第76話 秘境

 数日後。

 委員会があり、帰った後に一緒にプレイしようと葉月に確認すると、OKがもらえた。

 そして現在、リーフの店の前で待機中だ。


「さて、どう頼むべきだろうか」


 仮にも人気ブランドのオーナーのリーフに知り合いだからといって気軽に頼んでいいのか。いやすでにアクセサリー頼んだことあるやつが何言ってるんだということでもあるが。

 そんな風に悩んでいると、時間になりリーフもやってきた。


「お待たせー。あたし、参上!」

「テンション高いな」

「アキちゃんとプレイするの久しぶりなきがするからさ。最近、どうにもインスピレーションとかイマジネーションがわいてなかったし」

「スランプか?」

「そこまでじゃないよ。贔屓にしてもらってるひとからの依頼とかはちゃんとこなしてるし、最近だと結構攻略組も奥まで行ったからね。ひと休憩ってことでアバターに手を出し始めたひとも多いみたい」

「そうなのか」

「そうなの」


 俺は攻略は言うほどしていないからな。

 第2拠点にようやく行く準備を始めたレベルというわけだ。

 店に入ると季節に合わせて衣替えもしっかりとされていたが、相変わらず客はいない。


「店にお客さんいたのみたことないんだけど」

「まあ、開いてないしね。オーダーメイドばっかりで」

「そうなのか?」

「気まぐれオープンだし、それも露店でやっちゃうことが多いから」

「そういえば、初めて会ったときもそうだったな」

「NPCとかAIが雇えればいいんだけど、ピンッと来る子に出会えないししょうがない。まあ、それはさておいてわざわざ待ち合わせまでということは依頼? スカート? とうとう手を出してくれる!!」


 目をキラキラさせて肩まで掴んでくる。

 リアルとのギャップには慣れたけど、冷静に分析するとすごいものだ。

 現実のリーフこと葉月がこれをやってくることは全く想像がつかない。


「こいつなんだが」


 俺は一度リーフを体から剥がしてアイテムを取り出した。

 この前、ティアから渡された金属の型だ。


「おぉ~これは見事なバトルドレス」

「ティアから渡されてな。完成させるにはリーフの力が必要ってわけだ」

「そうだねぇ……でも、やっぱり防具兼用装備だから、そこそこアイテムあって効果つけたほうがいいと思うよ?」

「やっぱりそうだよな。なんかオススメあるか? とってくるけど」

「特に特定のオススメはないというか、好みもあるけど。あえていうなら可能ならボスか中ボス級のレアドロップがオススメ。それこそ、花飾りつくったときみたいさ」

「あぁ~……」


 最近ボスに挑戦していないせいで、その手のアイテムはもっていない。

 ただ、エンドレスボス戦とか作業的なプレイは苦手なのが俺の弱点なんだよな。


「もしくは、秘境エリアでも見つけてレアアイテムとか探すかだね」

「秘境エリア?」

「そう! まあそのままの意味だけど、具体的に言うとマップとかでは発見できなかったり映らない場所にある特殊マップだよ。行き方は獣道のときもあれば、ワープ系のアイテムとか魔法陣っぽいオブジェクトが設置されてたりとか色々あるの」

「そっちのほうがまだ望みがありそうか。じゃあ、ひとまずアイテム収集がさきだな」

「そっちがいいと思うよ。バッグ圧迫するなら型預かるだけ預かるとかはできるけど?」

「じゃあ、すまん。預けておく」

「はいはーい! 大丈夫。お客さん用のものとして預かるシステムがあるから、ちょろまかすことはあたしもできないから」


 別にリーフのことは信じてるから、説明しないでもいいのにな。

 その後、ネットを開いて調べてみる。

 攻略とかはみないでやりたいけれど、防具が揃わなくて精神的に詰むくらいなら調べていったほうがマシだ。


「センターシティ周りの秘境だと……植物系か魚系? 魚系ってなんだ」

「魚人的なのとかマーメイド的なのだよー」


 1人で確認してたつもりだったが、聞いていたリーフがそうやって教えてくれる。


「オススメは?」

「個人的にオススメって話するなら、せっかく花飾りが植物系だし、そっちで統一のほうが見栄えはいいんじゃない? とは思うよ」

「じゃあ、そうすっか。んで行き方は……え?」

「どうしたの?」

「いや、ちょっと予想外の方法だったんでな……あとで行ってくるわ。他に必要な素材とかあるか?」

「まあ、ないわけじゃないけど、簡単に取れるものばっかりだね」

「そんじゃ、そっち集めるか今日は」

「おー!」

「あ、なんかやることとかやりたいことあったか?」

「だいじょぶ大丈夫。強いて言うなら、アキちゃんを彩りたいくらいかな」

「はぁ…………依頼が終わって気が向いたら仕方ないから少しは付き合うよ」

「え? ほんと?」

「イベントとかでも世話になったしなー」

「やったー!」


 リーフのテンションは今までにないほど最高潮に達した。

 その後、ハイテンションのリーフと素材集めにいったけれど、効率の良さがものすごいものになった。

 モチベーションってすごい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る