他人任せの自殺願望

モミジ

他人任せの自殺願望

 死にたい。死にたい。死にたい。

 とか言っておきながら、死のうとしない自分の意気地なさがふがいない。

 呪文のように繰り返して言っておけば、呪い殺されやしないか。

 交通事故、転落死。何でもいいからさっさとしてくれよ。

 通り魔、殺人鬼。誰でもいいからさっさとしてくれよ。


 他人任せの自殺願望。こんな気持ちになったのは、いつのことだったろうか。

 夢が叶わないと気づいてしまったから。

 気になるあの子に嫌われてしまったから。

 誰にも興味を持ってもらえなくなってしまったから。

 この世に未練なんて何もねえと思い知ったから。

 生きていたって仕方がないし、もういっそ眠らせてくれ。寿命なんて待ってられねえんだ。


 他人任せの自殺願望。自分でいなくなれれば世話にならなくても済むのにな。

 でも、それが出来ねえってことは、きっとまだ生きていたいと心のどこかに残っているからか。

 ゴミくずみたいに生きている、それって楽しいのか。自分でもよく分からない。それでも、死にきれない自分自身の弱さは何だ。


 他人任せの自殺願望。それは誰かに殺人罪を被せて自分だけ楽になろうというクソ醜い願いだ。

 だってしょうがないだろ。この世界で生きていくことに疲れてしまったのは、ほかでもない他人や世の中が冷たくするからだ。


 死にたい。死にたい。死にたい。

 口ではいくらでも言えるのに実行する度胸がない。誰か勇気をくれよ。でも、その誰かすらいなかった。


 他人任せの自殺願望。誰か殺してくれる人はいませんか。

 冷たい世の中。そこに住まう人々。

 嘲り、罵り、言葉の暴力。知らず知らずに人を平気で傷付ける。それは、屈辱と言う名の半殺しだ。

 夢の中で生きたかった。綺麗な世界で生きたかった。

 夢を見させてくれ。綺麗な世界を見させてくれ。

 その両方を叶えてくれたのは酒だった。こんな薄汚れた考えを全て洗い流してくれた。


 他人任せの自殺願望。ああ、お前になら殺されてしまってもいっか。

 彼はそう思って、酒に溺れて飲酒運転で事故って死んだ。

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