第56話 出発

 準備が終わったと言う事でジェドとシアは冒険者ギルドへ向かう。サリーナが準備が終わったら報告に来て欲しいと言われていたからだ。


 冒険者ギルドに入り、サリーナに準備が終わった事を伝えるとサリーナは驚いていた。


 ジェドとシアが準備を終えるのに2~3日は掛かると考えていたのに、二人はその日の内にやってきたのだ。


「二人とも準備が終わるの早くない?」


 サリーナも少し当惑気味だ。焦って準備を行い命に関わるような事になってしまえばそれこそ本末転倒だからだ。


「ええ、大丈夫です。アレンから対悪魔用の道具一式をもらったので、準備の時間が随分とはかどったという訳です」

「はい、アレン達から悪魔に対する情報も仕入れてきてますのですぐにでも出発しようと思います」


 ジェドとシアはサリーナに伝える。


「そう、アインベルク卿から道具や情報をもらったというのなら大丈夫ね」

「「はい」」


 サリーナは少し心配そうであったがアレンの名前が出た事に一応の納得をしたようだ。ジェドとシアの信頼もあるだろうが、アインベルクの名前はやはり冒険者ギルドにおいても効果があるのだろう。


「それじゃあ、悪魔の討伐だけど悪魔の討伐証明として、これも左耳を持ち帰って欲しいのよ」

「左耳ですね」

「ええ、それから他に戦利品があった場合はあなた達が自由にして良いわよ。但し…」


 サリーナは戦利品の事を二人に伝えさらに言葉を続ける。


「悪魔の情報はすべてギルドへ伝えてちょうだい」

「情報ですか?」

「ええ、砦跡に現れた悪魔の目的などよ」

「わかりました」


 サリーナの言葉に二人は頷く。


「うん、よろしくね」


 サリーナの話は終わり、ジェドとシアはいよいよ『ゴールド』以上の冒険者専用の仕事に出発することになったのだ。


 報告も終わりギルドを出ようとしたところで、ジェドとシアに冒険者チームが声をかけてきた。


 人数は4人、全員男性で年齢は20代半ばから後半と言ったところだろう。全員がいかにも暴力の世界で生きていますという雰囲気を発している。気の弱い者ならばまず恐怖心がわき上がる事だろう。


「なんでしょうか?」


 ジェドはきわめて丁寧な口調で冒険者達に返す。


「ああ、お前らに良い話を持って来た」


 チームの中でもリーダーを思われる男が偉そうにジェドに言う。


「良い話?」


 正直、言い方にカチンと来ているのだが、それを押しとどめてジェドは返答する。


「ああ、お前らラティホージの砦跡の悪魔討伐に向かうんだろ?」

「はい」

「俺達が助太刀してやる」

「は?」

「だから、俺達がお前らの悪魔討伐について行ってやる」

「はぁ」


 いきなりの言葉にジェドもシアも気の抜けた返事しか出来ない。


「俺達は『ゴールド』クラスの冒険者チーム『血煙』だ。どうだ?」

「いえ、結構です」


 ジェドのはっきりとした拒絶に男達がいきり立つ。ジェドとシアのような少年少女にコケにされたという思いからだ。


「お前ら調子に乗るなよ。てめぇら…うっ…」


 いきり立った男の首筋にジェドの剣が当てられる。その様を見て『血煙』のメンバー達は驚愕の表情を浮かべてる。ジェドがいつ剣を抜き、男の首に剣を当てたのかまったく気付かなかったのだ。


 自分達よりもはるかに格下と思っていた相手が自分達よりもはるかに実力が高いことをこの段階で男達はようやく気付いたのだ。


「さて…あんた達が俺達をどう助太刀すると?」


 ジェドの言葉には好意的なものは一切無い。いや、それどころか敵意を隠そうともしていない。


「見た感じ今の俺の剣を見切ったのはあんた達の中にはいないようだが、この程度の動きを見きれなかったあんた達がどう助太刀するんだ?」


 ジェドは言葉を終えると同時に男達を威圧する。アレン達には遠く及ばないが、ジェドの威圧感に耐えるのはかなり難しい事は確実だ。


「い、いや、済まなかった…」


 最初に声を掛けてきた男はまともにジェドの目を見ることが出来なくなっている。


「じゃあ、行って良いか?」


 ジェドの言葉に『血煙』のメンバー達は一斉に頷く。


「シア、行こう」

「ええ」


 ジェドはシアに声をかけるとそのまま冒険者ギルドを出て行く。


 後に残された『血煙』のメンバー達はその様子を呆然と見送る。しばらくして、『血煙』のメンバー達は座り込んだ。その様子を見ていた他の冒険者達も醜態をさらした『血煙』の事を笑わなかった。


 ジェドのはなった威圧感はそれほどのものだったのだ。


「なんて…恐ろしいガキだ…」


 『血煙』のメンバーの一人がポツリと呟く。


「ああ、背中に氷水をぶっかけられたように思ったぜ」


 他のメンバー達もジェドの威圧感にすっかりやられていたのだ。







 ジェドとシアは冒険者ギルドを出てラティホージの砦跡へと歩き出す。徒歩で行けば3日程の距離にあるラティホージの砦跡だ。


 いよいよ、ジェドとシアの本格的な冒険者としての活動が始まったのだ。

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