その052「占い」


「姉ちゃん姉ちゃんっ!」

 朝の通学前の時間、今日も今日とて僕は姉ちゃんのことを呼ぶ。

「見た目通り、一日の始まりに希望を持つウキウキわんこ状態ね……」

「うん! テレビでやってた今日の血液型占いが良かったからさ! 今日は何かイイことありそう!」

「ふ。そんなもの信じている辺り、まだお子様ね」

「姉ちゃん、悪い結果の時に限って、そう言ってるよな」

「う……」

 図星を指されて、姉ちゃんダメージ受けてるぞ。

「まあまあ、ドンマイ姉ちゃん。YAH●O!の星座占いでも見てみようよ」

「さっき見たけど、最下位よ」

「じゃあ、姉ちゃんがスマホアプリで愛用しているタロット占いは――」

「『運命の輪』の逆位置よ」

 避けられない不運、という意味だぞ……。

「……そう言う日だと思っておくことにするわ」

「ね、姉ちゃん、テンション低いまま言われると、心配になってくるぞ」

「大丈夫よ。さ、学校行くわよ」

 と、時間になったので、僕達はそれぞれ学校に行ったんだけど。


 夕方、学校から帰ってきた後。

「………………………………」

 姉ちゃん、ガチ凹みしてるぞ!?

「……長かった朝礼、小テストのケアレスミス、しゃっくりが止まらない昼休み、友達にセクハラされた上に『……胸どこ?』とか言われる案件、挙げ句の果てには帰りの時間――」

 聞いてもいないのに、今日の不運をぶつぶつと並べてるぞっ!?

「ストップ! 姉ちゃんストーップ! それ以上はいけない!」

「ふ、ふふ……ここまでくると喜劇だわ……誰も私を愛さない……」

 姉ちゃん、自棄になってるぞ。

 こう言うとき、僕からかけられる言葉はというと。

「姉ちゃん」

「……なによ」


「誰も愛さないとか言ってるけど、僕は大好きだぞっ!」


「――――」

 姉ちゃん、驚いたように目を見開くも。

「……ありがと」

 ほろ苦く、でも、少しだけスッキリした笑顔を浮かべてくれた。

 ちょっとでも力になれて、よかったぞ。



 翌日の夕方。

「どうしたのよ、すんごい凹んでるわね」

「いや……今朝、僕の運勢最悪だったでしょ? 実際その通りで、不運のオンパレードでさ」

「それは災難だったわね」

「……姉ちゃん」

「なによ、その物欲しそうな顔」

「…………誰も僕を愛さない」

「なっ……も、もしかして」

「…………」

「昨日のやつを、わ、私にもやれと?」

「……………………」

「い、言わないわよ? そ、そんな、二度ネタだし……だ、ダメよ、絶対にダメだからね!? ダメだってば!?」

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