第11話 因果応報①
ジルベ村を出発したジェドとシアは王都への道を歩き出す。二人がまず徒歩を選んだ理由は至極単純である。
ジルベ村から出る乗合馬車がないのだ。そのため二人はまず乗合馬車が出ているジルベ村から2日かけてエジル村までやってくる。このエジル村はジルベ村よりも街道が整っているため乗合馬車がでるのだ。
ひとまずジェドとシアはこの村にある冒険者ギルドに顔を出すことにした。依頼をうけるにせよ受けないにせよ冒険者ギルドに顔を出すことで何かしらの情報を手に入れる事は出来るからだ。
エジル村の冒険者ギルドは酒場と併用しているらしくギルドの受付のとなりにいくつかのテーブルが並べられそこで数人の冒険者達が酒盛りをしている。
「さて…」
ジェドは掲示板に貼られている依頼を見てるが内容はジルベ村とほぼ変わりない。ゴブリンの討伐、オークの討伐、その中にスケルトンの駆除という依頼があるのをジェドは見つける。
「シア、これ見てくれ」
ジェドが指差した依頼書をシアが目を通す。
「アンデッドの討伐…スケルトン10体討伐で銀貨2枚、但し討伐証明としてギルド職員が同行する…か」
シアは考え込む。しばらく考え込んで首を横に振る。
「駄目か?」
「うん、私は止めといた方が良いと思う。アンデッドが今の私達に討伐可能とは思えないわ、それに…」
シアは周りに聞こえないように声を潜める。
「ギルド職員が同行というのが止めといた方が良いという理由よ」
「?」
「この時間までこの依頼が残っているという事はこの村の冒険者達がこの依頼を避ける理由があるのよ」
「…その理由が同行する職員というわけか?」
「あくまでも可能性の話だけど…ゼロじゃないわ」
シアの言葉にジェドも考え込む。確かにとんでもない偏屈者が同行する可能性があるのだ。
「ふ~む…」
ジェドは考え込む。シアの言葉は可能性を示唆しただけのものであるが、十分あり得る話だった。それにジェドとシアは冒険者としては格下の『ブロンズ』であり17歳の小僧、小娘だ、当然足下を見ようという連中もいることは間違いない。
「となるとこの依頼は避けるのが無難だな」
「そうね」
「となるとゴブリン討伐にした方が良いか。報酬もジルベ村よりも割高だし」
「うん、アンデッドの討伐は私達はやったことないけどいきなり参加するには敷居が高いと私は思うわ」
「そうだな…ここは無難な線で行こうか」
ジェドとシアは頷き合うとゴブリン討伐の依頼を受ける事にした。受付の女性の所に行き、ゴブリンの討伐を行う旨を告げる。
受付の女性は30代になるか、ならないかといった年齢の女性で中々の美人である。だが、冒険者ギルドという海千山千の相手をしているのだから甘く見ると痛い目を見ることはまず間違いない。
「すみません、あそこにあるゴブリン討伐の依頼を受けたいんですが」
「はい、ゴブリン討伐ですね」
受付の女性はにこやかに応対する。
「助かります。ゴブリンの討伐はここではなかなか引き受けてくれる人がいなくて」
「え?どうしてです?ゴブリン討伐は手頃な依頼じゃないんですか?」
ジェドの疑問に受付の女性は苦笑いしながら答える。
「実はゴブリンの活動地域がこの村からちょっと離れた所で行って帰ってくるだけで一日がつぶれるような所なんです。なので大抵途中で野営をする事になるので効率が悪いという事で敬遠されがちなんですよ」
「なるほど」
「ですから少しだけ報酬も良くなってるんですけどね」
「それで10体討伐ごとに銀貨1枚、銅貨20枚なんですね」
「はい、それで受任してくれますか?」
「もちろんです。ゴブリンの活動地域がどの辺か教えてもらえますか?」
「はい、それではこちらの地図をごらんください」
受付の女性は地図を広げ二人に場所を説明する。確かにちょっとした距離でありこの村が依頼を避けるという理由も少し分かる。
「場所は大丈夫でしょうか?」
「はい、大体の場所は分かりました。それで一応聞いておこうと思うのですが」
ジェドは受付の女性に疑問点があったので聞いてみることにした。
「もし、野営している時にアンデッドに遭遇して斃した場合どうなるんです?」
「う~ん、それは残念ですが報酬は無しと言う事になります」
「どうしてです?」
「アンデッドは斃すと消滅してしまいますよね。そのため嘘の報告をする冒険者が昔いて不当に報酬を得ていたという事があってから冒険者ギルドの職員が確認する事になっています。その事に対して一切の例外は認められません」
「でもそれじゃあ、アンデッドの討伐が滞るんじゃないですか?」
「ご心配はごもっともなんですが国の方で対アンデッドの部隊が定期的に討伐を行うんです。ギルドにくるアンデッドの依頼は基本的に大した内容じゃないんですよ」
「なるほど」
受付の女性の言葉にジェドとシアは一応納得した。
「他に何か聞きたいことはありますか?」
「そうですね。携帯食を売っている店を教えてください」
「ああ、それならこのギルドを出て右に50メートル程行ったら十字路がありますので、底を左折してすぐに店がありますので、そこでなら良い品を安く仕入れることが出来ますよ」
「「ありがとうございます」」
受付の女性にジェドとシアは礼を言うとギルドを後にする。
「とりあえず路銀を増やすとしよう」
「そうね」
ジェドとシアはこのあと滞りなく準備を済ませるとゴブリン討伐に出かける。
二人はこの仕事で思いも寄らぬ経験をする事になるのであったが二人はまだその事を何も知らなかった。
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