第23話 波打つ気持ち 3

「おはようございます。タケルイ」


 ダニーがベンチから立って、いつもの爽やかな笑顔をタケルイにした。


「っああ、ダニー、おはよう」


 タケルイが、ダニーを観察しながら答える。。


「た、タケルイ、お帰り」


 私が言うと、「ただいま」タケルイが笑顔で言った。タケルイがいつもの態度で答えるので私は驚く。怒っているのではと思っていた。


「タケルイ、さっきは、ごめんなさい」


「ああ、私も悪かった。もっと時間をかけて物事を進めないといけないことがあるのに、急いでしまった。私はダニーが龍騎士に選ばれて焦っている所がある……。それより、二人はどうしてここで、抱きついているんだ。それにミーナは、なんで泣いていたんだ?」


「えっ、えと……」


 う~ん、なんと説明をしていいか分からない。


「タケルイ、ミーナの家族の話をしていました。それで、こう慰めておりました」


「そっ、そうか……。そうだよな。ミーナは家族を失ったばかりで、まだ心の整理をする時間がなかったのに、私は私の気持ちを押し付けてしまった。それに、ミーナにとって王都にもまだ馴染んでいないと言うのに。私が龍騎士になって色々と環境が変わって戸惑っているのに……やはり私は未熟な子どもだな」


 タケルイが私の泣いて腫れた目元を触れる。


「ミーナ、ごめん」


 タケルイが前屈み耳元で囁き頬にキスをする。

こんな仕草は心臓がバクバクしてしまう。


「ううん。いいの」


 私がそう言うと、タケルイがにっこり笑った。その笑顔もセクシーでドキドキしてしまう。


「タケルイ。今日の午後に龍騎士の儀式をすることになりました」


「そうか。そんなに早く話を進めたか」


「それで提案です。どうぞミーナのためにも、私達はお互いにわかち合えませんか? 私達はこれから何年も一緒に時を過ごすことになります。お互いに嫉妬をして憎み合うのは、ミーナのためにもよくありません」


 ダニーがゆっくりとし言った。


「確かに好きな人を独り占めしたいと言う気持ちは、普通あるものです。しかし、ここは私とタケルイともう一人の龍騎士で協力してミーナを愛しましょう」


「三人で、愛す? ふ~ん。それもいいかもな。分かった。これは、神の思し召し。だが、私は皆より頑張らせてもらうよ」


 ちょっとタケルイの顔が……にやけているのは、気のせいだよね?って、タケルイ、頑張らなくていいよ。お友達から。ううん、清いお付き合いからしましょうね~?と言おう!


「ええ、ミーナを精一杯愛することには、私も賛成です」


「っえ、ダニー?」


 どうしてタケルイを止めないで煽っているの。


「心配しなくてもいいですよ。私もタケルイに負けないように精一杯尽します」


 私は思いっきりダニーから一歩下がった。


「私も、一生懸命にミーナを愛するからな」


 一歩下がった私の後ろに……。


ーー何で、タケルイがいるの?って、耳元でまた、そんなことを言わなくって

いい。


「じゃあ、キスを」


「じゃあって何~?っうっ。あっうう~ん」


ーーあっ、息が出来ない。そ、それより段々頭がボーとしてきて、気持ちいいかも……。


「っはっはあん、あっ」


「焼けますねえ」


 ダニーの声で現実に引き戻された……。


「はあ、はあ、はあ」


 やっとタケルイから、解放されて息を吸うために肩を大きく揺らす。足腰が立たない。タケルイが私の腰に手を回して支えてくれる。


「私もミーナにキスをしたいですが、龍騎士の儀式までそのような行為が禁止されています。残念ですが、これで我慢します」


 と言ってダニーが私の頬にキスを落とした。タケルイに体を支えてもらいながら、反対側からダニーにキスをされる。


「儀式が楽しみですね」


 ダニーが、ウインクをしながら言った。


「っ!」


 私にはこの二人に抵抗する器量を持ち合わせてない……。


「では、失礼します。まだ儀式が始まるまですることがありますので、また後で」


 ダニーが、また爽やかな笑顔で去った。


「私は、もう一人の龍騎士がダニーのような方でよかったと思っている。私も早く大人にならなければなあ」


 タケルイがダニーを見送りながら呟いた。

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