その088「道連れ」
「お姉さんお姉さん」
学校からの帰り道、帰宅中のお姉さんを見つけましたので。
今日も今日とて、わたくしはお姉さんのことを呼びますわ。
「……委員長ちゃん、高貴な血筋の振る舞いの奥で、主人に構って欲しい本能を隠しきれないセレブわんこじみてきたわね。今帰り?」
「ええ。それと弟さんから伝言ですわ。法城先生からお話があるそうで、帰りが遅くなる、と」
「ん、ありがと。じゃあ途中まで一緒に帰ろっか」
「はいっ」
こうして、わたくしはお姉さんと肩を並べて歩くことになりました。
それだけでも、今日は幸運だと思えたのですが。
もし。
お姉さんと、手を繋げたなら――
「…………」
お姉さんの手、小さい。指も、細い。
それで思う存分、感触を確かめられたなら……んんっ……。
「い、委員長ちゃん?」
「はい?」
「なんで私の手を凝視しながら歩いてるの?」
「あ……わたくしったら、なんてはしたない……!」
「何を考えてたの!?」
「え、ええと……!」
お姉さんに訊かれて、ついつい気が動転してしまい、
「――て、手を繋ぎながら、歩きませんか!?」
い、言ってしまいましたわ!
「別にいいけど……もうちょっとで、帰り道別々になるわよ?」
いつの間に!?
わたくし、そこまで悶々としてましたの……!?
「じゃ、今から手を繋いで帰ろっか」
「え?」
と、お姉さん、わたくしの手を取って歩き出します。
向かう先は、わたくしの自宅の方向……って、
「お、お姉さん?」
「委員長ちゃんの家まで送るわ。それまでだけど、いい?」
「あ……は、はいっ!」
お姉さん、なんとお優しい。
そんな大好きな人と、こうして歩けるだけで、わたくし――!
「そうだ委員長ちゃん、幸せそうなのはいいけど、魂出るのはナシよ?」
「き、気をつけ……あふ――」
「って、言ってる側から……あれ?」
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『…………』
『…………』
『私まで魂抜けた――っ!?』
『手を繋いだままだと、一緒に抜けるようですわね……』
『どういう原理で!?』
『もしや、お姉さんとわたくしの絆が……!』
『絆で臨死体験って嫌なんだけど!?』
『あ、下のわたくし達、折り重なるようになって、わたくしが下になって……い、いけません、お姉さん、こんなところで……!』
『ほわあああっ!? 何やってんの下の私!?』
『……いいですわ、もっとやってください』
『ボソッと問題発言しないで!?』
この後、偶然通りがかったユウさんが、いつも通り、わたくし達を元に戻してくれましたわ。
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