第17話 愛する恋織物 1
あんな酷いことを言ったんにエスコートされて歩いている私って、イヤな女。
ーー恋とは、どうしてこんなにも上手くいかないのだろう……。
上手くいかない恋のタイミング。私とタケルイもはじめからボタンのかけ方を間違えたんだ。私達が龍姫と龍騎士じゃなかったら……こうして惹かれていたのかな?
ーー私は恋織物のように綺麗に織り合える恋をしたい。
「着きましたよ」
タケルイが応接間のドアを開ける。私は部屋に入って立ち止まった。
「ねえ、どうしてたくさん人がいるの?」
私は小声でタケルイに聞く。
「ああ、どの商人も自分の息子をどうしても龍姫に会わせたいんだ。未婚者の男子には、龍騎士になる機会があるからね。こうして早く龍姫に会える機会を逃すはずがない」
「そ、そうなんだ……」
「でも、あんな小さい子供まで連れて来るなんて。皆必死なんだ」
タケルイが私の耳元で囁き、お辞儀をしている人達の中で窓際にいる少年を指した。私も小さい子供と結婚したくない。
「ねえ、タケルイは何歳なの?」
「っん!? 私の年を知りませんか!?」
タケルイが驚いた顔で聞いた。
「う、うん……」
「そ、そう知らないんだ。私は今度の冬に十九歳になります。今は十八歳です。私の人気は皆が言うほど人気がある訳ではないようですねえ……てっきり国民は皆私のことを知っていると思っていました……」
「あっあのね。わ、私の住んでいた所は、ほ、ほらとっても田舎だし。そ、それで、わ、私、そんな王族とか全然興味なかったし……」
「ミーナにとって、王族とか王子とか関係ないんだ……じゃあ、私はどんな所でミーナを惹きつけたらいいのだろう……」
「っう! 王子様ってすごいよ。うん、滅多にいないしね。貴重な存在だよ!」
「貴重な存在……」
ーーなんか私ってどんどん墓穴掘っている?
「龍騎士様と龍姫様、どうぞこちらに座って下さい。そして、皆様も頭をあげて下さい」
神官長の声がした。
ーーありがとう、神官長。なんか助かった?
私達は用意された椅子の前に行った。
「こちらが、元王太子で龍騎士タケルイ=ヤイ様と龍姫ミーナ様です。今日はわざわざ珍しい『恋織物』を持って来て下さり、ありがとうございます」
神官長が頭を下げたので私も下げた。
「いえ、龍姫様も神官長もどうぞ私共に頭など下げないで下さい。私どもにこうして龍姫様と龍騎士様にお会いになる機会をお与えして頂きありがとうございます」
一番前の真ん中にいる太った、頭の毛が寂しい年寄りの人が言って頭を下げたら、周りも同じように頭を下げた。
ーーっあ、一応髪の毛はあるんだー。
と、失礼なことを思ってしまった。
「私は街商人会の会長をしております、『ムシュン』と言います。どうぞ今後ご贔屓にして頂けたら幸いです」
と言って、また頭を下げた。隣に立っているタケルイが、私の顔とその会長の頭を見て、口を抑えて笑いを止めていた。私はチラリとタケルイを流し目で見たら彼はウインクする。
「さあさあ、龍姫様と龍騎士様お座り下さい。そして皆様もどうぞ椅子に腰かけて下さい」
バロンさんが言い商人は決められた席に座る。
「それでは、お一人づつ龍姫様に『恋織物』をお見せして下さい」
バロンさんが言うと、会長が応接間の後ろに立っている若い男の人に何か合図をする。その人が紙に包まれた物を持って来た。
「あんまり人の頭を見るもんじゃないよ。いくら寂しい頭で毛が変な風に生えている面白いハゲ頭でもね」
タケルイが笑いながら私の耳元で言った。
ーーはっ、恥ずかしい。
私の顔が赤くなった。
「はじめまして。私はムシュンの息子のムシュン=ジュニアです。よろしくお願いします」
会長と会長に似ている青年が、私の前に来て頭を下げた。
「彼も将来、ハゲるのかな?」
またタケルイが耳元で囁いたので彼を叩く。
「まあ、龍騎士様と龍姫様は、なんと仲がいいことか。これでこの国も安泰ですなあ」
会長がニコニコして言った。会長の息子が、その紙を取り中を見えるようにして差し出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。