第51話 練習試合④

「ウォルターさん、ジェド、シア、三人ともお疲れ様でした」


 試合を終えた三人にアレンが声をかける。


「大丈夫かい? ジェド、余裕がなくてね…つい」


 ウォルターがジェドの鳩尾に入れた一撃に対して言葉をかける。膝をつくぐらいの一撃ではあったがかなり手加減されたのだろう。気分不良にはなっていない。


「大丈夫です。気分不良もありません」

「そうか良かった」


 ジェドの答えにウォルターはほっと胸をなで下ろした。


「しかし、ジェドとシアは組むと明らかに別物だな」


 ウォルターの言葉に全員が頷く。


「確かにそうね。お互いがお互いのやるべき事をきちんとやる。そして、お互いの長所を伸ばし、不足を補う。理想的なコンビね」


 レミアがそういうとまたも全員が頷く。


「二人にちょっと聞きたいんだが、初手でシアが【水瓶アクエリアス】を使ったじゃないか」

「うん」


 アレンの言葉にシアが応える。その声には「それがどうしたの?」という疑問が含まれている。


「その後にジェドは驚くことなくウォルターさんに先手を打ったろ。あの流れなんだが、二人は最初から段取りとして予め話し合っていたのか?」


 アレンの言葉にジェドもシアも首を傾げる。


「いや、そんな事はしてないな」

「そうね」

「その割にはジェドはまったく驚いてなかったぞ」


 アレンの言葉にフィアーネが続けて話す。


「そうよ、端で見ていた私も『え?』となったわよ」


 フィアーネの言葉に全員が頷く。


「いや、シアが【水瓶アクエリアス】を使うのが分かったから、隙を作るから先手を打ってと言う事だろうと思ったんだ」


 ジェドの返答に全員が驚愕する。


「ちょっと待て…ジェド、お前、あの状況でシアが何の魔術を使うか分かったのか?」


 ロバートがジェドに驚きを含んだ声で問いかける。


「え? はい。シアと旅をしているときに何度も【水瓶アクエリアス】を使っていたので…ってどうしたんです?」


 ジェドは返答の途中で全員の驚愕の視線を感じ首を傾げる。


 ジェドの行動に全員が驚いているのは、普通魔術は何が放たれるかを事前に察知することは、展開する魔法陣、詠唱などからしか出来ない。しかし、先程のシアの【水瓶アクエリアス】は魔法陣も展開していないし、詠唱もしていなかった。つまりジェドは魔力の波動だけでシアが何の魔術を放つかを察したのだ。


「お前、魔力の波動だけで普通、何の魔術を放つかなんて分からないぞ」


 ヴォルグの言葉にヴィアンカも続く。


「ええ、魔術師団のトップでもそんな事が出来る人はいないわよ」


 ヴィアンカの言葉を受けてジェドは言う。


「そうなんですか?ただ、魔力の気配で次に何を放つかを分かるのはシアのだけですよ」


 ジェドの言葉を聞いた瞬間に全員の目が生暖かくなったのをジェドは感じた。シアもその視線を察したのだろう顔を赤くする。


「ほぉ~」

「へぇ~」

「うわぁ~」

「お熱いことね~♪」


 先輩の近衛騎士達はニヤニヤし始めた。


「な、何ですか!?」


 ジェドも気恥ずかしさのためについ大きな声を出してしまう。


「いや~若いっていいね~」

「おいおい、お前も新婚じゃないか」

「そういうお前だって婚約者と仲が良いって聞いてるぜ?」

「三人ともあんまりからかっては可哀想よ。ここはじ~~っくりと見守りましょうよ」


 近衛騎士達はジェドの反応にニヤニヤしっぱなしだ。


「お、おいアレン」


 ジェドが助けを求めるようにアレン達を見るとアレンは婚約者達とヒソヒソと話をしている。


「……ここ…告白…のに」

「い……で…ましょうか?」

「フィリ……の…案で…」

「いや、この……むの……か?」


 所々、聞こえてくる単語にジェドもシアも少しばかり不安になってくる。アレンとその婚約者達は明らかに何か企んでいるようだ。


「アレン!!」


 埒があかないとジェドはかなり大きな声でアレンを呼ぶ。


「な、なんだ?」


 明らかに挙動不審なアレンとその婚約者達、いや先輩達も含めてジェドがじと~という視線を送る。するとアレンはバツが悪そうに話を続ける事にした。


「まぁ、とりあえず初顔合わせも無事終わったと言う事で、これからは近衛騎士の皆さんもジェド、シアも一緒に指導をしていくことになるから、お互いに高め合ってくれ」


 やや、強引にアレンは話を締める。


 こうして、ジェドとシアは近衛騎士の先輩達と鎬を削ることになっていくのであった。


 ちなみにジェドとシアが帰った後、アレン達と近衛騎士達の間でどのようにジェドとシアをくっつけようかという話で盛り上がり、ロムとキャサリンはその様子を見て苦笑することになったのだ。

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