第14話 ピクニック 2
それは別に私への質問でもなく、独り言でもないようだったから私も何も返事しなかった。
「本当に私はミーナにひどいことを言った。どうか許して欲しい。可能であるならば、出会った時に戻りたい。お願いだ。私達はまた新しい始まりが出来ないか? これから、私とミーナ。ここからはじめることできないか? 新しい始まり……二人がこれから長い年月を生きていくために、掛け違えたボタンを最初から直せないか? お願い、お願いだ……」
タケルイが私の肩を掴んで顔を見つめて懇願した。
「……そ、それは、出来ない」
「っ! そ、そうだよな。なんて都合のいいお願いだよな。ご、ごめん。今のはなかったことにしてくれ。私は自分の罪をしっかり受け止めて生きて行くよ……。ニーナは何も悪くない。悪いのは私だ」
タケルイの手が肩から離れた。彼が私の顔を見ないまま片付けを始めたから、私も手伝った。彼が荷物を昼寝をしていたサファイアの首に括る。
「この先に綺麗な花畑があるんだ。歩いて見に行かないか?」
タケルイが左腕を差し出す。戸惑いながら彼の腕に自分の右腕を絡める。彼は私の徒歩に合わせて、ゆっくりと歩く。十分位雑木林を歩いたら視野が開け青空が見える草原にピンクのコスモスが咲いていた。そよ風に揺られて咲いている。秋桜。コスモス。
ーーこの世界にもコスモスがあったんだ。
「きれい……」
私はその景色に見とれる。
「ちょっと待って」
タケルイがコスモスをブーケにして手渡す。でも一本だけ彼の手に残っている。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
私の手にあるコスモスが可愛い。
「これは、ここに」
一本のコスモスを私の耳に添えた。
こんな風に男の人に花を耳に添えて貰ったことがなかったから照れて彼の顔を見ることが出来ない。
「ミーナの髪は、綺麗だ。こんな水色の艶のある銀髪を持った人を見たことないよ。太陽の光に当たりキラキラと虹色に光っている」
タケルイが私を見つめる。私は目を逸らそうとしたけどタイミングを逃してしまって、そのまま彼の綺麗な顔を見た。
タケルイの顔が近付く。
ーーキスされる!
『キューン』サファイアの鳴き声でハッとした。
「ごめん。行こうか」
私達は来た時と同じように帰った。私の気持ちはなぜかモヤモヤしている。
「今日は楽しかった。また、行こう?」
私達の屋敷の中庭に着いた時に、彼が私の顔色を伺いながら尋ねる。
「今日はありがとうございます。でももう私に気を使う必要はありません。どうぞ私に使う時間を婚約者様との時間に使って下さい」
「っ何を、」
「今度はあの場所に婚約者様を連れて行って下さい。今日はありがとうございました」
私はお辞儀をした後に、後ろを向いて、建物の中へ走った。
「おい、ちょっと待て」
タケルイの声を無視して走った。
「お帰りなさいませ。どうしましたか?」
クレイさんが心配した顔で私を迎えた。
「ううん何でもないの。久しぶりに出かけたから少し疲れたの。少し横になっていい?」
クレイさんが心配そうにしていたけれど、何も聞かずに着替えを手伝ってくれる。私はすぐに眠った。私はタケルイの気持ちが怖い。龍騎士と龍姫のせいかもしれないけれど、彼が私に惹かれているのが分かる。そして私も……。彼がキスをしようとした…。
ーーどうすればいいの? 誰か、教えて……。
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