第9話 第一龍騎士 3

 私はバルンさんと何人かの神官達とクレイさんと神官長の用意した部屋へ入った。私達が入ると部屋の人達が皆跪いて頭を垂れる。バロンさんに促され皆の前の中心にある椅子に座る。私の横にバロンさんが立ち、クレイさんと他の神官達は私の後ろに立った。バロンさんと反対側の私の横に立ち上がった神官長が立つ。


「どうぞ皆様お立ち下さい」


 神官長が言うと部屋の人達が立ち上がった。私は目の前の人を見ているようで、見ていない。私にとってこの人達はどうでもよかった。

 私はクレイさんとバロンさん、神官達と修道女、そしてミーユのような田舎で被害を受けるかもしれないそんな人達のためにこの世界にいる。上流社会の人達のことなんてどうでもいい。王太子のことを許していなかった。


「この度は、龍姫様へ対しての暴言お許し下さい。そして、ぜひ我が息子を龍騎士にして下さいませ」


 王様がそう言って頭を下げたら、周りの人も同じように頭を下げる。


「別に、どうでもいいです」


「それは、ど、どう言うことですか?」


 王様が狼狽えた声を出す。


「だから別にどうでもいいです。王太子様が龍騎士になるのも、ならないのもどちらでもいいです。只龍騎士になった時私に関わらないで下さい。男爵令嬢様と結婚して下さい」


「ミーナ、な、何を言う。龍騎士は龍姫と過ごさないと力を失うと知っているだろ?」


 バロンさんが言った。


「はい、知っています。力は少ないですが、同じ空間にいれば力を受けられると聞きます。確かに契りを結んだ方が、最高の力を龍が受けると知っています。でも私は、王太子様とそのような関係になりたくありません」


「な、な」


 王太子様が何か言おうとしたのを王様が止めた。私の言葉を聞いて、王太子の後ろにいる男爵令嬢が喜んでいる。でも、他の人は困惑した顔をしている。


「幸いにも私には、他に二人の龍騎士がいます。それでいいと思います」


 私の気持ちを言った。他の人を愛している人に、抱かれたくない。


「しかし、そ、それでは、王家として、」


「黙れ、右大臣」


 王様が後ろにいる太った男の人を怒鳴った。


「しかし、王家の立場がー」


ーーあー、やっぱり、だから私に謝ったんだ。


「黙れ! 龍姫様には関係なきこと」


 王様が右大臣を睨む。


「王様」


 王様に話しかける。王様は油ののった四十歳後半の体系の引き締まった渋い人。王太子は王様に似ている。


「王制とは、難しいものですね。特に、王家より龍姫や龍騎士などと言う生神がいるから神殿に力がつく。きっと過去二十年、王家の方が神殿より力が上だったのでしょう。

 これから王家として立場を守らないといけない時に、王太子様の態度はそれこそ王家の信頼や人気を失う行為になったのでしょうね」


 私は社会が好きで、歴史が好きだったからかなりいろいろ勉強した。だから、この国の政治情勢がなんとなく分かった。


「それを、どうして知っておるのだ?」


 王様が神官長に問うように顔を向けた後言う。


「確か龍姫様は田舎の村娘と聞いておる」


 ミーユだったら王制など政治のことを知らないけど、私は一応日本で義務教育を受けた。


「はい、私は只の村娘。私を差し置いて王太子様が伯爵令嬢と結婚したら、国民の反感はすさまじいものになるでしょう」


「そ、そこまで分かっておられるのでしたら、なぜそんなことを言うのですか?」


 王様が額に汗をかいて私に訴えている。


「私は、愛する人達を引き裂きたくない」


『はっ』と、息を飲む声が聞こえてきた。


「しかし、」


 王様の言葉を言う前に私は、続けて話す。


「ごめんなさい。私も愛されてないのに一緒にいたくない。私淫乱女になりたくないの」


 目から涙が出る。私は自分で汚いと思う。そう言ったら、誰も私に無理強いが出来なくなるのを知っているのに。


「い、イエ、だ、誰も龍姫様のことを淫乱女などとは思いません」


 王様が言うけど私は涙を拭きながら首を振る。


「いいのです。もちろん約束したように、王太子様を龍騎士にします。私と同じ空間で時間を過ごすことも許します。ですがそれ以上、私に期待しないでください。お願いします」


 頭を下げる。バロンさんが私に謝るなと叱る。私はさっさとここから離れたかった。


「わ、分かりました。で、では、今すぐに王太子を龍騎士にして下さい。お願いします」


 王様が焦って言った。王様の焦りが分かる。私の気が変わると思っている。それが私には許されている。私には二人龍騎士がいるから。


「お願いします。この要望をお聞きして下さったら、龍姫様の望む品を用意します。ドレス、宝石、金、何でもいいです」


 王様は私が物をもらいたいと思っている。そんな風に見られていると思って悲しくなる。


「王様、龍姫様には神殿が何でも用意しますのでそのような物は、何もいりません」


 神官長が怒り声で言った。


「イヤ別にそんな意味で言った訳ではない」


 王様が狼狽える。

「王様、別に今、王太子様を龍騎士にしても構いません。私のお願いを聞いて下さい」


「っえ!?」


 クレイさんが驚いた声を出した。クレイさんが私がドレスや宝石などに興味がないのを知っているので驚いている。

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