第46話 恋の冒険 2

「おい、起きろ? 生きているんだから、起きろよ!」


 ーー寝ている人に生きているからなんて、変なこと言う……。う~ん、まだ寝ていたいのに……


「だから、起きろって!」


「わっ」


 煩い叫び声にビックリして飛び起き上がった。体を起こして周りを周りを見渡そうと思って、見渡そうとしたけれど目の前にいる人を見て固まる。失礼だけれど目の前の人の顔を凝視。


「び、美少女!」


ーーなんと言う美少女。これこそ和美人! 


 真っ黒いまん丸お目々に、形のいい鼻。唇がサクランボ。髪の毛も真っ黒のストレート。着物姿じゃないのが、ちょっとと思うけど……ううん、セーラー服でもオッケイ。なんて綺麗な可愛い子。もう学校で一番になるよー。


ーーあーあ、私もこんなに可愛く生まれていたら、剛志も私のことを好きになったかなあ。


 私はその子に、ただ見惚れる。


「オイ、まさか、お前バカなのか? バカだからこの島へ流されたのか? それとも言葉話せねーのか?」


「ちょ、ちょっと失礼なー」


 こんな可愛いサクランボのお口から、汚い言葉ばかり。


「なんだ。シャベッタ。まあ、喋んない女でも別にいいけど。入れる穴さえあれば」


ーー何を言っているの?


「入れる穴?」


「はあー。あんた、そんなのも知んないの! 散々、ここに来るまで看守達にたっぷり可愛がってもらっただろう? よし、行くぞ。俺も入れるの何ヶ月ぶり? あの最後の女が死んだんは、確か二つ月の時だったなー。まさか、女が来るとはなあ。まあ、これで、とりあえずこの島に人が増える。よかった、よかった。おい、そんな狭い舟なんかにいないで、行くぞ。まあ、俺としては、あんたがそこでしたいって言うなら、別にここでしてもいいけど」


ーー私、きちんと言葉分かっているよね?


 急にそいつが着ているズボンを脱ごうとした。私のことをあんたと呼ぶので、私もそいつと呼び捨て。


「ちょ、ちょっとー。なんで、ズボン抜いているの!?」


「えっ?」


 そいつがズボンに当てた手を止めて、私を不思議そうに見ている。


「決まってるだろ、俺のをおまえの穴に入れるため」


「う、うそ!? あなた、女でしょう? そ、そんな、まさか、性行為をしようなんて考えていないでしょうね!?」


 私は舟から急いで出て、もちろん起きたばかりで頭がふらふらする。ふらつく頭でそいつの立っている所と、反対側に立った。


「おい、てめー。俺のどこをどう見たら女って思うんだよー。どこからどう見たって男だろう」


ーーどこからどう見ても、女……だよ。


「あっ、あなた、男の子なの?」


「はあ、あんたって、ほんとムカつく女だなあー。やっぱり口の聞けない女がよかったよ。顔はメッチャかわいいからいいけど……もうさっさと入れさせろ。俺が男って言う証拠ちゃんと見とけよ! 俺のって、かなり大きいって言われていたしな」


 そいつ、ため息を吐いた後に言い切った。やっぱり私の勘違いじゃないみたい。これって、乙女の危険。どうしよう……。急に不安が押し寄せる。


「そ、それよりここは、どこ? て、まさか、あの流刑者達の島? って、私、死んでないの? っほかの人は? あなたも犯罪者?」


 そいつは私の言葉を聞いてしばらく「きょとん」として、私を見た後に言った。


「ああ、ここはその島。あんたは、運がよかったなあ。ちゃんと生きてこの島にたどり着いた。他の人って? あんたの他に人いたのか?」


 そいつが真面目に返事をした。


「ええ、ううん。違う。私は、一人だけ。他の人と言うのは、この島にあなた以外に誰かいないの?」


 私は周りをキョロキョロ見ながら聞いた。

ここはリゾートの浜辺のように、ヤシの木に白い浜辺、青い海。でも、人はこいつと私だけしか見当たらない。


「ああ、俺だけ。他の奴は二つ月の前の時に、みんな熱を出してあっけなく死んじゃった。その熱がどんどん広がってよ。俺はこの島の真ん中にある山に住んでいて、誰も来なくて助かった。俺が皆が住んでいる集落へ来た時は、最後の奴が死んだ時で。俺は熱に犯されなかった」


「あなた一人で、山に住んでいるの?」


 他に聞くことがあるのに、こんなことを聞いてしまった。


「そりゃ、仕方ないだろう。この島には、女少ないから……あいつら、俺の尻を使いたがる……」


 そいつが下を向きながら言った。


「……そうだったの……」


「ああ、もう小さい時は、散々だったんだぞ! 大きくなって、力付けたらあいつらから逃げ回ってさあ。俺って結構逃げるの早いんだ。猿って呼ばれている」


 そいつが自慢げに言った。


「あ、あなたの名前は?」


「猿」


「さ、猿? うそー?」


ーーまさか!?ねえ?


