ハート

作者 碧咲瑠璃

★★★ Excellent!!!

ケレン味溢れる近未来SFアクション

ページを開くとまず驚かされるのは圧倒的な情報量の多さ、そして文章の格好良さだ。ハッタリのきいた比喩やケレン味たっぷりの言い回しで、人物、景色、世界観、そして戦闘を描写する卓越した文章力は、とても一朝一夕の訓練で身につけられるものではない。「私もこんな文章を書いてみたい!」と不遜な羨望が思わず湧き上がるほど、この作者の筆力はネット小説という世界で群を抜いている。
そして、その優れた筆致のもと繰り広げられるのが、リアリティとスタイリッシュさに溢れた近未来サイボーグアクションだ。もっとも「サイボーグ」という使い古された表現は本作では限定的な文脈でしか出てこない。機械を埋め込んだ人間のことを、本作はその何倍も格好良い言葉で描写する。そのハイセンスな言葉選びには、SF好き、バトル物好きなら思わず唸らされる。詳細はぜひ本文をご参照頂きたい。
身体を機械化した人間が戦うという、ともすれば破天荒で非現実的な物語だが、それを無理なく「読ませる」秘訣は細部まで作り込まれたリアルな人物描写や世界設定だ。この世界において機械化人間はどんな扱いなのか。生身の人間の扱いはどうなのか。世界観の根底をなす部分の設定に一本筋が通っており、どの人物もブレることなく「この世界の常識」に基づいて行動するため(勿論この世界における非常識な行動はちゃんと非常識に見えるように描かれる)、本当にこんな世界が目の前にあるかのようなリアリティが読者の前に立ち上がってくる。
SFとは、創作とはこうあるべきだという秀逸な手本のような作品。読み専の人の楽しみにもさることながら、創作を志す全ての人の教科書にももってこいの一作だ。

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