第11話 ファースト キス 2
体が震える。嫉妬の目。
「ご、ごめんなさい。わ、私、まだ、気分が……冴えなくて。わ、私、部屋へ戻ります」
彼が一瞬歪んだ顔をした後に心配顔になる。
「じゃあ、私が部屋まで付いて行きます」
王太子が私の方へ一歩近づいたけど、私は後ろにまた下がってしまった。
「ミーナのエスコートは、俺の仕事」
バロンさんが、私の腕を掴んで言った。私は、彼の声でほっとしたら、急に体の力が抜けていった。立っていることが、難しくなった。
「おい、だ、大丈夫か!?」
バロンさんが私の体を支えて聞いてくる。
「く、苦しい」
頭がぼーとして、目が回っていく。
「また熱が出てるじゃないか!?」
美奈は健康な子だったのに。ミーユも健康な子だったのに。きっと、私がミーユの体に慣れてないからすぐ熱を出すのかもしれない。王太子とどうしたらいいか分からないから、熱を出すのかもしれない。
あんなに王太子と一緒にいたくないと思うのに彼が気遣ってくれる言葉をかけるから、私はまた勘違いして期待する。私の中に小さい恋心が芽生えた。龍姫と龍騎士だからなのか分からない。この恋を認めない。大きくなる前に潰さないと。
「私が龍姫を運ぶ!」
バロンさんが私を抱きかかえようとしたら、王太子が私の体を抱く。
「大丈夫です。落としたりしません。どうぞ安心して、私に体を預けて下さい」
私には、王太子を断るだけの気力が残っていない。私は言われるまま体を王太子に預ける。王太子から、王太子が壊れ物を触るように私を抱いて歩く。
彼の心臓がドキドキ鳴っている。私の心臓の鼓動も大きい。どっちの音が大きいのだろう。その鼓動で安心したけど人垣に立っている男爵令嬢の私を憎む顔を見て『ビクリ』と、体が固まる。
「どうしましたか?」
急に固まった私を王太子が心配して声をかける。怖くて何も答えることが出来ずに、早く部屋に戻りたかった。
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