第25話 レミア③

「私はレミアよ。よろしくね」


 ニッコリと笑いレミアと名乗った少女にシアはつい見とれてしまう。だが返答しないとせっかくの縁が切れてしまう。そう思ったシアはさらに話しかけることにする。


「レミアさんは一人で参加してるの?」


 シアの言葉にレミアはニコニコしながら返答する。


「あんまり年も変わんないみたいだからレミアでいいわよ」


 レミアの言葉にシアは踊り出したい所だったがぐっと耐える。レミアと呼び捨てにすることを許してもらうというのはシアにとって嬉しすぎる言葉だったのだ。


(こ、これはもう友達よね!!友達になったと見ていいわよね!!)


 シアは心の中で叫んでいる。なんだかんだ言ってもシアは今まで友達と呼べる存在がいなかったのだ。ウォルモンドもラウドもアンナも友達と言う感じではなかった。またサリーナも友達と言うよりも頼れるお姉さんといった感じだったのだ。


 そのシアにこんな素敵な友達が出来たというのは嬉しい限りだったのだ。


「そう?だったら私もシアでいいわ」


 シアは内心の嬉しさを出来るだけ見せないようにきわめて平静を装いレミアに返答する。


「わかったわシア、それで一人かという問いだけど今回は一人よ」


(シアって呼んだ♪私こんな美少女と友達になったんだ♪ひゃっほう!!)


 シアの心の中には初めて友達が出来たことを神に感謝している。だが疑問が出来たのでそれを聞いてみることにする。


「今回は?」


 シアの言葉にレミアはあっさりと答える。


「うん、いつもは四人で組んでるのよ」

「他の人は参加しないの?」

「ええ、本業があるからね。私は出稼ぎ」


(魔将討伐が出稼ぎって…どんな本業なのかしら…でもあんまり触れないほうが良さそうね…それにしてもレミアの組んでいる人ってやっぱり美人なのかな?それとも格好いい男の人なのかな? ひょっとしてレミアを巡って男達がバチバチと火花を散らしてるのかしら…それはそれで見てみたいわ)


 シアがそう考えていると今度はレミアの方から質問がとんだ。


「シアこそ一人なの?」

「ううん、コンビを込んでいるんだけど、そのコンビがちょっと情報交換してくるって離れているの」


 まさか逆にレミアに自分の事を聞かれるとは思ってもみなかったのでシアは慌てた。声が裏返ること無く返答できたため、シアは自分で自分を褒めたいぐらいだった。


「じゃあ、その人も紹介してくれる?」


 だが、次のレミアの言葉にシアは大いに戸惑った。


(え…そうだった、ジェドがレミアを見たら一目惚れしちゃうかも…でも、コンビの相手を紹介しないというのもおかしいし…)


「え?え~と…」


 シアの不安が形となった煮え切らない返答にレミアも戸惑っているようだ。


「あ、いや、無理にとはいわないよ」


 レミアの申し訳なさそうな言葉にシアは慌てて否定する。


「違うの…その、レミアが綺麗だから、ジェドが好きになっちゃうかも…って」


 シアはつい本心をレミアに告げてしまう。告げてからシアは後悔する。こんな言い方をしてしまえばレミアも不快になってしまうのではないかと心配になったのだ。


「それはないわよ。シアという恋人がいるのに私を好きになるなんてあるわけないわよ」


 レミアの苦笑混じりの否定であったがシアはそうは思わない。


(でもどう考えてもレミアのような綺麗な子を見たら一目惚れする可能性は高いわ…それに…)


「こ、恋人じゃないの」


 シアは恋人の部分を否定する。本当の所は否定などしたくなかったのだが仕方のない事であった。


「え?だってコンビを組んでいるんでしょ?好意を持ってない女の子と組んだりするかしら?」


 レミアの言葉にシアは希望を持つ。


(そ、そうよね、まったく脈がないわけじゃないよね!!)


「え、そうかな~」


 シアの頬は緩み始める。


 そんな会話をレミアと交わしているとジェドがこちらに向かってくるのが見える。


「シア、お待たせ」


 ジェドはシアに声をかける。チラリとレミアを見る。


(うわぁ~なんだこの綺麗な子…。ひょっとしてさっきシアの言っていた女の子か?)


「お帰り、ジェド」

「シア、こっちの人は?」


(本当に綺麗な子だな)


 レミアを見たジェドの頬がわずかに赤くなるのをシアは目にする。


(ちょっと…レミアは確かに綺麗だけど私の前で見とれなくてもいいじゃない!!)


 シアはジェドの反応に不安になるがそれ以上に怒りがあった。自分が思いを寄せている異性が別の女性に見とれるのが楽しいわけは無いのだ。


「私はレミアよ、シアが私が一人だから話しかけてくれたの」


 レミアがそう答えると、ジェドも自己紹介をする。


「そうだったのか。俺はジェド、シアとコンビを組んでいるんだ」

「よろしくね」

「ああ、よければ俺もシア同様にジェドと呼んでくれ」

「わかったわ、私もレミアで良いわ」


 ジェドとレミアの会話は非常に当たり障りのないものであるが、シアは少し不安になってきた。


「レミアは一人でやってんの?」

「ジェド、レミアは四人でチームを組んでいるらしいわ」


 ジェドの問いかけに答えたのはシアである。普段のシアならまずやらない対応だがレミアという美少女にジェドが心奪われるという恐怖がシアに普段は行わない行動をとらせたのだ。


(シアが話に割り込むなんて珍しいな…ひょっとしてシアは嫉妬してくれてるのか?)


 普段行わない行動をとるシアにジェドは期待を込めて考える。


(ひょっとしたら…シアは…俺の事を?)


(…俺の時代が来たのか?)


 ジェドは表面上は平静を装っているが内面ではシアが嫉妬してくれているかも知れないという状況に実の所、嬉しかったりする。


「そうなの? じゃあ他の人は?」 


 ジェドの表面上には現れないが彼は心の中で喜びに打ち震えていたのだ。もしジェドもシアももう少し自分に勇気があればとっくに二人は恋人…いや、ひょっとしたらすでに結婚までしてたかもしれない。


「さっきシアにも言ったけど、他の三人は本業の方、私は出稼ぎよ」

「出稼ぎ…って」


(魔将討伐が出稼ぎ? レミアの本業ってどんなもんなんだよ)


 ジェドは表面上には苦笑ぐらいで済ませているが、心の中ではツッコミまくっていた。


「そうだ、ジェドなんか収穫あった?」


 シアがジェドに声をかける。


「あったっちゃ~あったな」

「どんなの?」

「どうやら、この近くに魔将配下の魔物が斥候を放っているらしい」

「斥候?」

「ああ、幸い、その斥候は先頭付近の冒険者が斃したらしい」


 ジェドの持って来た情報を聞いたとき、レミアの表情が曇ったのをジェドとシアは訝しんだ。

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