「皆そう呼んでいたんだよ! 名前なんて覚えてねえーよ。お前の名前はなんだよ!?」


 私は目の前にいる少年を、なぜか嫌いになれない。どんなに汚い言葉使いでも、変なことを言っているけど。


「ミーナ。ミーナって言うの。あなたの両親は? 両親はちゃんと名前をつけてくれたんでしょう?」


「知るか! 俺は犯罪者じゃねえ。この島で生まれたのさ。母ちゃんは、俺を生んで何人もの男の相手してボロボロになって死んだんだってさ。父ちゃんは、誰か知らねえ。母ちゃんがここへ流される前に、やった看守かそれともこの島の男か知らねえ」


 その子は頬っぺを膨らまして言った。普通は可愛い仕草だけど、話を聞いている限りそう思えない。


「じゅ、じゃあ、あなたを育てたのは……だ、誰なの……?」


 ズケズケと事情を聞くのはかねてしないけれど、今は目の前のその子についてすべて知りたかった。


「じっちゃん。じっちゃんは、めっちゃくっちゃ強えーんだぞー。じっちゃんは騎士だったんだぞー。でも、濡れ衣って言う奴を被されてここへ来たって言う訳。

 じっちゃんが生まれた俺みたいな赤ちゃんを引き取って、育ててくれたんだー。俺の他に何人かいたけど、女はすぐに死んでしまった。男も、あいつらにたらいまわされて、死んでいった奴が多い。俺は、逃げ回っていたから、今まで生きてこれた。じっちゃんがまだ元気だった時はよかったけど、弱くなった時から地獄だった。

 俺も、兄弟達を守ろうとしたけど、ダメだった。もう何人かは快楽の虜になって、あいつらと暮らし始めたし……。それか、生きるのが辛いって、自分から死んでいったし……結局は、俺しか生きていなかった……」


 一瞬、その子が泣いているように見えた。


「でも、あいつら、全員死んだ。よかったよ。俺はよかったと思っていた。思っていたけど、やっぱり一人で、生きているのは……寂しかった……」


 その子が、私の目を見つめながら言った。


「俺、あんたがここへ来てくれて、うれしい。じっちゃんが言っていた。普通は、男と女、結婚と言うものをするらしい。そして、結婚して子どもをたくさん作って生活するらしい。俺は、あんたと一緒にじっちゃんの言っていた結婚をしたい! よし、さあ体を合わせるぞ」


「ちょ、ちょっと待って! どうして結婚が体を合わせることになるのよ!」


 ちょっとこいつを可哀想と思って、同情したのに。どうして、こんな展開になるの?


「だって、結婚ってどうするか知らない。体合わせることは、知っている。俺、なかなか上手いよ。あいつらから逃げてたけど、女に誘われた時はしてやったらみんな喜んでいたぞ」


こんな幼い子がーって、こいつ一体何才なの?


「あなた、年はいくつ?」


「ああ春が十六回来た。確か、十六才って言うのか? 大人さー」


まあこの世界では、成人しているけど……


「成人って言う奴だろう。じっちゃんが、いろんなことを教えてくれたんだ。俺、文字も書けるし読むことも出来るんだぞ! すげーだろ。じっちゃんも、俺が物覚えがいいって、褒めてくれたさあ」


「そ、そうなんだ。じゃあ、ちゃんと結婚と言うものを勉強した方がいいよ。私、もう結婚しているの。だ、だから、あなたとは結婚出来ないの!」


「はあ!? 結婚してんの? 大丈夫、俺とも結婚すればいい」


「……」


ーーこの子、結婚の意味知らない……。


「じゃあ、その結婚して、早く入れさせて」


ーーこの子と、まともに会話出来る人っているの?


 自分が常識と思っていることが相手にとってそうでない時、会話は永遠にすれ違う……。まさに今その状態。これが宇宙人と遭遇と言うこと? って、異世界人だし……あっ、でもこの世界の人達ってきちんと日本と似たような常識あった。だから、私がいくらミーユの中に入ったと言っても、違和感なくカルチャーショックも少しで馴染めたんだ。もしみんながこの子のようだったら、私もおかしくなっていたかも。


「きゃっ、あー、な、なに、する、あっ、うふん、ううん、あっ、いっ、いやっ、やっ、あうん、止めて!」

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