第43話 恋の騙し合い 5

 最悪な夕食会の次の朝、私はかなりの寝不足だった。それは仕方ない。

ダニーとキスのことがあったのに、一緒のベットで寝ることになったんだから。部屋にはダブルベットが一つしいかなかった。夕食会から解放されて部屋に戻ってほっとしたのもつかの間だった。待っていたのが、このベット問題。ダニーがソファーで眠ると言ったけれど、彼も旅で疲れているの知っている。結局一緒に寝るように私が脅すハメになってしまった。


「ダニー、ホラ、真ん中にブランケットで隔てを作ったら大丈夫よ。それで、お互いの領域に入らないようにして眠りましょう」


 朝起きて自分の恰好を見て、なんて無意味な提案だったんだろうと恥ずかしくなった。だって、私は、私がダニーの領域に入って、ダニーに抱きついて寝ていたんだもん! 


ーーだ、だって、暖かくて気持ちよかったの。


 自分の寝癖を呪ってしまう。


 起きて目の前にあるダニーの引き締まった体を見て、「っ!?」と無言で叫んだ。


そんな私をニコニコしてダニーが見ている。朝起きたばかりに、どうしてそんなに爽やかでいられるのか聞きたい。


「おはよう。ミーナ。どうして私の領域に侵入しているのですか? そんなに私が恋しいですか?」


 キランと真っ白な歯を見て、ダニーが言った。


「やっ、ち、違うからね!」


ーー恥ずかしい~。


「ミーナでしたら、私はいつでも歓迎です。だからいつでも侵略してきて下さいね。但し、その度に通国料のキスは頂きますからね」


「あっ、はあん。うっ」


 私が返事する前に、ダニーにキスをされた。昨日よりさらに激しい。朝だからなの?


 ダニーに解放された時は、フラフラしていた。朝起きたばっかりで、元気なはずよね? かなり疲れているみたい……。グダグダ言い訳を頭の中で呟いてフラフラしながらバスルームへ行った。桶に溜まっている水を掬って部屋の暖炉で温めて沸かして、後は水と混ぜてぬるま湯を用意した。それで、体を拭いて髪を洗った。

 龍屋敷では、キッチンの隣に入浴場があり普通にお湯を溜めて風呂に入ることが出来た。でも、普通の家庭ではまだ風呂に入るのは、何日かに一回で毎日体をこうして拭くのが主流だ。私はほっ照った体の熱を冷ます。もちろんダニーが手伝いを申し出たけれど断った。

 今日の私の恰好は、街娘。一人で着れる動きやすい。街娘達もオシャレ好きだから、かなり可愛いデザイン。でもあの男爵の客達は、庶民の恰好と言ってバカにするのかな? でも、私にとって、あの人達は一生会うことのない人達なので気にしないことにした。私は着替えが済んだ後にブーツを履いた。今朝、メリエッシと散歩をする予定なのでブーツがいい。

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