『ファイター・ビズ -小説・戦闘機商戦-』

作者 鷹匠 裕

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★★★ Excellent!!!

戦闘機というものは、得てしてカッコいいものだ。
無論「国防上の抑止力となる」と言ったところで
そもそも人殺しのために開発される存在ではある。
それでも、空駆ける精鋭の姿に心惹かれてしまう。

防衛省が購入を検討する自衛隊の次期主力戦闘機、
通称「FX」を巡り、政界と財界の思惑が錯綜する。
単に優れた機体を選べばいい、という話ではない。
技術者が歯噛みする事情が数多、裏で働いている。

米国ロッキード社か欧州EAS社か、それとも――。
その「if」の選択肢が浮上すると、物語は次第に、
ダイナミックでスリリングな方向へ展開していく。
文科省出身で防衛畑に疎い主人公は、翻弄される。

個人的な話だが、このところ機械の本をよく読む。
第二次世界大戦までの戦闘機と、クルマの通史と、
最先端の乗り物に搭載されるコンピュータのこと。
ボディの素材や燃料関係の話は面白いですよね!

スマートニュースの連載小説コンテストに合わせ、
「1話あたり2000-3000字、30話ひと区切」という、
地味に手間も暇も頭も使う構成に組み立て直す為、
もとの原稿の半分以下に切り詰めた、との苦労話。

近況ノートでそのお話をまず拝見、驚嘆しました。
本当にお疲れさまです。ご苦労なさったでしょう。
超絶大変だったこと、すっごいよくわかります。
コラムや短編連作じゃない派は苦しみましたよね。

政治の世界に属する主人公の仕事ぶりと私人の顔。
読者にとって普段は馴染みのない世界が垣間見える、
そんなリアリティがあって骨太な経済小説でした。
大変興味深く、面白かったです。

★★★ Excellent!!!

防衛省の次期主力戦闘機(FX)は、米国機か欧州機か。
他省から防衛省出向中の仲森浩之は、FX選定チームに加わることを命じられ、欧州機を推す立場となる。
米国機派の中心人物は、防衛技術研究所の技官・吉武真澄。

モノが戦闘機とはいえ、ビジネスで多額のお金が動きます。
国側は、「買い手優位」な立場を装ったり。
商社は、隣接国に同時に売り込んだりもし。
日本でも他国でも、腹の底を見せない駆け引きが行われます。

私、国際情勢や経済戦争には、とことん疎いのですけれども。
航空機事故調査ノンフィクションを続けて読んだ時期があり、技術面にはちょっと関心があります。
もちろん、本作は戦闘機なので、軍事特有の条件があるのですが。
敵に発見されずに懐まで入り込めるステルス性能は、現代の戦闘機の命。
性能の劣る機が100機あっても、高性能機1機には勝てない。

「戦闘機の機能と旅客機の機能は違いますよね。戦闘機の機能のための技術を磨くことに疑問はないのですか」
「人を速く快適に運ぶ旅客機と違う、戦闘機の兵器としての性能、つまり人を殺すための技術ということを言っておられるのですね」
仲森に問われた吉武が語る、防衛省の技術者としての矜持。
本当に国を守るためには、何を選ぶことが正解なのか。

物語は半ばから、意外な方向に進みます。
今回、再読なので展開は知ってるんですけれど、それでも後半はノンストップで読んでしまいました。